新大統領も決まってほっと一息、と言う間もなく、フランスでは6月の国会議員選挙に向けた準備が始まっている。まずテレビのニュース番組ではマクロン氏が立ち上げた新しい政治グループ「En Marche !」(始動!)が国会議員候補をどう擁立するか、そしてまた大統領と同じ行政府の首相や閣僚には誰を選ぶか、こういった話題が報じられている。報道によると来月の国会議員選挙に「En Marche !」(始動!)から立候補するのは無名の新人が少なからずいるようだ。
その一方でマクロン大統領の故郷アミアンでは「En Marche !」(始動!)とは違った、新しい政治の動きも起きていた。ジャーナリストで映画監督としてもデビューしたフランソワ・リュファン(Francois Ruffin)氏が来月の投票を控える国会議員選挙に立候補を表明したのだ。リュファン氏は「メルシー・パトロン!」( Merci Patron! )というタイトルの社会問題を扱った個性的な映画で昨年デビューし、この映画は処女作ながらセザール賞・最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した。日本ではあまり知られていないが、フランスでは2月の公開から話題になり、たちまち30万人以上を動員したドキュメンタリーとしては大ヒットした映画なのだ。リュファン氏が作ったこの映画がきっかけとなって昨年、パリの共和国広場で政治・社会変革運動の「立ち上がる夜(Nuitdebout = ニュイドゥブ)」が生まれ、フランス各地やドイツ、イタリア、英国などにも広がっていった。というのも、この映画「メルシー・パトロン!」がフランス国民にほぼ50年ぶりに政治の季節を呼び覚まし、小さな市民1人1人に闘うことの大切さを教えたからだ。
ちなみにパリの少し北に位置するアミアン(Amiens)は、ソンム地域圏に属するが、日曜の大統領選挙の投票ではパリとは異なり、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン候補への投票率が40%から50%台までに及んだ地域が少なからず存在している。経済の悪化をてこに、極右政党が票を伸ばしているのだ。アミアンは工場が多数存在する地域だが、グローバル化の進展で東欧などに移転することになった工場が少なくない。その一方で新自由主義ながら社会党的なものもイメージさせている「En Marche !」(始動!)もさらなる挑戦に取り組んでいる。リュファン監督がこうしたライバルの間に立ってどうするかはこれからも注目していきたい。
※ "Merci Patron! "のtrailer
https://www.youtube.com/watch?v=U55G_PiSFh0 工場の東欧移転で失業し家を失いかけた家族が経営者で大富豪のベルナール・アルノーに闘いを挑む。監督でジャーナリストのフランソワ・リュファン氏も自ら闘いの指南役として映画に登場している。
村上良太
■昨年フランスを揺さぶった異議申し立て運動「立ち上がる夜」と難民支援運動についてアリーヌ・パイエさんに聞く Interview : Aline Pailler "sur Nuitdebout "
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201701280312536
■パリの「立ち上がる夜」 フランス現代哲学と政治の関係を参加しているパリ大学准教授(哲学)に聞く Patrice Maniglier
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201605292331240
■パリの「立ち上がる夜」 市民が自前で広場に設置したテレビ局「立ち上がるTV」の人気インタビュアー Marjorie Marramaque
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201605290351570
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