2019年08月30日07時48分掲載  無料記事
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社会

日消連など市民団体が東京都に対し学校での香害対策を要望

 夏休みが終わり、二学期が始まります。いま、隠された問題が学校現場で怒っています。洗剤などの含まれる香料の香りで心身を侵され、学校にいけない子供たちが増えている問題です。市民団体、日本消費者連盟にはそうした訴えがたくさん寄せられています。香害といわれているもので、大人だけでなく子どもを蝕んでいるのです。消費者連盟はじめ香害に取り組む市民団体はこれまで文科省に対策を要望してきていますが、この夏、東京都に対し学校での香害対策について要望書を出しました。日消連は日本の中心で人口が集中する東京において、行政が香害をなくすために動き出すことを期待していると述べています。(大野和興) 
 
 
【要望書】「学校等における香料製品の使用自粛を求める要望書」(2019年7月23日) 
 
東京都知事 小池 百合子 様 
東京都教育長 藤田 裕司 様 
東京都生活文化局長 浜 佳葉子 様 
 
特定非営利活動法人 日本消費者連盟 
特定非営利活動法人 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議 
特定非営利活動法人 有害化学物質削減ネットワーク 
認定非営利活動法人 化学物質過敏症支援センター 
香料自粛を求める会 
日本消費者連盟関西グループ 
反農薬東京グループ 
 
日頃より、東京都における教育行政等にご尽力いただき感謝申し上げます。 私共は、化学物質により健康被害を受けている者、その家族による団体、及び支援団体です。 近年、香料・抗菌成分入りの柔軟仕上げ剤・合成洗剤、消臭除菌スプレー、制汗剤、芳香剤などの家庭用 品(以下「香料製品」と称す)によって、頭痛、めまい、吐き気、咳き込み、皮膚のかゆみ、眼・鼻・喉の ヒリヒリ感、全身倦怠感、集中力低下などの健康被害(いわゆる「香害」)が引き起こされています。 
 
2017 年7 月、8 月の2 回、日本消費者連盟が「香害110 番」を開設したところ、213 件の電話、メール、 FAXが寄せられました。 これらの香料製品には、有害性のある香料、抗菌剤に加えて、効果持続のために、化学樹脂(プラスチッ ク)製のマイクロカプセルが含まれているものが多く、このマイクロカプセルが壊れるたびに、マイクロプ ラスチック破片が PM2.5 サイズともなり、空気中に飛散すると共に、化学樹脂由来の揮発性有機化合物 (VOC)も放散され、健康被害を拡大させるに至っていると考えられています。 
香料製品による健康被害で、通勤・通学に支障をきたす方々も多く、被害が高じると、アレルギー、喘息、 化学物質過敏症を発症・重症化する事例も見られます。 
 
広がりを見せる「香害」ですが、一番懸念されるのは、成長期にあり、大人より化学物質の影響が大きい とされる子どもたちの健康です。教室という狭い空間に、大人数の児童生徒が、長時間過ごします。家庭で 使用した香料製品が、子どもたちの衣服に付着して学校に持ち込まれ、教室内の空気が、香料・:抗菌成分、 揮発性有機化合物、マイクロプラスチックなどで汚染されているのではないかと危機感を覚えます。 
 
既に、学校で化学物質過敏症を発症した児童の例も聞き及んでおり、この児童は教室での通常授業を受けることが困難になりました。この問題は就学前教育における幼稚園、保育園、認定子ども園の園児について も起こりえることです。 
誰しもが等しく教育を受けられるはずの学校等で、香料製品の化学物質に曝露して健康を害され、望んだ 教育が受けられなくなってしまう、この現状を国に先駆けて、地方から改善する時期に来ていると思います。 
 
つきましては、<化学物質の子供ガイドライン「室内空気編」>(東京都福祉保健局)の「化学物質は、 程度の多少はあってもヒトに何らかの良くない影響を与えるとの前提に立って、できるだけ化学物質の少な い室内環境を目指すことが望ましいと考えられています。」との見地から、子どもたちがより安全な室内環境 で過ごせるように、以下の要望を致します。 ご多忙中恐縮ですが、8月末日までにご回答を下記事務局までいただければ幸いです。 何卒よろしくお願い申し上げます。 
 
記 
 
以上 
[ 教育庁関連 ] 
東京都のシックスクール対策は、「都立学校における室内化学物質対策の手引」に基づいて行われてきて いますが、これは、建材・備品から発生する VOC 対策が主眼であり、製品別の対策が必要なものとして 挙げられている物は、床ワックス、害虫駆除剤、インク等にとどまっています。家庭から持ち込まれる香 料製品由来の化学物質による、新たな室内空気汚染に対応するため、「手引」内の「製品別の対策」の項に、 香料製品の問題点や健康影響について追記し、香料製品由来の化学物質の学校への持ち込みを防ぐ対策を 講じるよう明記してください。 そして、東京都の各区市町村立小中学校における「室内化学物質対策マニュアル」にも、同様の記載措 置をとるように、各区市町村教育委員会に呼び掛けてください。 
 
上記が実現するまでの応急措置として以下の項目をすみやかに実行してください。 
 
(1) 東京都内の公立(除く国立)学校において、香料その他の化学物質により、学校に行けない児童生徒 数を把握するための実態調査を早急に行ってください。 実際に実態調査を行なっている自治体もあります。栃木県宇都宮市など。 平成25年度宇都宮市シックスクール問題対策マニュアル(改訂版)P21に健康管理カード掲載。 
(2) 児童・生徒の化学物質過敏症の発症傾向を把握するための経年調査に着手してください。 消費者リポートNO.1613 「子どもの香害」P1,囲み記事参照。 
(3) 児童生徒が教室内にいる状態での室内の総揮発性有機化合物(TVOC)濃度を測定し、その値が室 内空気質の暫定目標値400μg/ 立方メートルを超えていないか確認してください。同様の状態で のホルムアルデヒド値も測定してください。 教室が高濃度のVOCで汚染されていると、子供の学力低下を引き起こす恐れがあるため。 
(4) 学校等で働く教職員、児童生徒及び保護者等に、香料製品の使用を自粛するように呼びかけてくださ い。特に、給食白衣への香りつき合成洗剤や柔軟仕上げ剤の使用自粛を徹底させてください。また、 更衣室等での制汗剤の使用の自粛も呼びかけてください。 香料製品のために、現実に通学できない児童の存在を顧慮し、ホームページでも積極的に注意喚起を 行ってください。 長野県安曇野市、宮城県多賀城市などでも教育委員会が保護者に対して香料自粛の呼びかけを行っています。 
(5) 教職員、特に、学校長、養護教諭に対して、研修会等の機会を通じて、香料製品による健康被害につ いての情報を周知徹底してください。 
(6)学校に香害や化学物質過敏症などで配慮が必要な児童生徒が在籍している場合は、当該児童生徒への 配慮だけを強調するのではなく、いじめなどの二次的被害が生じないように注意を喚起してください。 
(7)「香料自粛のお願い」のポスターを作成し、学校の校舎内、保健室、玄関、行事案内等に掲示して関係 者に啓発してください。 現在、40以上の自治体、病院、市民団体などがポスターを作成しています。 
(8)室内に香料その他の化学物質が充満しないよう、普段から空気質に配慮し、日々の換気を徹底してく ださい。また、児童生徒等にも、換気をしない場合の室内空気汚染のリスクや換気の必要性等の情報 を伝えて、季節を問わず換気の励行を呼びかけてください。 
 
[ 生活文化局関連 ] 
近年、家庭で使用される香りつき合成洗剤や柔軟仕上げ剤には、より強く、より長く香りが続くように、 マイクロカプセルが含まれていることがあります。そして、それらの成分である化学物質によって体調不良 を訴える人が増えてきています。また、症状が進み、化学物質過敏症を発症してしまう人も増加しており、 化学物質過敏症支援センターには、年間2000 件以上の相談が寄せられています。 
2015 年に報告された大規 模な疫学調査では、人口の 7.5%が化学物質過敏症対象者であるという記載があり、東京都の人口に換算す ると、100 万人に、香料等の化学物質によって何らかの症状が出ている可能性があります。(なお、この柔軟 仕上げ剤等に使用されているマイクロカプセルは、G20 サミットにてゼロ目標で合意した、環境汚染マイク ロプラスチック問題でもあり、EU では既に規制の動きが出ています。) そこで、更なる健康被害の拡大を防ぐために、子どもだけではなく、広く東京都民や東京都を訪れる人に、 香料製品の使用自粛を呼びかけてください。 
 
(1)「香料自粛のお願い」のポスターを作成し、都内の公共施設等に掲示してください。掲示は、一定期間 を過ぎると剥がしてしまうイベント的な性質のものではなく、継続的に掲示をしてください。 
(2)「香料自粛のお願い」のポスターは、一回り小さいサイズのものも合わせて作成いただき、都内公共施 設のトイレや更衣室など狭い空間にも、継続的に掲示をしてください。 (3)「香料自粛のお願い」のポスターのPDF データを東京都のホームページにも掲載し、自由にダウンロ ードして都民が使用できるようにしてください。 
 
問い合わせ先:日本消費者連盟 


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