2019年07月14日09時41分掲載  無料記事
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文化

フランス革命記念日に向けてフランソワ・リュファン(映画監督・ジャーナリスト・国会議員)がパンク版を披露

  7月14日はフランスで1789年に起きた革命の記念日です。その象徴が革命の進軍の歌、「ラ・マルセイエーズ」。国歌になっていますが、これまで様々な歌手が権力批判のパロディ版を歌ってきました。今年話題になっているのが、ジャーナリスト・国会議員で映画監督でもあるフランソワ・リュファンとパンクバンド「La Horde」による「僕のマルセイエーズ」です。このパロディ版では市場経済至上主義が押し付けてくる様々な消費主義の「モラル」が徹底的に批判されています。 
  成長力を解放せよ、競争力だけがチャンスだ、グローバル市場システムを導入せよ、このシステムに合わせろ、もう昔みたいな暮らしはできないぞ、TVで億万長者の経営者たちを見ろ、もっと働け、もっと消費しろ・・こうした言葉をリュファンが語っています。「行こう、祖国の子供たちよ、希望の日が訪れた」という合唱で始まるこの歌はいったい誰が革命軍なのか?と思わされますが、もしかすると、マクロンが2017年の選挙戦の時に出版した著書のタイトルにした「革命」を皮肉っているのでしょうか。 
 
 
●「僕のマルセイエーズ」 
https://www.youtube.com/watch?v=yG8QFpJxl8E&feature=youtu.be&fbclid=IwAR1j1cy-MH6a5bybB8_4avd2rxXjDxF1X2bIgBti2Vg_o_mflCaOse-tsms 
 
▲フランソワ・リュファンとは? 
 
  フランソワ・リュファンは「メルシー・パトロン!」というドキュメンタリー映画の中でファッションアパレル工場の空洞化と失業した労働者夫婦の億万長者経営者に対する闘いを描いて2017年にセザール賞最優秀ドキュメンタリー映画賞に輝いています。映画に出てくる工場はケンゾーなどのブランド製品を生産してきたアパレル工場で、ポーランドなどの労賃の安い東欧に移転することになりました。その結果、失業者の夫婦は定職につけず住まいも失う寸前の苦境に陥りますが、それを何とかしようと監督のリュファン自ら登場し、夫婦に知恵を貸してともに闘う映画です。 
  この映画はのちに「黄色いベスト」運動につながる大衆抗議運動「立ち上がる夜」のきっかけとなりました。今まで受け身でいた人々に立ちあがって闘えば勝てることを示したのです。このことが1968年以来、政治的には眠っていたとも言える大衆の精神に火をつけたのでした。「立ち上がる夜」という政治運動は2016年3月31日にパリの共和国広場でこの映画を無料上映したことから始まりました。 
  映画を作ったリュファンはアミアンという北部の都市で「ファキール」(Fakir)という自ら24歳の時に創刊した隔月新聞の編集長をしてきました。アミアンという地方都市には郊外に工場が多く、EU拡大に伴う空洞化が直撃しているのです。2017年の大統領選でもアミアンの家電工場の閉鎖が争点になったくらいです。ジャーナリストとして工場空洞化と闘ってきたリュファン自らも「メルシー・パトロン!」の大ヒットを機に2017年には国会議員に立候補し左派連合の支持を得て当選しています。映画を見て感銘を受けた市民がフランス各地からアミアンに馳せ参じてボランティアで選挙運動を支えたのです。その数のべ400人。リュファンは自由貿易協定に対して反対の論陣を張り保護貿易を掲げ、エマニュエル・マクロン大統領の若きライバルと目されています。 
 
 
 
 
 
 
■フランス国会議員選挙 フランソワ・リュファン候補が当選  映画「メルシー・パトロン!」で市民運動に火をつけたジャーナリスト 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201706190645421 
 
■フランスの政治を変えたい ジャーナリスト・映画監督のフランソワ・リュファン氏が国会議員選挙に初立候補  マクロン大統領の故郷アミアンで始まる熾烈な選挙戦 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201705100827453 
 
■大富豪に対する失業家族の闘いを描いた「メルシー・パトロン!」がセザール賞(最優秀ドキュメンタリー映画賞)を受賞 フランソワ・リュファン監督 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201702251611166 
 
■エマニュエル・マクロン著 「革命:これは僕たちのフランスのための闘争だ」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201707140454055 
 
■フランス人の風刺歌 「7月14日(パリ祭)」   "14 JUILLET" par OLIVIER HEBERT / DESSINS MUZO 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201612201625392 
 
■ジョルジュ・ルフェーブル著「革命的群衆」〜フランス革命で津々浦々の農民たちはどのように立ち上がったのか?〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201906161417440 


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