2019年08月07日14時22分掲載  無料記事
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農と食

産科医の国際組織 グリホサートの禁止を勧告

 産婦人科医の国際組織である国際産婦人科連合の発生環境衛生委員会は7月31日、この15年間に明らかになったエビデンスから、予防原則に則り、世界規模でのグリホサート禁止の勧告を発表した。この勧告は、これまでに積み上げられてきた知見を元にした専門家の提言であるだけに、軽々に無視することはできない。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 同委員会は声明で、「健康に対する化学物質曝露の影響を裏付ける証拠があります。化学物質は胎盤を通過する可能性があり、メチル水銀の場合と同様に、胎児に蓄積する可能性があり、長期的な後遺症を引き起こす可能性があります」と述べている。 
 
 声明はまた、「化学製品にさらされる前に、現在そして世代を超えて安全を確立することが私たちの優先事項」であり、「ある活動が人間の健康や環境に害を及ぼす恐れがあるときは、たとえ原因と結果の関係が科学的に完全に確立されていなくても予防措置を取るべきです」として、国際産婦人科連合は予防原則を行使するとしている。その上で、結論として「集団へのグリホサートの曝露は全世界的な段階的廃止で終わるべきであると勧告する」としている。 
 
 ・International Federation of Gynecology and Obstetrics, 2019-7-31 
  Removal of glyphosate from global usage 
  https://www.figo.org/statement-glyphosate-removal 
 
 2015年、一般に公開されアクセス可能な研究を元に、国際がん研究機関(IARC)はグリホサートについて「おそらく発がん性がある」と分類している。EUでは、現在の登録期限である22年でグリホサートは失効し、使用が禁止される可能性が強くなってきている。先月初め、オーストリア国民議会はグリホサートの全面禁止を可決している。 
 
 米国ではグリホサートが主成分のラウンドアップによってがんを発症したという訴えが立て続けに認められ、モンサントを買収したバイエルは高額の損害賠償を命じられている。バイエルの発表によれば、ラウンドアップ損害賠償訴訟は1万8千件を超えている。市民お声を背景とした環境NGOなどの粘り強い働きかけと、こうしたグリホサートへの強い風当たりに、コストコなどの小売大手はグリホサートの取扱いを中止している。 
 
 こうした欧米の動きと異なり、日本ではグリホサートへの規制強化の動きはほとんどみられない。農水省は昨年改正された農薬取締法により「全ての農薬について定期的に最新の科学的知見に基づき安全性等の再評価を行う仕組み」を導入し、グリホサートは優先度の高いAランクとしている。しかし、再評価が始まるのは21年度からであり、かつ優先度に応じて再評価を行うとしているだけで、具体的な実施時期については明らかにしていない。この再評価が使用禁止を含む規制強化につながる保証は全くない。 
 
 ・農水省 
  農薬の再評価 
  http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/saihyoka/ 
 
 今回の国際産婦人科連合の勧告を重視し、真の意味での予防原則の立場から、早急に使用禁止を含む規制を強化すべきだ。ことに、ホームセンターやドラッグストアで販売されている、非農耕用のグリホサート剤の販売と使用の禁止に踏み込むべきだ。 
 
 ・グリホサート関連記事 
  http://organic-newsclip.info/cat/index_pest_glyphosate.html 
 
【関連記事】 
 ・国際機関 グリホサートを発がん性物質2Aに位置づけ 
  http://organic-newsclip.info/log/2015/15030654-1.html 
 
 ・ドイツ農業相 EUのグリホサート登録は22年まで 
  http://organic-newsclip.info/log/2019/19070988-2.html 
 
 ・オーストリア国民議会 EU初のグリホサート全面禁止法案を可決 
  http://organic-newsclip.info/log/2019/19070988-1.html 
 
 ・米国ラウンドアップ裁判 3件目も原告勝訴 損害賠償は20億ドル 
  http://organic-newsclip.info/log/2019/19050979-1.html 
 
 ・厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示 
  http://organic-newsclip.info/log/2017/17120875-2.html 


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