2019年12月20日21時30分掲載  無料記事
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遺伝子組み換え/ゲノム編集

フィリピン農務省、遺伝子組み換え稲ゴールデンライスを承認 農民団体、非難の声明

 国際稲研究所(IRRI)は12月18日、遺伝子組み換えゴールデンライス(GR2E)について、フィリピン農務省植物産業局が「従来のコメと同じように安全である」として食品、飼料、加工用に承認したと発表した。一般的な栽培には商業栽培の承認が必要だとしている。国際稲研究所はこれまでに、幾度となく商業栽培が近く始まるとアナウンスしてきたが、まだ始まっていない。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 フィリピンの農民団体マシパグ(MASIPAG)は12月19日、この遺伝子組み換えゴールデンライスの承認は、国際稲研究所(IRRI)、フィリピン稲研究所(Philrice)、農務省植物産業局(DA-BPI)による共謀だと非難する声明を発表した。マシパグは、この承認が人びとの健康と環境を脅かすだけでなく、コメ生産の未来と農民の種子管理をも脅かすと指摘している。フィリピンやその他の国の農業者や消費者は、ゴールデン・ライスは発展途上国の脆弱な部門のビタミンA欠乏症に対処するものではなく、実際には企業の農業に対する支配力を高める手段であるとしている。マシパグによれば、承認は12月10日付だという。 
 
 ・IRRI, 2019-12-18 
  Philippines approves Golden Rice for direct use as food and feed, or for processing 
  https://www.irri.org/news-and-events/news/philippines-approves-golden-rice-direct-use-food-and-feed-or-processing 
 
 ・MASIPAG, 2019-12-19 
  Farmer-scientist group condemns Golden Rice approval 
  http://masipag.org/2019/12/farmer-scientist-group-condemns-golden-rice-approval/ 
 
 遺伝子組み換えゴールデンライス(GR2E)は、元々イネには含まれていないベータカロテンを遺伝子組み換えによって作り出すようにしたもので、途上国に多いビタミンA欠乏症への効果的な対抗策という触れ込みで登場してきた。フィリピンのマシパグなどの農民団体や消費者団体は、多様で安全なビタミンAを含む食料を容易に入手できるようにすることが解決策だと批判している。 
 
 遺伝子組み換えゴールデンライス(GR2E)はこれまでに、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、米国で食品として承認されている。2018年3月、カナダ保健省は承認に当たり、GR2Eはカナダでの販売を目的としていない上に、カナダ人の米の摂取量からしてβカロテンの摂取増加量はほとんどないと評価し、この遺伝子組み換えゴールデンライスがビタミンA欠乏症に有効であるかは評価していないと発表している。これら先進国での承認は、食品としての「安全」に、先進国の「お墨付き」を与えるだけにすぎない。 
 
 今年11月にバングラデシュが承認すると報じられてきたが、承認寸前でストップしているという。 
 
 VOA(電子版)によれば、国際稲研究所は来年初めに商業栽培に向けて申請書を提出するという。 
 
 ・VOA, 2019-12-19 
  Philippines Approves GMO Rice to Fight Malnutrition 
  https://www.voanews.com/science-health/philippines-approves-gmo-rice-fight-malnutrition 
 
【関連記事】 
 ・豪・NZ GMゴールデンライスを承認 商業化にはさらに10年? 
  http://www.organic-newsclip.info/log/2018/18010884-1.html 
 
 ・カナダ 販売予定のないGMゴールデンライスを承認 拡がる反対 
  http://organic-newsclip.info/log/2018/18030906-1.html 


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