2019年08月05日09時40分掲載  無料記事
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韓国

“麻生一族”の犯罪 関連会社の捕虜強制労働と朝鮮人強制連行でぼろ儲け  山野井孝有

 憲法改正に絡む麻生太郎のナチ発言が問題になっている。現役の閣僚、それも副総理の発言を「この程度の問題だ」で片づけて良いのだろうか。野党の腰砕けも問題だがマスコミもだ! 
 私はこれまで私達の国を「忘れてしまう国」と叫んできた。 
戦後68年目を迎えた8月15日、NHKが20歳以上の男女に終戦記念日はいつ。と問うと3分の1が終戦記念日を答えられなかった。そして5人のうち4人が戦争を知らない。この割合はさらに進むだろう。81歳の私が戦争を知り語れる最後かもしれない。 
 
 私は12歳の時、学徒動員で軍需工場でゼロ戦(特攻機)の部品を作っていた。13歳の時東京大空襲で焼死体が転がる焼け野原を歩いた。あの人間の焼け焦げた臭いは今も忘れない。 
「この仇必ず打つ」と特攻隊予備軍に志願して、グライダ―に爆弾を積んで敵艦に突っ込む訓練をした。「お国のために」「天皇陛下のために」命をささげる覚悟だった。 
 そしてあれから68年、戦争を感じることもなく平和を感じて生きてきた。 
 
 ところが2012年暮れに安倍内閣が誕生した時から、「再び戦争が引き起こされるのではないか」という危機感を感じる。もちろんこの年で戦場に行くことはないだろう。しかし自分のこの戦後の68年の間、戦争に反対し「平和」を叫んだ者として、またあの空襲で焼け焦げた焼死体の匂いを思い出すと黙っていられない。 
同じ敗戦国のドイツでは二度と戦争を犯さないために「戦争犯罪人に時効はない」といまも地球の隅々まで戦争犯罪人を追っている。そして日本の原発事故後、ドイツ政府は直ちに「原発」廃止を決めた。 
 
 地球上で唯一原子爆弾で一瞬にして数十万人の死者を出し、いまも苦しんでいる日本。そして原発事故でいまだにいつ帰れるか分からないで仮設住宅で暮らす住民。事故現場ではいまだに放射能垂れ流し、何も解決されていない原発を再稼働したり、それどころか問題だらけの原発を安倍総理は外国に売り歩いているのだ。 
広島、長崎そして福島を忘れてしまった国民に、私は言いたい。「戦争をするための憲法改正」を進める政府の№2麻生太郎の発言は絶対に見逃してはならない。 
 
 戦争でしこたま儲けた麻生は夢をもう一度!そんなことは許せない。 
 
▽ニューヨーク・タイムズ紙の報道を外務省が否定・撤回 
 3年前(2006年)ニューヨーク・タイムズなどは、麻生鉱業が1945年の敗戦までの間にオーストラリア、イギリスなど連合国捕虜300人に強制労働をさせていたと報じた。日本の外務省はニューヨーク総領事館のホームページで「日本政府は麻生鉱業が捕虜を強制労働させたという情報は得ていない。証拠もないのにニューヨーク・タイムズがこのような誹謗を行うのは遺憾だ」と反論した。さらに外務省のスポークスマンは「事実に基づかない悪意に満ちた報道だ」と、ニューヨーク・タイムズなどの報道を間違いだと発表した。この時の外務大臣は麻生太郎だった。 
 
 ところが昨年(2007年)12月になってニューヨーク総領事館のホームページから突然、「証拠がないのに麻生鉱業は捕虜を強制労働したと誹謗した」の文書が削除された。麻生鉱業が連合軍捕虜300人に強制労働をさせていた事実が、厚生労働省に保管されていた公文書によって明らかになったからだ。先に開かれた衆議院本会議で麻生総理もこの事実を認めた。 
 
 海外のメディアは直ちに「日本の首相、親族経営の企業が戦争捕虜を強制労働させていたことを認める」と打電し、海外では大きく取り上げられた。だが日本ではテレビも新聞もほとんど報じられないのはなぜだろう。私の見落としだろうか。 
 
▽麻生鉱業の朝鮮人労働者に対する虐待 
 捕虜に対する強制労働は日本以外でも行われていた。ソ連はシベリアで日本兵俘虜を強制労働させた。捕虜に対する強制労働も問題だが、「我慢出来ない、許せない」のは、日本の民間企業が強制労働をさせていたことだ。それも現在の首相・麻生太郎の膝元でだ。麻生太郎が育った麻生財閥の歴史をひもとけば、朝鮮からの日本への強制連行した朝鮮人労働者155万人のうち15万人を筑豊の炭鉱で強制労働させていた事実がある。 
 
 麻生太郎の曽祖父は筑豊石炭鉱業連合会の会長として朝鮮人強制労働の中心人物として大きな役割を果たしていた。強制的に働かされていた朝鮮人労働者は麻生鉱業には7,996人いたが、この内4,919人が逃走したといわれている。麻生鉱業が他の炭鉱よりも脱走者が多いのは待遇が劣悪だったからだ。1日2食12時間以上の過酷な労働に加えて、賃金は他の炭鉱での朝鮮人労働者の2分の1のうえ未払いが続いた。 
 
 1932年(昭和7年)、私が生まれたこの年、麻生炭鉱で働く朝鮮人労働者がストライキで抗議した。これに対して麻生鉱業は警察、特高、暴力団まで動員して弾圧したと伝えられている。 
 
 私はこのような歴史の中で今の麻生太郎が成長したことを見逃してはならないと思う。また麻生太郎は「麻生炭鉱で働いていた朝鮮人労働者のなかには喜んで創氏改名した人も多かった」と発言し、問題になり陳謝した記憶が私にある。麻生太郎の国民を見下したしゃべり方はこんなところから来ているのだろう。 
 
▽「記憶・責任・未来」 
 歴史の記憶を正確に継承し、その歴史的責任を果たしていくことで、平和で友好的な未来を展望することができる。そのような立場から、ドイツは過去の記憶と未来を責任で結び付ける、強制労働者への「記憶・責任・未来」という賠償基金を設立した。 
 日本もドイツと同様、占領と植民地支配の下で人間を奴隷化し、強制連行・強制労働をおこなった。それは史実であり、その歴史的責任を果たすために行動が求められている。しかし、日本国内では戦後60年を経過したにもかかわらず、過去を否認し、その責任や賠償を否定する動きが絶えない。 
 
 昨日(8月15日)東京で行われた戦没者慰霊祭が行われた。歴代の総理大臣は挨拶で「戦争によってとりわけアジアの人達に犠牲を」この言葉が安倍の言葉からは出なかった。これは朝鮮人慰安婦、強制労働問題を含めての先の戦争責任を回避するばかりかA 級戦犯に手を合わすが隣国をはじめ先の侵略戦争で犠牲になったお詫びの言葉もない。 
 
 近年外務大臣になった麻生太郎においても同様の発言がみられる。 
 麻生太郎は、2003年5月には東京大学の学園祭で「創氏改名は朝鮮人が望んだ」と述べている。当時は自民党の政調会長だった。朝鮮の植民地支配による皇民化がすすめられるなかで1940年に「創氏改名」が制度化されたが、渡日した朝鮮人はそれ以前から日本名を名乗って生活することを余儀なくされていた。麻生の炭鉱でも「東」、「木下」、「村上」、「福本」とされているものが多かった。植民地にするということは軍事力によって土地と人間を収奪し、さらにその精神も支配することである。そのなかで朝鮮人が日本人名を名乗ることが強制されたのであり、それは奴隷化政策の一環であった。麻生の発言は植民地支配とそのもとでの政策の誤りを認識する力が欠けていることを示している。 
 
 外務大臣になった麻生太郎は2006年8月に「靖国に弥栄あれ」を記し、靖国には国のために尊い命を投げ出したという日本人の集合的記憶があり、日本人を貫く棒のようなものがあるとし、靖国を特殊法人なかたちで国営化することと天皇の参拝を求めている。このような思考は国家主権のままの発想であり、戦争責任や政教分離の概念を理解したものではない。 
 
 麻生は2007年2月には、米議会での日本軍による性奴隷制に対する決議案に対して衆議院で「客観的な事実に基づいていない」と批判している。このような姿勢は戦争のもとでの日本による戦争犯罪について真摯に受け止め、被害者の救済をおこなっていこうとする視点がないことを示している。また、2007年9月の自民党総裁選で「自虐史観」批判の立場を公言した。 
 
 ここでみてきたように、麻生鉱業で働く朝鮮人は暴力的な労務管理のもとで条件の悪い「発破」作業に投入され、事故にあうことも多かった。さらに戦時には1万人を超える朝鮮人を連行し、暴力をもって強制労働をさせた。戦争が終わるとたくさんの遺骨が残されていた。しかし麻生は、戦時下の強制労働に対しても謝罪や賠償をおこなおうとはしない。連行された人々の尊厳は回復されないままであり、被害者にとって戦争は今も続いているということになる。 
 
 強制労働のもとでの麻生鉱山での朝鮮人の死亡者名簿を作成したところ160人を超える人々の死亡を確認できた。欠落しているものもまだ多いだろう。実際にはかなりの数字になるだろう。 
2005年年11月の日韓遺骨調査協議会で韓国側は麻生鉱業の強制連行についての資料を要求した。麻生はこの求めに誠実に対応し、朝鮮人関係史料を公開し、和解にむけての作業を積極的に始めるべきであろう。 
 
 戦争と植民地支配について、自らの(麻生鉱業)の責任をあきらかにすることは、麻生の信頼の回復となり、アジアの和解の動きにもつながるであろう。 
 
 まず第1に過去を反省しようとする歴史への対応を「自虐」と放言する麻生自身の無責任な姿勢の克服が求められる。史実の否定や歪曲が対立を生み、認知と賠償が和解と信頼の基礎となることを理解すべきである。 
(2013年8月16日・記) 


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