2019年06月06日15時18分掲載
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コラム
チェコのもぐらのクルテク 村上良太
空港のカウンターに向かって並んでいると、子供がじろじろ見ることが多い。僕のスーツケースだ。そこにはKrtek(クルテク)のシールが貼ってあるからだ。クルテクはチェコの漫画の人気キャラクターなのだ。それは黒いモグラである。だが、クルテクはミッキーマウスやドナルドダック、あるいは、スーパーマリオほどには面が割れていないのではなかろうか。それでも子供たちは人気度などよりも、クルテクの漫画自体に興味をひきつけられるのかもしれない。
僕はクルテクをシールにして貼りたかったわけではなかった。やむを得ずそうしただけで、その後も「いい年をして恥ずかしい」と自分で思ったことは何度もある。僕の同僚たちは旅の達人が仕事柄多く、みんな様々なシールを貼っている。訪れた国々で買った記念のシールを旅を終えるごとに1つ貼っていくカメラマンもいる。彼のスーツケースは年季がたって味が出ている。カクテルやビールのシール、山岳地帯での自動車レースのシール、気球、エンパイアステートビルなどなど。だが、アニメのキャラはない。
僕は何年か前、パリに出かける直前に、1回り大きなスーツケースを買った。新たに買った1回り大きめの三脚をすっぽり納めるためだ。出発前日、空港でスーツケースを間違って誰かが持って行ってはいけないな、と思い、シールを貼って違いを分かりやすくしようと思った。だがその時、手持ちのシールがなかった。そもそも僕にはシールを貼る習慣自体がない。そんな時、古書店で手に入れたクルテクの絵本にシールがついていたことを思い出した。本にシールを付けておくことは、漫画を世界に普及するには優れた戦略なのかもしれない。ハチが花粉を運んでいくように。
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