2019年08月02日16時57分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201908021657235

政治

日本に左派ポピュリズムはあるのだろうか

  山本太郎氏のれいわ新選組の評価をめぐって、左派ポピュリズムかそうではないか、で議論が起きています。この言葉は欧州の政治学上の用語のようです。まず、この語の定義が日本人になじんでいない、ということが議論を不毛なものにしている印象があります。 
 
  ポピュリズムという言葉について英国のガーディアン紙は以下のような文章を載せています。オランダ人の政治学者でポピュリズムの専門家Cas Mudde氏が寄稿した文章です。この人はポピュリズムとリベラリズムを比較しながら、それぞれの良しあしを冷静に論じています。 
https://www.theguardian.com/commentisfree/2015/feb/17/problem-populism-syriza-podemos-dark-side-europe 
 ”In its original form, populism is an ideology that considers society to be ultimately separated into two homogenous and antagonistic groups: “the pure people” and “the corrupt elite”, and argues that politics should be an expression of the volonte generale (general will) of the people. ”(Cas Muddeによる) 
 
「そのもとの形式において、ポピュリズムとは社会が究極のところ、2つに分類されると考えるイデオロギーである。その2つとは「純粋な大衆」と「腐敗したエリート」という大別になる。そして、政治とは民衆の「一般意志」の表現であると見なす」 
 
  記事によると、もともとポピュリズムは極右運動に使用されており、反エリートと排外主義が大きな柱になったイデオロギーだったということです。ポピュリズムは欧州起源であり、こうした右→左の過程を経て左派ポピュリズムという言葉がスペインのポデモスやギリシアのシリザに当てはめられたと書かれています。 
 
  そもそもポピュリズムが反エリートであるなら、なぜれいわ新選組に東大教授が候補者として存在していたのだろうか、ということがあります。僕自身は以前、れいわ新選組は左派のポピュリズムという風には見ていない、と書きました。左派のポピュリズムの定義が今一つ十分に理解できていないので、間違っていたのかもしれませんが、それでも何かこの政治用語にはあまり好印象を持つことができないのです。 
  こうした歴史を踏まえた時に、日本において「エリート」とは存在するのか、さらには日本はエリートと大衆が2分化した社会なのか、ということが議論の前提として挙げられると思えます。まず自民党の安倍首相や麻生副首相がエリートとするなら、何をもってエリートなのか、ということが明らかにならないと反エリートの具体性が見えてきません。もう1つは野党の側におけるエリートへの反対という要素も左派のポピュリズムに込めているのだとしたら、たとえば立憲民主党はエリートの政党なのか、という疑問があるのです。 
 
  れいわ新選組の山本太郎代表がTV番組で「・・・・というのをポピュリストと呼ぶのなら」と前置きして自分はポピュリストと呼ばれてもいい、みたいな発言をしたそうですが、これはある条件があった場合に限っている、ということでこの言葉がただちに山本氏らがポピュリズムと言えるかどうか確定できるとは思えません。そもそも政治家が自分は・・・だと言ったとしても、それは政治家が自分をどう評価するか、という認識のレベルであり、真実かどうかは別です。フランスで国民戦線時代にマリーヌ・ルペンは「私たちは極右ではない」と言って「極右と呼んだら告訴する」と記者会見を開いたことがありましたが、ジャーナリズムではその後も極右と報じています。 
 
  まず、ポピュリズムという言葉を日本の政治用語として使うのであれば定義をきちんと説明しないと使う意味がありませんし、政党に対して否定的な意味で使うのであればよりきちんと定義を語るべきでしょう。そして、その時に、ポピュリズムにおける中心的な概念に位置するエリートというのは何を指すのかを明確にしないといけないのではないでしょうか。政治学者がこの言葉を用いるのなら、まず政治学者自らが明快な定義をつけて、欧州だけでなく、日本でも通じるし、認識上、有益かつ有効な政治用語である根拠を示すべきだと思います。つまり、これまでの政治用語では表現できないものを表現できるかどうか、そのことが鍵になると思います。単純に国民主権と言う言葉ではダメなのか、ということがあります。なぜあえて「ポピュリズム」という語を使う必要があるのか。そのことを「なるほどそうか〜」と説得力のある形で説明してほしいと思うのです。 
 
"The main bad is that populism is a monist and moralist ideology, which denies the existence of divisions of interests and opinions within “the people” and rejects the legitimacy of political opponents." 
 
「ポピュリズムの主たる悪い点は一元論で道徳主義的なイデオロギーであることだ。つまり、「民衆」の間に様々な利益の違いや意見の違いがあることを否定することである。そして政治的な対立者の合法性を否定することである」 
    (ガーディアン紙 Cas Muddeによる) 
 
  (むしろ、ポピュリズム政党は「この道しかない」とか言っている今の自民党じゃないんですか) 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。