2019年06月05日17時10分掲載  無料記事
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中国

「私たちは忘れない」 天安門弾圧で香港民主派が声明

 1989年の「北京の春」を弾圧した「六四」天安門事件から三〇年。中国は当局の厳しい監視のもとで民衆は沈黙を余儀なくされている。当時中国の学生たちの民主化運動をサポートしてきた香港の民主的ナショナルセンターの香港職工会聯盟(HKCTU)が声明をだした。その香港もまた、中国共産党政権の締め付けが次第に強まり、民主派への抑圧が強まっている。そんな香港の民主派は、「六四」をめぐる状況ををどうみたのか。「私たちは労働者と学生が正義と民主を追い求めた熱意を忘れてはいません」と述べるHKCTUの声明を市民団体TTACの稲垣豊さんの翻訳で紹介する。(大野和興) 
 
中国語の原文はこちら 
 
http://www.hkctu.org.hk/zh-hant/content/%E8%81%B7%E5%B7%A5%E7%9B%9F%E5%85%AD%E5%9B%9B%E4%B8%89%E5%8D%81%E9%80%B1%E5%B9%B4%E8%81%B2%E6%98%8E%E2%80%94%E5%AE%88%E8%AD%B7%E5%85%AD%E5%9B%9B%E8%A8%98%E6%86%B6%EF%BC%8C%E6%8A%97%E8%A1%A1%E4%B8%AD%E5%85%B1%E5%B0%88%E5%88%B6 
 
HKCTUはこの声明以外にも、当時、中国の民主化を支援した香港の労働組合員の声を紹介したり、当初は労働者の参加に冷淡だった学生運動と労働者をつないだ人たちのエピソードを紹介しています。(稲垣) 
 
 
香港職工会聯盟(HKCTU)声明 
 
私たちの力の源は団結にあり、成功の源は断乎たる信念にあり 
六四天安門事件の記憶を護持しつづけ、中国共産党の専制に対抗する 
 
30年前、香港人はテレビの生中継を通じて、天安門広場にそびえ立つ民主の女神像が、人民解放軍の蹄鉄によって打ち倒されるところを目撃しました。民主と自由の象徴であった天安門広場を守るために、無数の労働者と学生が命を懸けました。この驚くべき歴史の記憶は、香港人一人一人の心に深く刻み込まれました。 
 
残念なことに、30年後の今日、この記憶を拒否し、忘却を選択しようとする人がいるのです。しかしHKCTUは忘れません。私たちは労働者と学生が正義と民主を追い求めた熱意を忘れてはいません。わたしたちは労働者と学生の訴えに対する中国共産党官僚の軽蔑を忘れてはいません。それ以上に、わたしたちは労働者と学生が果敢さと英雄的行為を忘れてはいません。あのとき多くの都市で労働者が中華全国総工会の縛りから自らを解放し、つぎつぎに工人自治聯合会(工自聯)を結成して民主化運動に参加したのです。中国共産党政権はじまって以来、労働者がはじめて結社の自由に関する権利を実現したのです。しかし中国共産党はそれを武力で鎮圧し、わずかの時間に享受した自由も途絶えてしまいまし 
た。 
 
習近平の登場から現在まで、その強権的作風が国内の労度運動活動家を抑圧してきました。李旺陽、劉少明、白東平、周勇軍など全国各地の当時の工自聯のメンバーは、のちに中共政権からさまざまな弾圧を受けました。1989年のときも2019年の現在も、中国の労働者が立ち上がって自主労組を結成しようとすれば、同じように大きな政治的リスクを払うことになります。2018年には深セン佳士の労働者が労組結成を試みたことで当局から弾圧され、現在までに50名を超す労働者と学生が捕まっています。習近平が「人類運命共同体の構築を進める」という文言を華々しく憲法に書き加えようとするなかで、深セン佳士の労働者たちの悲惨な経験が明らかにしたことは、中国共産党の「人類運命共同体」が、官僚と資本家 
が結託した利益共同体に過ぎないことでした。 
 
林鄭[香港行政長官]統治下の特区政府による異論派への弾圧は、習政権の強権的作風と無関係ではありません。「オキュパイ・セントラル9人組」起訴[雨傘運動の指導者9人が起訴され有罪判決を受けた]し、グレート・ベイ・エリア建設[国務院が香港、マカオ、広東の一体的建設計画を発表した]、民意無視の高速鉄道の一地両検[中国出入国管理局が越権して香港で業務を行う]、「逃亡犯条例」の改訂など、いずれも特区政府が「一国二制度、高度な自治」を無視したものであり、習政権による全権統制のためのものにすぎません。香港はまさに「一国一制度」の暗黒の時代に入りつつあります。 
 
首都工自聯準備委が1989年5月21日に発表した「工人宣言」には次のように書かれていました。 
 
「専制と独裁を打ち倒し、国家の民主化を押し進めること、これが道義的に辞することができない我々の責任ある。私たちの力の源は団結にあり、成功の源は断乎たる信念にある。」 
 
ゆえに、HKCTUは六四の記憶を護持しつづけることが、良識という道徳責任を負うだけでなく、中共の強権に抵抗する歴史的使命をも担うことだと深く確信しています。香港と中国の労働者と市民の権利がますます政権によって蹂躙されるいま、私たちは断乎たる信念で、民主化を押し進めるという責任を堂々と遂行し、中共政権の専制と独裁を打ち倒すために、香港と中国の労働者が団結し、ともに戦い続けることを選択します。 


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