2019年04月09日00時10分掲載  無料記事
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欧州

フィレンツェのバス事情 〜 チャオ!!イタリア通信(3)

 私は結婚して1年間だけフィレンツェ市内に住みましたが、その後、夫の実家近くに引っ越しました。夫の実家がある町は「ポッジョ・ア・カイアーノ」といって、プラート市(フィレンツェ市の隣)にあります。 
 私は、そこからフィレンツェまでバスに乗って仕事に通っているのですが、このバス会社のフィレンツェにおける終着と始発のバス停留所が最近移動しました。それに伴い、バスが大きく迂回しなくてはならないのと、フィレンツェ市内の渋滞が重なり、夜7時以降のバスに乗ることもあるのですが、バスは毎回30分ほど遅れてやってくるようになりました。私は、仕事場からバス停へ時刻表の時間に遅れないよう、予定時刻の10分ぐらい前に着くよう心がけているので、結局40分も待たされてしまいます。冬は特に寒くて、風が吹いたりすると立っているだけで本当に辛いです。 
 
 ここ1週間で、バスに乗ると、まず乗客から運転手への苦情が出ます。ただ、運転手もそれ以上に苦情を抱えており、結局、乗客も苦情のトーンが落ちてしまうのです・・・。 
 ある日は、運転手が「トイレに行く時間もない」と文句を言っており、また別の日は「夕食も食べられない、家に帰れない」と文句を言っていました。 
 
 バス停が移動した原因は、「トランヴィア」と呼ばれるフィレンツェのトラム(路面電車)にあります。 
 このトラムの路線を建設したことで、フィレンツェ市内のバスの路線が大幅に変更になりました。私が使っているバスの路線も、トラムができてから2回も終着と始発のバス停が移動になりました。 
 私はバスをずっと使っていて、今年で10年目になります。10年前は、フィレンツェの中心地サンタ・マリア・ノヴェッラ駅の隣に終着と始発のバス停がありました。そこにはバスのチケット売り場もあり、トイレも自由に使えました。 
 しかし4〜5年後、チケット売り場が少し改装され、その後はトイレを使うことができなくなりました。 
 さらに3〜4年後、トラムの建設が始まります。私が使っているバスは遠方から来るので、常時15分ぐらいは遅れてくるという「悪名高い」バスで、通勤で使っている人たちからの苦情は絶えずありました。 
 そして追い打ちをかけるように、今回のバス停の移動が本当に致命的な決定打となり、今まで一緒にバスに乗っていた通勤者たちが全く見当たらなくなってしまいました。いつも、同じバスに乗っていた女性は「これからは電車で通勤する」と言っていたので、本当に通勤方法を変えたのでしょう。 
 
 このように、バス停がフィレンツェの中心地からどんどん離れていきました。 
 今のバス停は、「カシーネ」と呼ばれるフィレンツェのアルノ川沿いにある大きな公園の一端にある広場に移動しています。この前、夜7時半のバスに乗ろうとしたのですが、誰もいなくて街灯は暗く、ちらほらと歩く人はいるのですが、女性一人だけで30分や40分もいる場所じゃないなと思いました。少し怖くて、人通りのある歩道の近くでバスを待っていたのですが、案の定30分遅れてやってきました。 
 
 トラムの建設は、イタリアの前首相であるレンツィ氏がフィレンツェ市長の時に始まりました。 
 環境汚染や渋滞の問題を解決するものと、私は理解していたのですが、こうした問題を解決することにはつながってません。イタリアは古い遺跡がたくさんある国なので、都市計画も大変なのでしょうが、「もう少しどうにかできないか」とイラつく時があります。 
 例えば、私が使っているバスは、フィレンツェの北方からフィレンツェ市内に入ってくるのですが、市内に入ったらトラムの路線があるので、「市内に入る直前で停まってくれれば、私たち乗客はトラムで中心地に入れるのに」と思ってしまいます。今の路線だと、フィレンツェ市内の周囲を走る環状線を通らないといけないのですが、そこはいつも渋滞です。「トラムで中心地に入った方が、環境汚染も解決するのに」と思うのです。 
 
 ともかく、イタリアではこうした建設工事はいつも先に“お金ありき”で、都市計画をきちんと構想しているかは疑わしいのです。(サトウ・ノリコ=イタリア在住) 


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