2019年03月18日00時09分掲載  無料記事
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政治

首相官邸前で行われたマスメディア・ジャーナリスト・市民の抗議集会 "FIGHT FOR TRUTH” その7 東京新聞社会部の望月衣塑子記者が登壇

  国民の知る権利を守るための3月14日の首相官邸前集会、スピーチを行う記者らの最後に東京新聞社会部の望月衣塑子記者が登壇した。望月記者はこの日、最初からずっと演壇のすぐ脇にいて、野党議員や弁護士、同業の記者らの話を聞いていた。今、問題になっているのが首相官邸が望月記者の質問を妨害していることである。権力側による恣意的な記者の排除をいったん認めればその先にジャーナリズム不在の恐ろしい時代が来ることは明らかだ。様々な記者が様々な立場から、この問題をどう見ているかを語り、記者の連帯を呼びかけた。では望月記者はこの日、いったい何を語るのか。一同、固唾をのんで登壇した彼女の話に耳を傾けた。 
 
 望月記者「今日こんなに多くの市民の方々、弁護士、有識者、野党の先生方、で、何よりメディアで一緒に携わっている記者の皆さん、官邸の抗議文に批判の声を上げ、そして慣れないであろう、こうやってマイクを握り、思いを伝えていただいたこと、本当に感謝いたします。ありがとうございました。  
 
 私が菅さんの会見に乗り出したのは森友・加計疑惑、伊藤詩織さんの準強姦事件での逮捕令状の執行取り消し、というこの問題を一記者として取材する中で、いったい今、官邸の中枢部で何が起きているのか。とんでもないことが起きつつあるんではないか。そういう強い危機感からでした。しかし疑惑から浮かんできたのは菅長官ではなく、安倍首相でした。腹心の友の加計孝太郎理事長が作った加計学園の獣医学部の新設、そして昭恵夫人と親交のあった森友学園への国有地売却、そして首相にもっとも食い込む男と言われていた元記者への逮捕令状の執行の取り消し。 
  まずは私は安倍さんに聞きたかったんです。しかし、首相は官邸での会見数を激減させています。昨年はなんと3回の官邸会見。おととしは4回。政治部記者さえ、なかなか聞けないような状況です。官邸入り口の番記者のぶら下がりも毎回1問。ねじこめて2問と聞きます。これではいったい首相にいつ記者が質問ができるのでしょうか?首相がダメなら、菅長官にというのがそもそものきっかけでした。 
 
   私は政治部とはまったく違う聞き方で、おそらくそういうような質問を長官は受けたことがなかったのではないか、と思います。しかし、私のような質問は異常なことではなくてですね、社会部の記者であればごくごく一般的な質問だと今でも思っています。質問が長いと注意され、上村室長の『質問を簡潔に〜』と、この妨害はなぜがやまなかった。短くしてもやまなかった。『なぜですか?』と上村さんに聞くと、『これは個人的なことではない、政府の一員としてやっている』と言いました。妨害ないし制限を支持し、容認しているのは菅官房長官なのではないでしょうか。そうであるならば精神的圧力となる妨害やこの制限行為、これはやはりやめていただきたい。 
 
  今日もなぜか私の前に聞いたのは一人の記者さんだけで、その後私は2問目を聞くと、『次で最後ね』、と。2問だけになっておりました。そして何よりですね、わが社が抗議文の検証記事を出した後、なぜか他社の記者や妨害を受けていなかった沖縄の地元紙の記者にまで制限をかけるようになりました。検証はよりよい会見を、そして国民の知る権利を守って欲しいという、こういう思いを込めたものでしたが、それに逆行するかのように妨害が他の記者にまで及んでいる。この状況を看過することは絶対に出来ません。 
 
  沖縄県知事選でデニー知事の圧勝の後もとまらない辺野古への強制的な埋め立て、そして南西諸島のミサイル要塞化など、政府の沖縄県民の民意を無視するこの横暴を見るにつけ、これだけは聞かねば、民主主義が根底から覆されようとしている、と。さらなる危機感から私は今、会見に臨んでおります。 
 
  しかし、昨年の12月からは妨害が一時期悪化しまして、ひどいときは1分半に7回もの陰湿な妨害が行われました。『会見はいったい何の場なんですか』、と私が聞いた質問に、長官は『あなたの質問に答える場ではない』と。これまでなんども私にだけ発してきた回答を行いました。何という権力者のおごりでしょうか?一記者の質問の背後に、会見に参加ができない多くの声なき市民やそして記者たちの思いや疑問があることはまったく想像できていないのか。愕然としました。政権が長期化する中で官邸会見が政府にとって都合のいい広報の場と化していないか?1年半以上にわたって見続けている中で日々私が感じていることです。 
 
  長官は国会で(会見は)政府の見解を述べる場だと言いました。果たしてそうなんでしょうか?会見は政府主催の会見ではありません。記者たちが現地で生の声を聞くことで明らかに政府が官邸や国会で主張している事実がまったくの事実誤認であることも多々あります。 
  森友の改ざんされた決裁文書、そして防衛局が県の調査を今でも拒否している辺野古の赤土混じりの土砂。そして首相の珊瑚移植の誤認発言。菅長官の『怪文書みたいな文書じゃないか』という発言。どれもこれも事実とは明らかに異なっておりました。 
 
  官邸は私の質問を度重なる問題行為とし、問題意識の共有を(記者)クラブに要請しました。これは私や社への精神的圧力にとどまらず、質問をする他の記者への萎縮を招き、報道の自由、国民の知る権利を踏みにじる暴挙です。文書を出せば記者クラブは私を厄介者として排除し、官邸にとって不都合な事実を問い続ける記者がいなくなると官邸は思ったのでしょうか?菅長官にはあの張り出した文書の撤回を強く求めたいと思います。長官は会見で辺野古は唯一の解決策とたびたび繰り返し、前川喜平前文科事務次官については『地位に恋々としがみつき不正の温床となる場所に通い、教育者としてあるまじき行為』と連発をされておりました。なんども繰り返すことで、国民にそう思わせようと、印象操作をしようとしているようにも私には思えます。 
 
  会見は政府の主張を言い続けるだけの場ではありません。政府の言う事実、それに対し取材する私たち記者たちが疑問を問いかける場であります。会見は政府のものでもメディアのものでもなく、国民の知る権利を実践する場なのです。2014年の11月に萩生田光一氏、自民党の現在の幹事長代行が選挙の報道に関し、公平公正中立を心掛けてほしいとの要望書を出しました。要望が提出された際、民放、NHKそして各局は一致団結をし、抗議の声をあげませんでした。一部のTV局幹部と新聞記者そしてフリーの方だけが声を上げ、会見をしたにとどまりました。あの時、もしみんなで連帯し、政府に声を上げそして抵抗していたら、今ほど政権批判への萎縮や忖度は起きていなかったのではないか、と思っています。 
 
  今回はその矛先が私や東京新聞に向けられました。しかし、文書が明らかになった時、まず声を上げてくれたのは、朝日にいたそこにいる南記者であり、そして朝日、毎日新聞、共同通信、時事通信、中国新聞、北海道新聞、沖縄タイムス、琉球新報など全国の地方紙、そしてTBSやテレビ朝日などテレビ各局、BUZZFEEDはじめ多くのネットメディアもこの問題を取り上げてくれました。中学生までもが抗議の署名集めに奔走し、抗議の意を示してくれました。そしてそれに連動し、全国の市民、弁護士の方々、有識者そして野党の先生たちがこの官邸の振る舞いに異議を唱えてくれました。おかしいものはおかしい、と声を上げる勇気を私たち一人一人が持てば、私たちはみなで連帯し、そしてこのように抵抗を示せるのです。今、国家権力とメディアのあり方、そしてメディアとは何なのかを、問い直す時期なのだと思います。メディアが権力に厳しい質問ができなくなった時、民主主義は衰退します。そして今、この瞬間も私たちがくみ取れていない声なき声がまだまだ社会にはたくさんあるということを忘れてはいけないと思っています。政府はメディアを支配しよう、そして抑圧しようとしている、この今こそ、私たちはそれぞれが勇気を奮い立たせ、そして連帯し、立ち上がり、そして今日のようにともに闘っていきましょう。」 
 
 
 
■首相官邸前で行われたマスメディア・ジャーナリスト・市民の抗議集会 "FIGHT FOR TRUTH” 官房長官らの記者に対する不当な質問制限に抗議 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201903150007035 
 
 
■首相官邸前で行われたマスメディア・ジャーナリスト・市民の抗議集会 "FIGHT FOR TRUTH” その2 バナーの2色 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201903151459225 
 
 
■首相官邸前で行われたマスメディア・ジャーナリスト・市民の抗議集会 "FIGHT FOR TRUTH” その3 新崎盛吾氏(共同通信労組 元新聞労連委員長) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201903151931325 
 
■首相官邸前で行われたマスメディア・ジャーナリスト・市民の抗議集会 "FIGHT FOR TRUTH” その4 毎日新聞労組の吉永磨美氏。 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201903152344595 
 
■首相官邸前で行われたマスメディア・ジャーナリスト・市民の抗議集会 "FIGHT FOR TRUTH” その5 広島から駆けつけた中国新聞の石川昌義氏 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201903162234186 
 
■首相官邸前で行われたマスメディア・ジャーナリスト・市民の抗議集会 "FIGHT FOR TRUTH” その6 「国境なき記者団」の瀬川牧子氏 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201903170059300 
 
■首相官邸前で行われたマスメディア・ジャーナリスト・市民の抗議集会 "FIGHT FOR TRUTH” その8 社民党・福島瑞穂氏が登壇 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201903220240225 
■首相官邸前で行われたマスメディア・ジャーナリスト・市民の抗議集会 "FIGHT FOR TRUTH” その9  自由党・森裕子氏 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201903222245415 
■首相官邸前で行われたマスメディア・ジャーナリスト・市民の抗議集会 "FIGHT FOR TRUTH” その10  望月記者の同僚・東京新聞社会部、柏崎智子記者が登壇 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201903252005501 
■3・14首相官邸前抗議集会でのアピール: 「知る権利」を奪う首相官邸の記者弾圧に抗議する 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201903271138223 


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