2019年12月18日10時30分掲載  無料記事
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難民

入管庁による長期収容の果てに〜国際的人権の視点から〜

 2019年6月に長崎県の大村入国管理センターに収容されていたナイジェリア人男性が死亡してから半年ほどが経過する。このナイジェリア人男性は、出入国在留管理庁(入管庁)による先の見えない長期収容からの解放を求め、ハンガー・ストライキ(ハンスト)を継続した末に餓死するに至った。現在も全国各地の入管収容施設内では、ハンストを行う者が後を絶たず、今後も同様の事案が発生する可能性がある。 
 入管庁は、このような命懸けの抗議に対して「ハンストを止めたら仮放免で解放する」と、ハンストを止めるように促す一方で、ハンストを止めて仮放免となった者を2週間ほどで再度収容するなど、「ハンストをしても無駄だ」と言わんばかりの「見せしめ」とも捉えかねない対応を取っている。 
 
 「クルドを知る会」などの支援団体の呼びかけにより12月15日に開催された集会では、このような入管行政を取り巻く現状について、「国際的人権」という視点から各登壇者が講演を行った。その際、国連を通じて人権問題に関する働き掛けを行っている藤田早苗さんは「人権はすべての人間が生まれながらに持っているもので、政府は人権を尊重する義務がある」と述べ、個人通報制度(国内での終審判決に不服がある場合に国連に申し立てすることができる制度)を通じた国際的な視点からの人権擁護の必要性について訴えかけた。また、在日クルド人の弁護活動を行っている大橋毅弁護士は「日本政府は国際人権法について『法的拘束力はない』とするが、一国の政府がこのような見解を示すのは一種のモラルハザードである」とし、日本政府の対応に関して人道上の問題点を指摘した。 
 
 東京オリンピック・パラリンピックを控え、日本の「国としての見識」が問われる中で、国際的にも異例な無期限の長期収容を続けることは、日本の国際的な地位を下げかねない。講演会に登壇したクルド人男性は、「『収容所に入るために日本に来たのではないか』と思うほどだ」と、長期収容が常態化している現状について苦しい心境を語った。また別のクルド人女性は「私はトルコで差別を受け、日本でも色々な差別を受けている。どこで生活したら良いのかわからない」と居場所のない不安な日々を語った。難民としての地位が認められない状況下で、いつ収容されるかもわからずに過ごす日々は、肉体的にも精神的にも大きな負担となるはずである。 
 
 法務省は本年10月に法務大臣の私的諮問機関として長期収容の防止等を目的とした収容・送還に関する専門部会を設立し、来年3月までに最終的な報告を行うこととしている。大橋弁護士は「専門部会は、難民認定申請中であっても強制送還ができるようにさせるためのものではないか」と述べており、専門部会の最終報告が在留外国人の更なる不利益を招くものであれば、国際世論からの反発は必須である。 
 支援団体関係者は「今後はより支援団体同士で連携し、情報の集約や日本語資料の英訳を進めていく」としており、入管行政を取り巻く現状がよりわかりすく海外へ発信されることで、日本に対する国際世論が更に喚起されることも考えられる。その際に、現状のような人権を疎かにした長期収容が続いているようであれば、日本は国際社会で一層孤立していくことになるであろう。政府による一刻も早い対応が求められている。 
 
入管問題に関する情報集約サイト 
「RDTO.org」:https://www.rdto.org/?m=1 


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