2019年07月02日09時29分掲載
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反戦・平和
戦争力を強める日本<3> 増強続ける自衛隊 矢倉久泰
「専守防衛」から「反共の砦」にシフトする「日米同盟」へ、そして米軍だけでなく米軍の仲間「多国籍軍」の一員となって、地球の裏側まで行動範囲を広げ、いまはそれを「宇宙」まで…と、2018年12月に策定した新防衛計画の大綱(防衛大綱)は謳っています。唖然とする自衛隊の変貌ぶりです。
防衛庁が1954年6月に設置され、陸海空の自衛隊が発足したときの「任務」は、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し、わが国を防衛すること、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする」と自衛隊法に定め、「必要最低限の防衛力」で「国土防衛」にあたるというものでした。「国土防衛」すなわち「専守防衛」です。
「専守防衛」は相手国が攻めてきたとき、防戦するために兵士や武器を備えておく必要があります。つまり「防衛のための戦力」です。「自衛のための必要最小限の防衛力を保持するのは憲法に違反しない」と政府は宣言しました。
では、自衛隊の「専守防衛」の実態はどうなっているのでしょうか。自衛隊発足のとき、陸上自衛隊12万6487人、海上自衛隊4105人、航空自衛隊5702人の計13万6294人もいました。この大勢の隊員と武器などの装備で「専守防衛」することに、私は違和感を持ち続けてきました。憲法第9条は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は認めない」と「戦争放棄」を明記しています。子どもころ読んだ「あたらしい憲法のはなし」(文部省発行)には、「戦争放棄」と大書して、軍艦や戦闘機、武器が捨てられている挿絵があり、私の胸に沁みついているからです。空襲体験のある私は、「日本はもうこれで戦争しない国になったのだ」と思ったものです。
▽全国に自衛隊の基地
陸上自衛隊の基地(駐屯地・分屯地)は全国46都道府県に162か所あります。(奈良県のみ基地なし)。東京周辺では朝霞、練馬、市ヶ谷、小平、立川、東立川などにあります。
演習場は全国各地にあります。有名なのは富士山のすそ野にある北富士演習場。ここでは小銃、機関砲、戦車砲、迎撃砲など各種の火砲の実弾射撃訓練が行われています。
自衛隊の射撃訓練中に基地周辺に被害を及ぼしているケースがあります。最近では2018年11月、滋賀県高島市にある陸上自衛隊饗庭野演習場に接する国道に射撃訓練中の迫撃砲弾が着弾し、その破片が道路脇に駐車中のワゴン車の窓ガラスを割ったという�犹�故“がありました。
レーダー(電波探知機)を備えた基地は全国に28か所あり、巨大なアンテナを設置して情報収集にあたっています。私は新聞記者時代(1980年代後半)、取材で長崎県対馬を訪れた帰り、時間があったので対馬北端の航空自衛隊海栗島分屯地に連絡船で渡り、巨大な丸いパラボラアンテナが動いているのを海上から見ました。いまは北朝鮮の動きを捉えているのでしょう。
情報取集・偵察は地上のレーダーだけでなく、衛星でも行っています。自衛隊は2012年までに光学衛星2基とレーダー衛星2基を打ち上げています。また民間が打ち上げたXバンド通信衛星も利用しています。これで地球全体の監視が出来るということです。
▽「専守防衛」のためレーダーで監視
レーダーでキャッチした情報(国籍不明機、近隣諸国からのミサイル発射など)は全国4か所にある区域担当の防空司令部(三沢、入間、春日、那覇)に集められ、航空隊や海上自衛隊の艦船に緊急出動(スクランブル)を司令します。航空隊のスクランブル発進基地は千歳、三沢、百里、小松、築城、新田原、那覇の7か所にあり、緊急発進の命令が来ると、5分以内に制空迎撃戦闘機F15が飛び立ち、日本の領空外に出るよう警告を発します。F15は空対空短距離ミサイルと機関銃を搭載していて、警告に従わない不審機に発射できるようになっています。空中戦です。
防衛省によると、航空自衛隊の戦闘機F15が2018年4月〜12月の間に緊急発進した回数は758回。前年同時期より22回増えています。対中国機は81回増えて476回、対ロシア機は58回減って270回。中国機が対馬海峡を通過して日本海に飛行したのは6件で過去最多でした。
レーダー基地には戦闘機だけでなく、車両に積んだパトリオット・ミサイルや地対空弾道弾が用意されていて、飛来してくるミサイル弾を撃ち落とすことができるようになっています。
日本の領海を犯す不審船を発見すれば、海上自衛隊に連絡、航行中の護衛艦や潜水艦が不審船に近づいて、日本の領海に入らないよう警告します。護衛艦にはミサイルや機関砲を装備したヘリコプターが搭載されていて、いざというとき飛び立てるようにしてあります。
海上自衛隊のスクランブル発進基地は大湊、横須賀、舞鶴、呉、佐世保の5か所。2018年1月、尖閣諸島海域で潜航中の中国潜水艦を発見し、護衛艦2隻が追尾して領海外へ追い出したということです。
▽イージス・アショワの配備
安部政権はこの「ミサイル防衛」を強化するため、2017年12月、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショワ」2基を米国のロッキード社から購入することを閣議決定しました。
イージス艦が搭載している迎撃ミサイルシステムを地上に配備するもので、高性能のレーダーと指揮通信・コンピューター・情報通信システムを備えていて、その探知能力は海上自衛隊のイージス艦のシステムの倍以上の千数百キロに強化されるとのことです。
これは北朝鮮シフトです。「北朝鮮は近年、前例のない弾道ミサイルを発射し、同時発射能力や奇襲的攻撃能力を急速に強化してき」て、「わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威」(新防衛大綱)である北朝鮮から発射される弾道ミサイルを発射段階からキャッチ、飛来するミサイルを、迎撃ミサイルで打ち落とすことができます。
防衛省はこの「イージス・アショア」を2023年度に秋田市の新屋演習場と山口県萩市の陸上自衛隊むつみ演習場に設置する計画ですが、地元住民は反対しています。
この2基地で尖閣諸島を含む日本全土をカバーできるといいます。購入額は米国の言いなりで6000億円とされます。まさに「爆買い」です。トランプ大統領は「安部は愛(う)い奴だ」と喜んだそうです。
▽南西諸島シフトの防衛強化
安部政権は中国軍の尖閣諸島周辺での活動が活発化しているため、2013年の防衛大綱に「南西地域の防衛態勢の強化、防衛力整備を優先する」と明記し、南西地域の防衛強化に乗り出しました。
これまで沖縄本島に陸上自衛隊普通科や高射砲部隊を中心とした第15旅団を置くだけでしたが、2016年3月、中国(台湾)に最も近い与那国島に陸上自衛隊駐屯地(沿岸監視部隊)を開設して160人の隊員を配備、2019年3月、奄美大島北部の奄美市と南部の瀬戸内町に警部部隊と対艦・対空ミサイル部隊の計550人を配備しました。宮古島には中央部に陸上自衛隊駐屯地(警部部隊)を置き、対艦・対戦車用の多目的誘導弾(ミサイル)、迫撃砲などを配備、島東部では弾薬庫や射場が整備れました。2020年度以降に対艦・対空ミサイル部隊が配備される予定で、総勢700〜800人になります。
岩田防衛相は記者会見で「日本の守りの最前線は南西地域だが、1200キロの幅がある。(奄美や宮古などの)部隊配置ができることで、空白地帯が埋まる」と語りました。(2019年3月27日「毎日」)
また、2019年の新防衛大綱で「島しょう防衛用高速滑空弾部隊」という部隊を新設、既設の水陸機動団とともに「中国軍の侵攻を阻止する」ことにしています。水際で日中の攻防戦が展開される可能性があります。
また、超音速で高高度を滑空し、目標地点に短時間で到着し、島々へ上陸する敵機動部隊を攻撃できる極短音速誘導弾の技術開発も研究中で、2018年度予算で184億円もの巨費を投じています。ほかに超小型衛星を飛ばして中国船が中国大陸を出航したときからリアルタイムで監視し、搭載している装備を確認し、目的地を推測することができるようにする計画もあります。(「サンケイ」)
「日本防衛が名目だが、実際は米国の海軍と空軍の統合作戦『エアシーバトル構想』の一環であり、対中封じ込め作戦の一端を肩代わりしている」と飯島滋明・名古屋学院大(憲法学)准教授は指摘しています。(「毎日」)
以上、見てきたように自衛隊はもっぱら日本国土を守るための必要最小限の防衛力を持つことに限る「専守防衛」を超えて「戦争のできる軍事力増強」へ突き進んでいるといえます。これは憲法9条違反のなにものでもありません。
▽自衛隊は軍隊
安倍首相は2015年3月20日の国会質疑で自衛隊を「我が軍」と答弁しています。この発言について菅官房長官は記者会見で、「自衛隊は我が国の防衛を主たる任務としている。このような組織を軍隊と呼ぶのであれば、自衛隊も軍隊の一つということだ」「自衛隊は一般的に国際法上は軍隊に該当することになっている」と述べています。政府自ら「自衛隊は軍隊」と認めたのです。実際、外国では自衛隊を「アーミー(軍隊)」と呼んでいます。
▽海外へ進出する自衛隊
自衛隊は「国土防衛」どころか海外派兵も進めています。湾岸戦争をきっかけに米の圧力でで、海外派遣の第1弾として1991年6月、ペルシャ湾に海上自衛隊掃海部隊511人を派遣し、掃海艦6隻で機雷の除去にあたりました。派遣した防衛庁長官は「わが国の船舶の航行の安全を確保するため」といいました。「専守防衛」の海外版ということでしょうか。
政府は自衛隊の海外派遣を法的に出来るようにするために、1992年6月、「国際平和協力」という「美名」のPKO協力法を制定して、「紛争に巻き込まれる恐れのない国・地域」への救難、輸送、土木工事などをする後方支援のために自衛隊を派遣することにしました。
1992年9月にはカンボジアへ陸上自衛隊施設部隊600人と文民警察官等を派遣し、ました。陸上自衛隊の海外派遣はこれが初めて。停戦監視活動、紛争で破壊された道路や橋の修理、公正な選挙が行われるか監視するのが主な任務でした。(矢倉注・この派遣に加わった文民警察官と市民ボランティアの青年が射殺されるという悲劇がありました)
2015年9月には「安全保障関連法」を制定して「集団的自衛権の行使」ができるようにし、相次いで海外派遣が行われるようになりました。以下、ワークペディアで検索した「自衛隊の海外派遣」を紹介します。
・「後方支援・復興支援」 2001年、インド洋へ海上自衛隊を派遣、米海軍など各国の艦艇に燃料の補給活動を実施。2004年、イラクへ国家再建のために陸上自衛隊と航空自衛隊を派遣。
・「PKO活動として」 1993年、モザンビークへ輸送部隊48人を派遣。1996年、イスラエルとシリアの国境地帯のゴラン高原に輸送部隊43人を派遣。2001年、東チモールへ施設部隊680人派遣。2007年、ネパールへ停戦監視のため6人派遣。2008年、スーダンへ陸上自衛隊2人派遣。2010年、ハイチへ道路補修などのために施設部隊を派遣。2011年、南スーダンへ施設部隊を派遣(矢倉注・国会で秘匿が問題になった「日報」は現地対立勢力の銃撃戦の射撃音を駐在隊員が何度も聞いていることを記録しています。流れ弾で隊員が被害を被る可能性がありました)
・「難民救援」 1994年、ルワンダへ難民救援隊260人と空輸派遣隊118人派遣。1997年、東チモールへ空輸部隊113人派遣。2001年、アフガニスタンへ空輸部隊138人派遣。2004年、イラクへ空輸部隊98人派遣。(注・空輸部隊は救援物資を飛行機で運ぶ任務)
・「国際緊急援助隊」 1998年、ハリケーンで被害の出たホンジュラスへ医療部隊80人と物資供給の空輸部隊105人を派遣。1999年、地震があったトルコへ救援物資を積んだ輸送船3隻を派遣。2001年、地震があったインドへ物資救援部隊16人と空輸部隊78人を派遣。2003年、地震のあったイランへ空輸部隊31人を派遣。2004年、スマトラ沖地震のあったインドネシアへ護衛艦3隻640人を派遣。重機など34両を輸送。2005年、地震のあったパキスタンへ救援物資1トンを提供するため720人を派遣。2013年、台風のあったフィリピンへ護衛艦、輸送艦で1180人を派遣。2014年、民間航空機墜落事故のあったマレーシアへ機体捜索支援のため航空自衛隊機3機を派遣。同年、民間機が海の墜落した事故のあったインドネシアへ護衛艦2隻を派遣、搭載したヘリで遺体の捜索にあたる。2015年、エボラ出血熱が流行したガーナへ個人防護具2万セットを輸送。2015年、地震のあったネパールへ救援隊を派遣。2016年、地震のあったニュージーランドへ海上自衛隊機を派遣、被害状況を確認。2018年、地震のあったインドネシアへ救援物資を輸送。
このほか、人質事件のあったイラクなど5カ国に日本人救出のため「在外邦人輸送」、2009年、ソマリア沖の海賊対策のため護衛艦2隻400人を派遣、2001年、ハワイ沖で愛媛県県立宇和島水産高校の練習船「えひめ丸」が米海軍の原子力潜水艦と衝突、沈没した事故で、潜水艦救難艦を遺体捜索のために派遣。(乗組員35人のうち学生・教員9人死亡)2000年、中国と協力して中国東北部へ旧関東軍が遺棄した化学兵器の発掘、回収、処理のため利器上自衛隊の化学兵器担当官などを派遣しています。
▽国内での災害救助
国内で発生する地震、台風・水害、豪雪、原子力などの被害者を救援するために、自衛隊は年間500〜600件を派遣しています。救援物資の輸送、給水、行方不明者の捜索、遺体の収容、がれきの撤去、道路・橋の修理、けが人の治療・手術などです。そのため、現地に給水車をはじめ、被災者に炊き出しをするための野外炊飯具、被災者への野外入浴セット、治療・手術車などを持ち込んでいます。
政府はこうした災害派遣を「従たる任務」としています。「主たる任務」は「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つための防衛」と位置付けています。
しかし、国民は災害派遣を自衛隊の「従たる任務」とは思っていません。政府が2015年に実施した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」で、「自衛隊が存続する目的は何だと思いますか」(複数回答)という問いで一番多かったのが「災害派遣」の81.9%。「自衛隊が今後力を入れていく面は何でしょうか」との問いでも「災害派遣」が72.3%と最高を占めました。
2005年に自民党が発表した「憲法改正草案」には自衛隊を「国防軍」としていました。これを基に憲法9条の改定を目論んでいます。現行の9条2項「戦力の不保持」の後に自衛隊の存在を明記しています。そうなると、時の政権が今以上に自衛隊を恣意のまま活用できるようにすることが可能になります。
▽宇宙へ拡大する自衛隊
2018年末に発表された「防衛計画の大綱」は冒頭でこう述べています。「激変する安全保障環境の中、国民の生命・身体・財産・領土・領海・領空、主権・独立を主体的、自主的な努力で守る体制を抜本的に強化する」「特に宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域では、わが国の優位性を獲得することが死活的に重要」と。そして航空自衛隊に2022年までに宇宙領域専門部隊を1個隊新設することになっています。
この部隊は人工衛星への脅威となるスペースデブリ(宇宙ごみ)のほか、中国やロシア、国籍不明の人工衛星の動向を常時監視することが主な任務で、山口県に衛星レーダー基地を新設する予定。この部隊は敵国が弾道ミサイルを発射したり、敵国レーダーが日本の衛星を攻撃しようとしたとき、日本の情報収集衛星がそれを察知し、ミサイルで破壊することを目指しています。
この防衛大綱の策定に関わった政府関係者はこう述べています。「弾道ミサイル発射の兆候も含めて情報収集や警戒監視、通信、測位、気象観測……。陸海空の作戦と装備は、宇宙に深く依存している。相手の宇宙インフラを使えなくすれば、死傷者を出さずに陸海空の戦いで圧倒的に有利になる。だから、現代の戦争は宇宙とサイバーから始まる。宇宙を制する者は現代戦を制す」
先行する米空軍の「宇宙コマンド」が2018年10月に行った机上演習に航空自衛隊幹部が参加しています。米軍は1万8000人規模の「宇宙統合軍」を2020年までに創設する計画です。こうした動きに自衛隊も同調して「宇宙戦争」に参加していくことが目に見えています。
サイバー攻撃に対処する「サイバー防衛隊」はすでに2014年に設置されています。陸海空の自衛隊員90人で編成、24時間体制で敵国のサイバー攻撃に対処しています。安部首相は2019年5月16日の衆院本会議で、日本へのサイバー攻撃のみでも武力攻撃に当たるケースもあるとして、「憲法上、自衛のための武力の行使は許される」と述べています。(「毎日」)
(注)サイバー攻撃とは、ネットワークを通じて、敵国の政府機関や防衛機関、企業などのコンピューターに不正アクセスし、データを改ざん、破壊したり、ウイルス感染などを行う「電子的攻撃」。機密情報を盗むこともできる。軍事目的の国際的なサイバーテロが増えている。
▽自衛隊を「災害救助隊」に
私は自衛隊を根本的に改組して「災害救助隊」にし、国内外の災害救助をもっぱらの任務とするのがいいと思います。それが国内と国際社会における「名誉ある存在」となるのではないでしょうか。 (つづく)
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