2019年03月22日16時39分掲載  無料記事
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国際

CNNの番組でもサウジの弾圧チームの存在を伝える NYT記者が語る  昨年のサウジの改革の報道は何だったのか?

  イスタンブールのサウジ総領事館で起きたジャマル・カショーギ記者の惨殺の背景をめぐり米国で新たな話題が沸騰している。この殺害は1ダースにものぼる一連の弾圧を行ってきた秘密チームによるものだ、とニューヨークタイムズの2人の記者によって報じられたのだ。これをめぐり、CNNはNYT記者へのインタビューを行っている。出演は2人の記者の一人、Mark Mazzetti記者である。 
https://edition.cnn.com/videos/world/2019/03/18/crown-prince-salman-saudi-arabia-dissenters-nyt-report-nr-vpx.cnn 
  この件は現在、米議会で議員らが諜報機関の情報の全面公開を求めているものである。この問題はサウジ皇太子のムハンマド・ビン・サルマンに行き着くものであり、皇太子と蜜月の関係を保ってきたトランプ大統領および家族として外交にも影響力を行使している娘夫婦への批判に直結するものである。 
 
  この番組のキャスターが女性であったこともあってだろう、この皇太子が率いるとされる弾圧チームが女性の人権活動家らをも拷問したとされることが焦点となった。というのもムハンマド・ビン・サルマン皇太子は改革派、近代化の顔というイメージを醸しており、女性の車の運転免許も可能とする改革の推進者とされていたのだ。ところが驚くことに、弾圧された人の中には女性の運転免許取得を求めていた女性のための人権活動家もいたと言うのだ。 
 
  思い返すと、サウジアラビアの改革をめぐっていろんな好感の持てる記事が昨年、書かれていた。 
 
 「女性たちは笑顔でハンドルを握った。サウジアラビアで運転解禁」(ハフィントンポスト 2018年6月24日)「運転の自由化は、同国のムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導する大規模な経済改革の一環。2017年9月に女性の運転を解禁する国王令が発布された」といった記載がある。 
  産経にも出ている。「サウジで女性の車の運転が解禁 『とても興奮しています』」(産経 2018年6月24日)「イスラム教の厳格な解釈を背景に世界で唯一女性の運転を禁じていたが、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が推進する大規模な経済社会改革の一環として自由化に踏み切っといった記載がある。 
  これらはいずれもムハンマド・ビン・サルマン皇太子が改革の顔として書かれている。 
 
  しかしながら、このような表向きのイメージと真逆の裏の実像が今回、示されつつある。いったい、なぜ運転免許を推進した女性活動家を含めて女性の市民権の拡張運動をしている女性たちを拘束し、拷問しているのだろうか。報告によると監禁された人々は殴られるだけでなく、レイプするという脅しや殺人の脅迫まで受けていると言う。そして、このチームはカショーギ記者の殺害で騒がれているから多少活動が控えめになっているものの、現在も稼働していると報告された。 
 
  このことは日本で今起きている東京新聞・望月記者への首相官邸の取材妨害と無縁だろうか。洋の東西を問わず、政府が記者を弾圧して、政府が良いという架空のイメージを世界に売り込んでいる時代だと言うことである。安倍首相も「すべての女性が輝く」女性の活躍できる日本を世界に盛んに売り込んでいた。その中に東京新聞の望月記者は入っていないのだろうか。真摯に新聞記者らしい勇気ある仕事を行う望月記者に対する執拗な妨害はサウジアラビアを思わせる。2017年11月、日経新聞はこう記している。 
 「世界各国の男女平等の度合いを示した2017年版『ジェンダー・ギャップ指数』を発表した。日本は調査対象144カ国のうち、114位と前年より3つ順位を落とし、過去最低となった。女性の政治参画が遅れているのが主な理由で、1日に発足した第4次安倍内閣の女性活躍の推進が一層問われそうだ。」 
 
 
■Saudi Arabia is heinously torturing female activists. It must face consequences. (ワシントンポスト) 
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/saudi-arabia-is-heinously-torturing-female-activists-it-must-face-consequences/2019/02/10/67ac3e06-2b00-11e9-b2fc-721718903bfc_story.html?noredirect=on&utm_term=.76cfbadc4058 
  女性の活動家らが弾圧を受けていたことが浮上してきた。ワシントンポストによると、去年そうした事件が多く起きていたとされる。去年と言えば、まさにサウジが女性の運転免許を含め、改革を行っていると絶賛されていた年である。 
 
 ”Mr. Qahtani, who is accused of joining in the torture of Ms. Hathloul, also played a key role in the murder of Khashoggi, according to Saudi investigators and U.S. officials. ” 
 
■英国で公開されたサウジアラビアの女性拘束のレポート。虐待を受けている人々が実名で報告されている。 
https://static1.squarespace.com/static/5a9301ef0dbda346e74d0bf9/t/5c54a707e2c483db6d77a645/1549051658028/DRP+report+-Women+Activist+Detainees+in+Saudi+Arabia+February+2019.pdf?fbclid=IwAR2b1fS729IvDJF9lee1xP8Azsy4Sfv5MndhAuOVfhr15wrQOy-cIXbQJmU 
  ”The Detention Review Panel (“DRP”) is a Panel of British Parliamentarians who have been mandated to review the detention conditions of women activists in Saudi Arabia.” 
 
 ※当局に拘束された女性たち 
1. Loujain al‐Hathloul 
2. Eman al‐Nafjan 
3. Aziza al‐Yousef 
4. Samar Badawi 
5. Nouf Abdul‐Aziz al‐Jerawi 
6. Mayaa al‐Zahrani 
7. Nassima al‐Sadah 
8. Hatoon al‐Fassi 


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