2019年02月28日15時00分掲載  無料記事
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ドキュメンタリー映画『 沖縄から叫ぶ 戦争の時代』 小野田明子

 こんなタイトルになるとは思いもよらなかったーと、2018年1月から10月までの沖縄そして、その周辺の島々を記録した湯本雅典監督が述懐する。それは、このドキュメンタリーを見る側にとっても、同じ思いだ。 
 
 普天間基地を返還する代わりに辺野古の海を埋め立て新しい基地を作る、という国の計画に沖縄は迷走しながらも、反対派の翁長雄志知事を当選させ、知事死去による選挙も反対派の玉城デニー知事を選んだ。沖縄の民意は、辺野古新基地を建設させないと誰の目にも明らかだ。しかし、国は沖縄の声に一切耳を貸さない。これでは、民主主義の危機だと、多くの日本人が感じていることだろう。 
 
 なぜ、沖縄の人々が基地建設に反対するのか、当事者に寄り添いながら、その生々しい証言を聞いていくと、本当に戦争の時代が歩き始めたと、その足音までも聞こえてくるようだ。なかでも、選挙での公明党の立ち位置は、もはや民衆の平和を築く立党の精神に反すると反旗を翻す創価学会会員、アメリカ軍機の窓枠が落下した普天間第一小学校や緑ヶ丘保育園の教職員とその保護者たち。「米軍機が大学(沖縄国際大学)の敷地に米軍ヘリコプターが墜落した時は、まだ子供で、基地について関心がなかったが、今、自分の子供の上に軍機が飛んでいると思うとゾっとする。あのころと何も変わっていないんじゃないか」。この若い母親に返す言葉があるだろうか。 
 
 実態は、何も変わっていないどころではない。沖縄の周辺の島々、奄美大島、宮古島、石垣島、与那国島など南西諸島には、いつの間にやら自衛隊のミサイル基地が建設されているのだ。楽園の島々に一体何が起こっているのか。茨城県から与那国馬に魅せられて移住した男性は、「平和はなくなる。こんなはずではなかった」と嘆く。 
 
 湯本監督は、安部晋三首相は、憲法を変え、9条に「自衛隊」を明記すると言っているが、その行く着く先はここ(沖縄と南の島々)なのだと実感したという。2月24日に投開票された沖縄県民投票では、辺野古埋め立てによる新基地計画について「反対」が72.15%に達した。この県民投票について、安倍首相は「普天間基地移転はこれ以上先送りすることはできない。辺野古護岸工事は粛々とすすめる」として、投票結果を受け入れない姿勢だ。 
 
 南からだけではない。きっと、北からも、あるいは海からも空からも、どこからも、忍び込み、気が付いた時には、戦争一色に染まってしまうだろう。いみじくも、沖縄の県民投票の日は天皇在位30年の式典が行われた。4月末で退位する天皇は「平成は戦争がない時代だった。平和が続くことを願う」と述べられた。そうした時に公開された「沖縄から叫ぶ 戦争の時代」。どの時代であっても、平和を願わない国民はいない。沖縄の基地問題を自分の問題とする想像力が、私たちにあると信じたい。なければ、未来は本当に暗い。 
 
「沖縄から叫ぶ 戦争の時代」 (61分)監督:湯本雅典 
 DVD、自主上映会の申し込みは、https://yumo.blue/ まで。 


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