2019年04月10日15時02分掲載  無料記事
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アフリカ

【西サハラ最新情報】  壁  平田伊都子

 <壁>は、人間の交流を遮断するために、人間自らが造った非人間的産物です。 ドイツ・ベルリンの壁を世界の人間は壊しました。 ドイツ出身の元ドイツ大統領ホルスト・ケーラー国連事務総長個人特使と、ドイツ国連大使クリストフ・ヒュースゲン国連安保理4月議長は、モロッコが造った西サハラの<砂の壁>地雷防御壁を壊そうと、努力を続けています。 
 2019年4月10日午前、国連安保理ではホルスト・ケーラー国連事務総長個人特使とコリン・スチュワートMINURSO(国連西サハラ人民投票監視団)チーフが参加して、クリストフ・ヒュースゲン国連安保理4月議長の司会で、西サハラの討議が行われました。 
 どんなに高い壁を造っても、人間は越えることができるはずです。 
 
(1)アイスランド首相と西サハラ難民大統領とのトップ会談: 
 2019年4月4日、アイスランドの首都・レイキャピクで、アイスランド首相カトリーン‣ヤコブス・ドッテイルと西サハラ難民大統領ブラヒム・ガリが、トップ会談をした。会談をアレンジしたのは、北日本大震災直後の2011年5月に訪日し、石巻の避難所に津波避難者を見舞ったベイサット全権大使で、現在は大統領外交顧問を務めている。 
 アイスランドはその名の通り、<氷の地>で国土の一部は北極圏にかかっている。が、2月の最低気温平均は氷点下3度程度、メキシコ湾から流れてくる暖流のおかげで暖かい。世界地図では日本が<極東>と東の隅に追いやられているのに似て、北の隅っこに配置されている。なぜ、ベイサットがこの人口355,629人の小国に焦点を当てたかというと、人口約35万の西サハラと同じ少人数だし、ヨーロッパ圏内にありながらEU加盟申請を止め、しかも世界各国と仲良くやっているし、何よりも世界一汚職が少ない民主主義の国だからだ。アイスランドも、第二次大戦以前は数か国にたらいまわしで植民地支配され、完全に独立したのは1944年6月17日になってからだった。そのアイスランドに今、世界が注目しているのは、再生可能エネルギーの活用で、温泉や地熱を最大限に使用しているからだ。基幹産業は漁業で、日本にとって心強い、捕鯨賛成国でもある。あまり知られていないが、世界最古の民主議会「アルシング」を930年に発足させている。現在もアイスランドでは議会を、<アルシング>と呼んでいる。 
 アイスランド首相は西サハラ難民大統領を歓迎し、国連決議と国際法に基づく西サハラ問題解決を、国家として支援していくことを明言した。さらに両首脳は、西サハラ脱植民地化を目指す国連と国連事務総長個人特使ホルスト・ケーラー元ドイツ大統領の努力に言及し、西サハラ民族自決権の国連人民投票を強く推挙した。勉強家で未来志向の西サハラ難民は、この小国から大いに学ぼうとしている。 
 
(2)<砂の壁>新設は、モロッコの停戦違反: 
 4月6日のSPS(サハラ・プレス・サービス)は、「国連事務総長アントニオ・グテーレスが国連安保理への事前報告書の中で、モロッコ軍が<新砂の壁>を増設したと、書いた」と、伝えた。さらに事前報告書は、「モロッコ王国軍が、既存の<砂の壁>地雷防御壁と並行させて<新砂の壁>をマフべス地域に敷設した。全長80.26キロメートルで、南北に伸びている。これは、軍事合意第一項に抵触し、重大な停戦違反に当たる」と、モロッコの停戦違反を説明、し国連安保理に提出された。国連事務総長のいう停戦とは、1997年にポリサリオ西サハラ難民政府が、1998年にはモロッコ王国が承認した国連停戦協定をさす。 
 <砂の壁>地雷防御壁は西サハラを北から南へ分断し、全長2,500キロメートルにも及ぶ。万里の長城には長さも見かけも劣るが、イスラエルやアメリカ♠の<壁>よりも長い。<砂の壁>の建材は、サハラの砂というより、サハラの瓦礫と言った方が正解だ。モロッコ王国軍は1981年から1987年にかけて<砂の壁>を建設し、1200キロメートルの大西洋海岸から<砂の壁>までの西サハラ5分の4をモロッコが占領している。残り5分の一の砂漠をポリサリオ西サハラ難民政府が管理している。モロッコ軍は<砂の壁>からポリサリオ側へ50メートルの巾で、約600万個の地雷を埋めた。<砂の壁>は、イスラエル軍高官が進言し建設に協力したと言われている。 
 モロッコ王国軍は、多数の対地雷戦車をアメリカから購入している。<砂の壁>地雷壁での戦闘を想定した買い物だ。 
 
(3)♠の壁とイスラエル総選挙: 
 4月7日夕刻、♠アメリカ大統領がツイッターで、キルステン・ニールセンアメリカ国土安全保障長官を首にした。ニールセン前長官は解任を知らなかったという。半べそのニールソンを、誰もが愛おしく気の毒に思ったようだ。知性美に溢れた優秀な高官を首にした真犯人は誰?♠娘ユダヤ教イバンカと♠娘婿ユダヤ人クシュナーの議会召喚が待たれる。 
 4月8日のアメリカ国土安全保障省のホームページでは、税関・国境警備局のマカリーナン局長が<代理〉の但し書き付きで、早々と新局長になっていた。アメリカ国土安全保障省局長は大統領の内閣の一員であり、アメリカ国土安全保障省は2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を受けて設置された新しい省だ。♠アメリカ大統領は、なんとしてでも2016年大統領選挙公約の<メキシコとの国境に壁>を作って、「ほら、♠大統領は公約を守るだろう」と、アメリカの有権者に威張りたい。♠の壁は、2020年アメリカ大統領選挙戦に向けての宣伝材料に過ぎない。自費でお造りになれば? 
壁作りの考案は、♠アメリカ大統領ではなさそうだ。イスラエルが背後霊のように。チラチラしている。ユダヤ教徒で♠の娘イバンカと♠の娘婿でユダヤ系アメリカ人のクシュナーが、直接的間接的にイスラエル首相ネタニヤフの指導を受け、♠親父殿の頭に<壁作り>をインプットしたようだ。 
 ♠アメリカ大統領は、イスラエル首相ネタニヤフの言うがままに、2017年12月6日にエルサレムはイスラエルの首都だと承認し、2018年5月14日にイスラエルのテルアビブにあったアメリカ大使館をエルサレムに移し、、2019年3月21日にゴラン高原はイスラエルの領土だとツイッターに投稿し、4月6日にはラスベガスのユダヤ系団体による集会で、「イスラエルの権利を取り戻そう」と演説し、大喝采を浴びた。♠アメリカ大統領は2020年アメリカ大統領選挙での資金集めをし、イスラエル総選挙中のネタニヤフ首相に心強い援護射撃をした。勢いづいたネタニヤフ首相は4月6日に出演したTV番組で、西岸のユダヤ人入植地をイスラエルの主権下に置く姿勢を強調した。さらに♠アメリカ大統領は4月8日に、「イラン革命防衛隊をテロリストと見なす」と、これまた、ネタニヤフを喜ばせる選挙応援声明を出した。これまでもイスラエルとアメリカは、パレスチナのガザを仕切るハマス(イスラム抵抗運動)にテロ組織のレッテルを貼って、国連決議も国際法も人道も無視し、ガザを侵攻し続けてきた。 
 さて、♠アメリカ政権が全身全霊で選挙応援したネタニヤフの選挙は? 4月10日の選挙結果では、ネタニヤフの右派政党リクードとガンツの中道会派<青と白>が、連立政権を模索することになりそうだという、、しかし、世間でいう右と左の対決ではない。ガンツは2011年から4年間、イスラエル軍トップの参謀総長を務め、2014年にはガザ地区に対する史上最大の軍事作戦で総指揮官として、子供たちを含むガザの住民1460人を虐殺した...(提供OCHA国連人道問題調整事務所) 
 
 国連安保理での西サハラ協議に先駆けて、西サハラ難民政府国連代表シディ・オマル博士は、ドイツ国連大使クリストフ・ヒュースゲン国連安保理4月議長に、書簡を送りました。 
 書簡は、西サハラ人民が民族自決権の国連人民投票を1991年から待ち続けていること、モロッコ占領地・西サハラでの非道な人権侵害のこと、西サハラの天然資源は西サハラ人民のものであること、そして、西サハラの未来は西サハラ人民が決めるものだということを、改めて強調していました。 
 国連安保理がオマル博士の訴えを真摯に受け止めて、4月末に予定されている国連安保理西サハラ決議に反映されることを願ってやみません 
 
 
Youtubeに2018年7月にアップした「人民投票」(Referendum)をご案内します。 
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU 
 
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いいたします。 
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 
「Last Colony in Africa]  英語版URL:  https://youtu.be/au5p6mxvheo 
 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之     2019年4月10日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


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