2019年09月07日20時52分掲載  無料記事
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コラム

NHKは関連会社を清算せよ〜NHKエンタープライズ、Gメディア、NHKエデュケーショナルは清算し、NHKに再統合すべし〜

  NHKは外郭団体を複数傘下に抱えている。NHKエンタープライズ、Gメディア、NHKエデュケーショナルといった団体である。たとえばNHKエンタープライズは「NHKの番組をはじめとする映像コンテンツの制作、イベントの企画・制作、番組やキャラクターのライセンス許諾、DVD・ブルーレイなどの商品販売など、コンテンツの制作から展開、販売までを行っています。コンテンツに関する皆様の様々なご要望にお応えいたします。」とホームページに掲げている。だが、その柱というか存在理由はNHKの番組制作の外注の際に外部プロダクションにNHKのプロデューサーの指示と「NHK文化」を注入する機関である。そのベクトルは上から下に、であり、下から上ではない。 
 
  NHKエンタープライズにはプロパー社員もいるが、かなりの社員がNHKからの出向組である。出向も2〜3年で終わってNHK本体に戻る人もいれば何十年と出向させられている社員もいる。これらの人たちは一種の植民地にいるのだ。そして、植民地経営を通して、そこの人間たちに、さらにその下にぶら下がっている多数の制作プロダクションにアシカに曲芸を仕込むように仕事のやり方を教え込むのである。こうした差別構造が根底にある。時には曲芸を教える対象の下請け会社には是枝裕和のような監督もいるのだ。放送局は派遣社員を多数使っているがゆえに、派遣問題に根本的に切り込む番組は作ることができない。同様に現代の格差社会に切り込むことができないのは、その刃は必ずや自らに向けられることになるからだ。読者の方は想像いただけるだろうが、NHKは社会問題に本来切り込むべき報道機関でありながら、核心はカースト的な差別で歪んだ世界なのである。 
 
  だからこそ、NHKの外郭団体は全部清算して、すべてNHKに戻すべきなのだ。NHK社員はそもそも高給取りであり、外郭団体を再吸収したところで庶民の労働者よりも何倍もの年収を得ることが依然できる。NHKに必要なことは士農工商的な縦の序列化を一切やめて、できるかぎり組織をフラット化し、ディレクターとプロデューサーのヒエラルキー自体を解消することである。NHKにはもはやほとんどサムライはいない。このヒエラルキーの基盤となっているものはNHKの放送の質だが、今日それをそのまま受け入れる視聴者はもはやいまい。ジャーナリズムとして歪んでしまっているし、倫理も低下している。勇気も乏しい。番組も品性下劣なものが増えている。NHKにかつてのブランド力はもはやない。むしろ、図体だけはでかい二流、三流のダメ放送局だ。こうした組織は変革しなくてはならないのだ。組織が硬直し、政治権力に近づけば近づくほどNHKは腐臭を放つ。坂本龍馬がいたら、幕藩体制的なNHKを真っ先に改革したことは間違いない。 
 
  まずは「NHK文化」という幻想を捨てることである。そしてテレビの草創期と同様に、もう一度テレビとは何なのか、ゼロから考え直す時期に来ている。そのためには組織をフラットに作り変え、奴隷制度と変わらない従来の異様な差別構造を解消し、クリエイティブで勇気の持てる職場を創造しなくてはならない。どんな洗練された番組制作力があっても権力に媚びへつらう番組を作っているようでは偽物の文化である。自分より下と見ると途端に横柄な態度に出る人間たちの文化はDV(ダメスティックバイオレンス)の文化である。そんなものは継承する意義はない。 
 
  外郭団体がなくなれば、外注の番組制作においても何段にもわたる無意味なヒエラルキー構造を解消でき、人件費がまず減らせる。外郭団体に費やす人件費があればNHKで別の番組が作れるのだ。別の番組が作れると言うことは一定の予算で1つの番組にもっと時間をかけられることになる。さらにこれの良い点はNHKの内部における<本邦―植民地>の格差構造をつぶすことにある。NHK内部における差別構造を職員が受け入れることが、外部プロダクションへの差別容認とまっすぐつながっているのだ。差別が差別を増殖していくわけである。これは身分制社会だった江戸時代と何ら本質は変わらない。 
 
  こうした階層構造はテクノロジーによって変化が加速している現代を報じるには機能不全だ。フラット化して権限を分散し、自発性と個性を尊重する組織に転じない限り、周辺国にチャンスを奪われ続け、日本の没落はさらに深まっていく。外部プロダクションの企画の番組化が決まるまで少なくとも3段階の垂直のセレクションがNHKと関連団体にはあり、上にあげるためには現地に行って実際に取材しなくてはわからないような子細なことまで企画書に書き込んで完璧なペーパーを仕上げなくてはならないのだが、そのもたもたしている2〜3か月の間に現地で事態は進行して取材には完全に手遅れになるケースは日常茶飯事だ。こうした書類漬けでスタッフのモチベーションも下がる一方である。報道機関であるNHKの劣化は日本の劣化と結びついている。NHK内部同士であれば3行のメモでも実際には取材に飛べるのである。かつてNHKが輝いていた時代は3行書くだけで番組で何を狙うか互いに理解しあえる知識と職業意識の高さがあった。権限を分散して組織をフラット化する、ということはこういうことである。原発大好きで時代遅れの重厚長大産業系出身のNHK経営委員長は適任なのか? 
 
  NHKを変えるには荒業だが、もう1つの手法もある。現在のプロダクションのスタッフをNHK本体に入れて、NHKの人間を外に出してプロダクションに入れ替える。こういう「与野党交代」を10年間隔で定期的に繰り返す手もある。江戸時代の藩士の人質みたいな派遣業務は廃止だ。NHK内部で改革が無理なら(無理だろうが)こういう試みもやってもいいだろう。腐った放送局員は上から下まで総入れ替え。傲慢で臆病な放送局員は外のリアル世界で鍛えられるべきだ。これ以上国民の金で甘やかせるべきではない。これは山本太郎政権ができた時にできるかもしれない。NHKの全社員および外郭団体の全社員は差別という問題と向き合う時期に来ている。そうしなければ、次は間違いなくNHK自身の問題となって返ってくるだろう。世間はNHKに対して怒りが水面下で沸騰しているのだ。 
 
 
南田望洋 


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