2019年08月12日15時15分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201908121515581

検証・メディア

過去6年に没になったNHK番組企画案の収集分析を  政権交代で独立行政組織を設立し検証を

  この夏の参院選で野党共闘は放送局の管轄を総務省から独立行政組織に移行することを政策協定に盛り込みました。もし次期衆院選で政権交代がなされた場合は、ぜひともそれを実現していただきたいものです。 
 
 「国民の知る権利を確保するという観点から、報道の自由を徹底するため、放送事業者の監督を総務省から切り離し、独立行政委員会で行う新たな放送法制を構築すること」(第13項) 
 
  放送を管轄する独立行政組織が発足した際、まず過去6年間のNHKの検証作業が必要になります。というのもNHKは最も政権が直接的に経営委員会人事を梃に介入し、番組が影響を受けたと考えられるからです。「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」と言った籾井勝人氏のNHK会長就任は典型ですが、それは発端でしかありません。NHKの報道は選挙に多大な影響を与えています。 
 
  独立行政組織が発足した場合に、やるべき作業の1つに、この間、NHKに提案された番組企画案で没になったものを収集して、どのようなものが寄せられ、世に出なかったのか。その理由は何だったのかを探る作業を検討することです。もちろん、つまらない企画も少なくないでしょう。しかし、優れた企画になるアイデアだったものもあるのではないでしょうか。企画が通って番組化されたものとの比較が必要です。その評価に同業者の眼差しだけでなく、市民の眼差しを入れることが大切です。 
 
  NHKを含め、放送業界は年間に作られた番組を表彰する機会を持っていますが、忖度で番組にならなかった企画も少なくないと思われます。そうした放送業界での表彰式は、番組にならなかった企画を見えないものにするための儀式でもあります。 
 
  NHKでは2〜3年前に「もう知識人のインタビューは番組で使わない」「もう構造を描く番組はいらない」「面白いシーンだけあればいい」「ナレーションはいらない」「日本で同様のことが起きているなら外国で取材する必要はない。外国取材の場合は日本ではありえないよほど珍しいことだけ取材してよい」などの言葉が応募者に伝えられました。それは番組募集の大きな変化でした。 
 
  放送局はその時々の政治状況を見ながら、募集する企画や番組のルールを変えています。その時期に支配的な勢力に抵抗するような企画はルールから外れることが多く、そうした場合、応募する側はルールに外れる事象を取材しても無駄になりますから、だんだんそのことを考えなくなっていくのです。これは最も有効なジャーナリストに対するマインドコントロールの方法です。与えられたルールがおかしいのではないか、と疑ってみる人はあまりいません。島国の日本では、こうした枠をはめられると、枠の妥当性を考えるのではなく、すぐに自分を責めるモードにスイッチがはいってしまうのです。与えられたルールの中でベストを尽くす、という競争をゲームのようにこなしていく、というモードになるのです。このようにして支配的なルールに当てはまらないものには目を向けない、ということが無意識のうちにまで内面化されていきます。 
 
  独立行政組織はそれらの番組のルールが妥当なものかどうかから、見ていく必要があると思います。個々の番組案だけでなく、廃止になった番組の是非も検討する必要があります。その際の基準は与党とか野党、あるいは右とか左、ということではなく、ジャーナリズムの見地からどうか、ということが大切です。関係者を参考人として呼び、これを徹底してやることが大切です。政治的な圧力をかけるためではなく、政治的な圧力から制作者を解放するために真実の究明が必要なのです。 
 
 
南田望洋 
 
 
 NHKの報道番組に対する疑問はインターネットで噴出しています。以下はそれらの中でも根拠の確かなものです。以下の指摘を見れば、もはやNHKに自浄作用を期待するのは不可能になっていると思われます。だからこそ独立行政組織による検証が必要です。 
 
※労基法改正をめぐるNHKの論点隠しで隠されているもの 
https://news.yahoo.co.jp/byline/uenishimitsuko/20150406-00044580/ 
※小川淳也議員による根本大臣不信任決議案趣旨弁明を悪意ある切り取り編集で貶めたNHK 
https://hbol.jp/187300 
 
  これらは氷山の一角に過ぎません。それは以下の記事を読めば明らかです。 
 
●NHKの受信料を拒否する十分な理由が、我ら市民にはある Bark at Illusions 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201908102129196 
 
  こうした事態が次々と起きているNHK局内はどういう環境なのか。NHKは戦後優れた番組を作ってきたのではなかったのか。そうした疑問に対して、1つの問いかけが以下の記事です。 
 
■NHK局員が安倍政権支配とうまくやれるワケ 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201908110801150 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。