2019年06月14日15時30分掲載  無料記事
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政治

安倍のパフォーマンス政治にだまされるな  根本行雄

 安倍晋三首相の暴走が続いている。国会を空転させ続け、憲法を順守しない安倍政治の暴走は留まるところを知らない。新元号フィーバーや、トランプ大統領に対する幇間外交といった「パフォーマンス政治」に加速をかけ、今や、憲法改正のために衆参同日選挙を画策している。6月6日、通算在任日数が歴代3位の伊藤博文元首相と並び、戦後の政治史に、さらに汚点を増やした。 
 
 2016年のリオデジャネイロのオリンピックの閉会式で「マリオ」になったり、2013年、長嶋茂雄、松井秀喜両氏に国民栄誉賞が贈られたときの始球式で安倍首相が球審を務めたりなど、このようなパフォーマンスは安倍晋三首相のいつものやり口である、「パフォーマンス政治」だ。 
 
 現在、安倍政権下で、自衛隊の日報問題、森友・加計学園問題、公文書の隠蔽、改ざん、ねつ造、虚偽説明など、腐敗、堕落した政治が露呈している。このような政権担当者に、「憲法改正」という重要問題を担っていくことができるだろうか。責任遂行能力があるだろうか。 
 
 安倍政権が憲法を順守せず、国会を軽視し、押し進めている政治とは、日本を「戦争のできる国」にするための憲法改正(改憲)である。国民の多くは、このことを気づかないでいるのか、忘れているのか。新元号騒ぎで、花見のようにうかれているようだ。 
 
 
 
 
 
□ 新元号フィーバー 
 
 
 
 安倍晋三首相は4月1日、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムで自身の記者会見をライブ配信させ、「歴史上初めて国書を典拠に元号を決定した」とアピールをした。夜も、NHKやテレビ朝日のニュース番組に生出演した。この動きは、明らかに、安倍政権が新元号発表を政権浮揚に利用したものであり、国民のうけを狙ったパフォーマンスである。共同通信社が4月1日、2日に実施した全国緊急電話世論調査によると、内閣支持率は52・8%で、3月の前回調査比9・55ポイントの大幅に増加した。不支持は8・5ポイント減の32・4%となった。安倍政権が国民のうけを狙ったパフォーマンスは成功した。 
 
 5月27日午前、天皇、皇后はアメリカのトランプ大統領夫妻と会見した。天皇に即位してから最初の国賓との会見であったが、その内容は新聞報道によると、時間はわずか15分、いわば儀礼的な会見でもあったようだ。しかし、日本の皇室とアメリカとが友好関係にあるという空気は醸し出された。 安倍政治の、こういう形での象徴天皇制の利用のしかたには問題がある。安倍には、主権者が国民であるという憲法の基本原則が理解されていないのではないだろうか。 
 
 
□ トランプへの幇間外交 
 
 
 
 5月26日、安倍晋三首相と、来日中のトランプ米大統領は、茂原カントリー倶楽部(千葉県茂原市)でゴルフをした。プロゴルファーの青木功氏(76)も参加した。終了後には、クラブハウスで昼食の米国産牛のダブルチーズバーガーを食べた。 
 
 このハンバーガーは、外務省がいつも注文するハンバーガーショップのオーストラリア産の牛肉ではなく、米国産を使うよう要請した特別なハンバーガーであった。ここにトランプ大統領の訪日の理由が凝縮されている。 
 
 5月26日夕方には、安倍晋三首相は、来日中のトランプ米大統領と東京・両国国技館で大相撲夏場所の千秋楽を観戦した。表彰式では首相に続いてトランプ氏が土俵に上がり、幕内優勝を果たした朝乃山に「米国大統領杯」を授与した。外務省によると、海外の首脳が優勝力士を直接表彰するのは初めてのことである。 
 
 トランプ大統領は訪日中の5月26日、ツイッターに「日本との貿易交渉は素晴らしく前進している。特に農業と牛肉だ。大部分は7月の(参院)選挙まで待つことになる。大きな数字を期待している」と投稿した。 
 
 
□ 安倍政治の背景にあるもの 
 
 安倍首相の祖父である、岸信介は、サンフランシスコ講和条約の発効にともない公職追放解除となるとすぐに、1952年4月に「自主憲法制定」、「自主軍備確立」、「自主外交展開」をスローガンに掲げた日本再建連盟を設立し、会長に就任した。1953年の選挙に大敗すると、自由党に入党した。公認候補として衆議院選挙に当選して吉田から憲法調査会会長に任じられて自主憲法制定を目指したが、54年に吉田の「軽武装、対米協調」路線に反発したため自由党を除名された。岸は「真の日本独立を実現するためには、先ず保守合同で政局を安定させて、その勢いで政治的には「民族の魂が表現された憲法」を造って、自主防衛すべく、経済的にはこの狭いところに八千五百万人という人口を如何に養っていくために自立せねばならないと主張した。 
 
 安倍は祖父の岸信介の遺志を引き継ぎ、「自主憲法制定」、「自主軍備確立」を目ざし、実現させようとしているのだ。安倍の政治は岸信介という「亡霊」にあやつられている政治だ。 
 
 
□ 憲法違反の政治 
 
 2017年10月の衆議院議員選挙において、小選挙区では自民党は48%の得票率で75%の議席を獲得した。過半数に達しない政党が、3分の2の議席を獲得するトリック。選挙制度は、代議制民主主義の根幹にかかわっている。主権者である国民の意思を反映しない制度は議会制民主主義を根底からなし崩しにしていく。安倍政権は「自民1強」の議席数にものを言わせて、改ざん、隠蔽、虚偽答弁、強行採決などなど、議会制民主主義を亡ぼす道を押し進めている。 与党自民党の議員たちは、だれのための政治をしているのだろうか。主権者である国民を軽視し、ないがしろにしていることは明らかだ。国民不在の政治であり、亡国の政治であることは明らかだ。 
 
 
□ 安保法制 
 
 
 自衛隊という存在そのものが憲法違反である。それを「解釈改憲」という手法で、自民党という長期政権が自衛隊を増強させ続けてきた。その結末が、 
 
 2015年9月に「安全保障関連法」が成立した。そして、自民党、安倍政権がもくろんでいるのが、自衛隊の憲法への明記である。これに対して多くの憲法学者が、「集団的自衛権の一部の行使を容認した閣議決定及び安全保障法制は、憲法違反であり、憲法によって制約される当事者である内閣が、みずから積み重ねてきた解釈を論理的整合性なく変更するものであり、立憲主義に反する」ものだと考えている。 
 
 
□ 憲法改正 
 
 安倍自民党が実現しようとしている「憲法改正」の中身は、復古的で、反動的である。「自衛隊を憲法に明記すること」によって自衛隊を世界中へ派遣できるようにすることであり、「教育の充実」は「国のために死ぬことは尊い」という教育勅語の思想を注入できるようにすることであり、「緊急事態条項の導入」は、戦争を遂行するために首相に無制限の権力を認めることである。 
 
 ネモトは、安倍が一番実現したいと考えているのは、「憲法の改正」ではなく、「緊急事態条項の導入」ではないかと考えている。「緊急事態条項の導入」とは、ナチスのヒトラーのように、何でもできるフリーパスを手に入れることだからだ。 
 
 
□ 「ボーと生きてるんじゃないよ」 
 
 安倍は選挙で勝ち、憲法改正を実現しようと目論んでおり、衆参同日選挙を計画していたが、年金2000万円問題で国民年金制度の破綻があきらかになってきた。形勢が不利になってきたので、別の計画を立てようとしているようだ。しかし、消費税の増税もあり、自民党内部の造反もあり、安倍の政権は大きく揺らいでいる。2020年のオリンピックまで、安倍政権は維持できるのか。 
 
 安倍政権は依然として暴走を続けている。そして、いつものように、国民のうけを狙ったパフォーマンス政治で政権の浮揚をはかろうとしている。国民が『これは安倍政権が仕掛けたショーなんだ』と気付かないと、政府への監視の目がゆるみ、安倍政権の意図に国民がずるずる引きずられてしまうことになる。選挙で、またしても、自民党の「一強」時代が続くことになれば、安倍政権によって「戦争のできる国」にするための改憲が押し進められていくことになることは明らかだ。 
 
 多くの国民は「戦争のできる国」にするために 安倍政権が改憲をすすめていることを忘れているようだ。そういう国民に対して、「ボーと生きてるんじゃないよ」と言いたい。 


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