2019年03月11日02時57分掲載  無料記事
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教育

降ってわいた「幼児教育・保育無償化」  池田祥子 :前こども教育宝仙大学

●自民党の選挙公約から始まった「幼児教育・保育無償化」 
 
   2017年秋の衆議院選挙の際に、首相の「解散権」への疑義などはまったく無視して、北朝鮮の脅威を誇大宣伝しつつ、国民への「リップサービス」見え見えの施策として、いきなり安倍自民党の公約として掲げられたのが、この「幼児教育・保育無償化」である。 
 確かに、日本の福祉財政に占める「子育てや就学前教育・保育」の割合は、専ら高比率を占める高齢者福祉に比較して低い状態であることは事実である。また、OECD各国の「就学前教育支出に占める公的支出の割合」も、アイルランド(100%)、ルクセンブルグ(99%)、ベルギー(97%)、スウェーデン(95%)、フィンランド(89%)、さらに韓国(83%)、米国(74%)などに比べても英国(48%)と並んで日本(46%)の数値は極端に少ない。 
 
   しかし、周知のように、例年「保育園に落ちた!」と嘆く親たちの呻きが報道されている通り、「待機児童」の解消がまずもっての死活問題として横たわっている。その問題の解決を中途にしたまま、なぜいま、「幼児教育・保育の無償化」なのか?「保活」で頭一杯の親たちや良心的な幼児教育・保育関係者、また政治の場では野党が盛んに問題にしている。 
 
   さらに、2015年に発足した「子ども・子育て支援新制度」から丸4年、地方行政はなお試行錯誤の下、調整作業に臨み、現場では多種多様な施設との連携・競合などの課題を抱えている。なぜなら、この新制度のそもそもの発端は、戦後の幼稚園と保育所という「教育と福祉」の二分化状態だったものを、同一の「教育福祉=こども園」としてすっきり一本化させることが目指されていたのである。にもかかわらず、結局は、民主党・自民党・公明党間の妥協として、新たに「認定こども園」が追加され、これまでの幼・保の二本立てがさらに「幼稚園・保育所・認定こども園」の三本立てとなってしまった。現実はそれに留まらず、さらに、幼稚園・保育所のそれぞれの「公立・私立」、また新たに地方の認可施設として加えられた小規模保育・家庭的保育、居宅訪問型保育(ベビーシッター)、その他、東京都の認証保育所などの地方独自の認可施設(国としては認可外)、内閣府管轄の企業主導型保育(事業所内保育)等など、「多様な施設」の相互連関とそれぞれの役割分担の調整が求められている状況なのである。 
 今年10月に予定されている消費税10%の増税分を見込んでの8300億円余りを財源とする政策構想だが、はたして真に有効なお金の使い方なのかどうか、未だ疑問視されている。 
 
●実施にあたっての「てんやわんや」 ― 課題 
 
 ―蠧世鳳じる保育料 
 
  義務教育を初めとする各学校の授業料は、同一の教育内容に対する対価として、すべて一律である。かつては文科省管轄の幼稚園の保育料も、授業料と同じく同一であった。ところが、保育所は厚労省管轄の「福祉」施設とされているため、これまで保育料は一貫して所得に応じて徴収されてきた。2015年度からの新制度発足にあたって、何と、幼稚園の保育料も所得に応じての徴収に変えられているのである。したがって、今回、認可幼稚園・保育園・認定こども園の「保育料無償化」と言えども、元々生活保護世帯は全額無償とされていたため、状況は変わらず、市町村民税非課税世帯および年収の低い世帯の保育料は金額もまた低額であるため、「無償化」の恩恵感は乏しいだろう。また、無償化にあたってのその階層の税負担は3〜4%に留まっている。それに対して、年収の高い階層の保育料は金額も高いまま、それ全体が無償となる。 
 「低所得者世帯には、これまでにもすでに無償化や低額化はなされてきたのだから贅沢は言うな!」とは厚労相や少子化担当相の姿勢ではあるが、いまお金をつぎ込まねばならい所は本当にそこですか?と、やはり納得できないのは事実である。 
 
◆’Р蝶飴楡澆両豺腓痢嵎篏」 
 
  当初は、無償化の対象は当然「認可施設」のみ、の方針であった。しかし、現実には認可施設が足りないためにやむを得ず「認可外施設」を利用している場合も少なくはない。ということで、さまざまな「認可外施設」を利用している親・子どもにも条件付きで無償化政策は適応されることとなった。ただし、その施設を利用している保護者が「保育を必要としている」という保育認定を市町村から受けなければならない。しかも、保育料の平均ということで3万7000円を上限とする「補助」という形である。(なお、今回は3〜5歳児を対象とする無償化だが、0〜2歳児に対しては、非課税世帯に限り無償、認可外の場合は上限は4万2000円の補助とされた。0〜2歳児に対しては、別途問題にすべきであろう。) 
 
   給食費の徴収 
 
  経費削減の動きの中、病院(入院中)や社会施設(収容)での食事代は、概ね自己負担に切り替えられている。確かに、成人の場合はやむを得ない面があるのかもしれない。しかし、今回の無償化政策の対象に給食費を含むのか否かは、改めて論議された(内閣府「子ども・子育て会議」)。 
  幼稚園の場合は(1号認定という)主食・副食ともに実費。3〜5歳の保育園・認定こども園の2号認定の子どもの場合は、主食は実費徴収、副食は保育料に含まれている。(ちなみに0〜2歳の保育園・認定こども園の3号認定の子どもは主食・副食ともに保育料に含まれている。) 
 
  結論としては、財源も制約があり、しかも「食事代は保護者負担が当然」(自民党幹部)という意識の下、今回の無償化の対象からは外されることになった。もっとも、低所得世帯に対する無料化は今後とも維持するようである。 
  ただ、発達途上の子どもにとっての食事(食べること)は、それこそ「食育」としても日々の保育活動に不可欠であり、切り離せない活動領域と言える。この辺りも、もっと議論を尽くして、真に財源保障すべきものは何か、考えられなければならないはずである。 
 
池田祥子 :前こども教育宝仙大学 
 
 
ちきゅう座から転載 


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