2019年07月31日16時48分掲載  無料記事
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農と食

農薬の劇的削減を求める欧州市民発議

 欧州委員会は5月15日、EU域内の農薬使用を減少させ生物多様性の促進を求める市民発議「ハチを救え!」を登録したと発表した。この市民発議は、減少するミツバチなど救うために、生物多様性の促進をEUの共通農業政策(CAP)の最重要課題として位置づけ、EUでの農薬使用量の劇的な削減、例外なく危険な農薬の禁止、承認基準の改革などを求めている。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 呼びかけたのはドイツ・バイエルン州で「ハチを守ろう」と「ミツバチ保護法」の制定に向けて住民投票を求める署名運動を展開したVolksbegehren Artenvielfaltなど。「ミツバチ保護法」制定のための住民投票を求める運動では2ヶ月で175万人の署名が集まり、バイエルン州政府は住民投票なしでの法律を制定すると発表していたが、7月17日州議会で可決された。 
 
 ・European Commission, 2019-5-15 
  European Citizens' Initiative: Commission registers ‘Save the bees!' initiative' 
  http://europa.eu/rapid/press-release_IP-19-2472_en.htm 
 
 ・The European Citizen's Initiative 
  Save the bees! Protection of biodiversity and improvement of habitats for insects in Europe 
  https://ec.europa.eu/citizens-initiative/public/initiatives/open/details/2019/000010 
 
 ・We Save Bees 
  https://wesavebees.eu/en/ 
 
 ・Volksbegehren Artenvielfalt 
  https://volksbegehren-artenvielfalt.de/ 
 
 
 EUの市民発議は法的な拘束力のある制度で、1年間に7カ国以上から100万人以上の有効な署名が集まった場合、欧州委員会は3か月以内に何らかの対応を取らなければならない。一昨年には欧州の市民団体や環境NGOなどによるグリホサートの全面的な禁止を求める市民発議が100万人を超える署名を集めた。 
 
【関連記事】 
 ・EU グリホサート禁止を求める市民発議の登録受理 1年で100万人の署名が必要 
  http://organic-newsclip.info/log/2017/17010753-1.html 
 
 ・ドイツ・バイエルン州議会 175万人が署名のミツバチ保護法を可決 
  http://organic-newsclip.info/log/2019/19070987-2.html 
 
 
■欧州議会 農薬などリスク評価の透明性確保の法案を可決 申請データが基本公開に 
 
 欧州議会は4月17日、農薬などのリスク評価の透明性を高める新たな法律改正案を賛成603、反対17、棄権27という圧倒的多数で可決した。通過した改正案は閣僚理事会の承認を待って発効する。この改正案は、140万人が署名した2017年のグリホサート禁止も求める法的拘束力のあるEU市民発議のを受けたもので、グリホサートの禁止はならなかったものの、欧州委員会はリスク評価の改善を約束していた。 
 
 食品の安全性リスク評価の信頼性と透明性を確保を目的とした今回の改正案では、企業の不都合な研究が隠されるのを防ぐためにEU共通のデータベースで研究を管理し、欧州食品安全機関(EFSA)はこの申請データを公開するというもの。 
 
 ピラール・アユソ議員は「これにより、科学的根拠に基づいた意思決定プロセスが可能になり、ヨーロッパにおける安全性と公衆衛生の高水準を保証しながら、より透明性のあるものにすることで国民の信頼と意思決定プロセスへの信頼を高めることができる」と述べているという。 
 
 ・European Parliament, 2019-4-17 
  Food safety: New rules to boost consumer trust approved by MEPs 
  http://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20190410IPR37554/food-safety-new-rules-to-boost-consumer-trust-approved-by-meps 
 
 Health and Environment Allianceは可決直後、ツイッターで「EU議会は、私たちの食品の安全性を決定するために使用されるすべての企業による研究から、より多くの透明性を必要とする法律にゴーサインを出した。私たちの健康のためのとても大きな勝利!」とツイートした。 
 
  https://twitter.com/HealthandEnv/status/1118475821952401410 
 
 Corporate Europe Observatory(CEO:欧州企業監視所)も可決直後「ストップ!グリホサート」の運動の成果であり勝利だとする声明を発表している。欧州企業監視所はまた、この改正案によればEFSAはデータを「検索、コピー、印刷」できる形式でデータを提供することを企業に要求することが可能になるはずであると指摘している。これまでに部分的に開示されたグリホサート関連のデータが電子的な処理の出来ないコピー画像であったことを考えると大きな進歩といえる。 
 
 ・Corporate Europe Observatory, 209-4-17 
  Transparency for public trust? 
  https://www.corporateeurope.org/en/2019/04/transparency-public-trust 
 
 EUの透明性を高める今回の改正は、日本の農薬行政も避けて通れない。 
 
【関連記事】 
 ・欧州食品安全機関 グリホサート試験データ「開示」へ 承認過程の透明化へ動き出すか 
  http://organic-newsclip.info/log/2016/16100745-1.html 
 
 ・欧州食品安全機関 グリホサート試験データを「公開」 
  http://organic-newsclip.info/log/2017/17010753-2.html 
 
 
■欧州司法裁判所 グリホサートのリスク関連文書公開を命ずる 
 
 欧州司法裁判所は3月7日、欧州食品安全機関(EFSA)はグリホサートの健康リスクに関する全ての文書を公開しなければならないと判決を下した。裁判所は、環境への化学物質の放出に関する情報への公衆のアクセスは企業の商業的利益の保護に優先することを明確にし、EFSAが開示しないことはEUの透明性原則に反するとした。この裁判は、欧州緑グループ・欧州自由連盟(Greens/EFA)所属の欧州議会議員が2017年5月に訴えていたもの。 
 
 この決定に対してGreens/EFAは3月7日、透明性に関する画期的な判決だとして「勝利」と歓迎する声明を出した。 
 
 グリーンピース欧州は3月7日、「判決は、EUの意思決定における透明性と説明責任への大きな一歩」であり「EFSAの使命は公衆衛生を守ることであり、グリホサート製造企業の商業的利益を保護することではないことを裁判所がクギを差した」とする声明を出した。 
 
 ・General Court of the European Union, 2019-3-7 
  EFSA’s decisions refusing access to the toxicity andcarcinogenicitystudies on the active substance glyphosateare annulled 
  https://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2019-03/cp190025en.pdf 
 
 ・Greens/EFA, 2019-3-7 
  ECJ ruling a victory in the fight for health, transparency and the environment 
  https://www.greens-efa.eu/en/article/press/ecj-ruling-a-victory-in-the-fight-for-health-transparency-and-the-environment/ 
 
 ・Greenpeace Europe, 2019-3-7 
  EFSA must side with public, not commercial interests, says EU court 
  https://www.greenpeace.org/eu-unit/issues/nature-food/1868/efsa-must-side-with-public-eu-court/ 
 
 この判決は、EFSAに対して公衆衛生の観点から文書公開を強制するものであり、他の農薬や化学物質に対しても同様の強制力を持ちうる可能性があり、EUにおけるデータ公開が進む契機になるかもしれない。当然、EUで公開されているものが日本で公開されないのはありえないこととなり、日本の農薬行政や食品安全委員会の審査にも影響が出てくるのではないか。 
 
【関連記事】 
 ・欧州食品安全機関 グリホサート試験データ「開示」へ 承認過程の透明化へ動き出すか 
  http://organic-newsclip.info/log/2016/16100745-1.html 
 
 ・欧州食品安全機関 グリホサート試験データを「公開」 
  http://organic-newsclip.info/log/2017/17010753-2.html 
 
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