2019年04月30日09時56分掲載  無料記事
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外国人労働者

「外国人労働者」の本音はいかに 〜 専門職外国人労働者の実情 〜

 安倍政権による外国人労働者の受け入れ拡大政策が進む中、4月14日に東京都内で、日本で働く外国人労働者が抱える労働問題にフォーカスを当てた集会が開催された。 
 主催は、外国人の労働問題解決に力を入れている「全国一般労働組合東京南部」(以下、全国一般東京なんぶ)。 
 集会では、高度人材と呼ばれる専門職の外国人労働者数名がパネラーとして登壇し、各々が実情と心境を語った。 
 
<外国人労働者も労組を活用して権利を勝ち取れる!> 
 
 集会のコーディネーターを務めた、全国一般なんぶ組合員のオリバー・フィリップ(Oliver Phillipe)さんは、日本で研究者として働きながら、2015年に労働問題に直面したことに触れて、「それまで仕事を中心に回っていた人生だったが、優先順位が変わった」と語りつつ、 
「日本では、世間の興味を惹きづらいためか、技能実習生などの(単純労働を担う)人たちが注目されがちで、専門職労働者に関する問題が語られることは少ない。しかし、私たちも労働問題を抱えており、労働組合はこのような人たちとの繋がりを保つのに相応しく、組合の取り組みにより労働環境が良くなった事例がたくさんある」と労働組合の必要性を強く訴えた。 
 オリバーさんは現在、NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」のボランティア活動にも携わっており、外国人労働者の権利向上に向けて精力的に活動しているということだ。 
 
 また、ユーゴスラビア(現:ボスニア・ヘルツェゴビナ)から来日しているスレイマン・ブルキッチ(Sulejman Brkic)さんは、語学学校で教師を務めていた当時の過酷な労働環境について、 
「来日後、いくつかの職を経て、語学学校で22年間働いたが、その際は有給休暇を取得することができず、健康保険にも入ることができなかった。休日も、10年間、日曜日の午後しか取得することができず、働いたわりに給料もそれほど上がらなかった」と吐露した。 
 語学学校の社長は、スレイマンさんに「お金がない」と言いつつ、新規の学校建設とスタッフの採用を進めたという。 
 社長の「お金がない」という言葉が嘘であると気づいたスレイマンさんは、有給休暇を申請したところ解雇されたため、全国一般東京なんぶに相談し、同労組からの支援を受けて、語学学校の前で毎月数回、抗議活動などを行った結果、語学学校の労働環境を改善させることに一役買うことができたとのことである。 
 
 さらに、1995年にガーナから来日したアジェイ(Seth Klu Adjei)さんは、いわゆる3K(きつい、汚い、危険)の仕事を経験した後、建築物の検査を行う仕事に就いた際、労働問題に直面したという。 
「仕事のきつさから脊髄を損傷し、労働基準監督署から労災認定を受けたが、会社はこれを労働災害と認めず、補償を行うことを拒否した。私は労働組合にこの状況を伝え、組合の支援で会社を訴えた」と語ったアジェイさんは、全国一般東京なんぶによる支援の下、裁判闘争に突入し、結果的には証拠不十分などの理由で、一審・控訴審ともに敗訴するに至ったのだが、アジェイさんの闘いによって、会社は労働条件を改善する方向に動いたことから、アジェイさんが声を上げたことが成果をもたらしたことは間違いないだろう。 
 
<外国人労働者の声に耳を傾けよう> 
 
 その後に行われた自由討論では、パネラーの1人が「日本では、外国人労働者が“子供”や“犯罪者”のように扱われるが、これは少数者への差別である」との見方を披露し、それを受けて集会参加者の中から「日本人経営者は、外国人労働者が『なぜ?』と尋ねるだけで『反抗している』と捉える傾向がある。これは外国人労働者を“イジメの対象”として見ているということだ」という声が上がるなど、日本社会の在り方や日本の文化・風習における問題点が浮き彫りになる一幕もあった。 
 また、ビザ(査証)などの在留制度について「在留カードには、日本にどの程度の期間在留しているのかが記載されていない。そのような記載があれば在留外国人への差別が減らせるのではないか」と入管行政に対する提言も上がっていた。 
 
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 安倍政権による外国人労働者の受け入れ拡大に伴い、これまで以上に多様な労働問題が発生する可能性があることから、日本の行政には、来日する外国人労働者や受け入れ側の日本社会に対するきめ細やかな対応が、より一層求められる。 
 そのためにも、こうした外国人労働者の生の声を聴き、各々が抱える問題を日本人が共有していくことが重要だ。日本社会において、外国人労働者に対する理解が進んでいるとはまだまだ言えない中、外国人労働者を支え続ける全国一般東京なんぶのような外国人労働者支援労組の重要性が今後益々高まっていくのは間違いない。 
 全国一般東京なんぶには、今回の集会だけに留まらず、日本で働く外国人労働者の声を、引き続き私たち日本人に向けて発信し続けてほしいと思う。(岩本裕之) 


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