2019年12月29日21時49分掲載  無料記事
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欧州

イタリア男性の考察とイタリア女性の立場〜チャオ!イタリア通信(10)

 日本でイタリア男性というと、今でもジローラモ氏が有名なのでしょうか。NHKのイタリア語講座に出演している時に、私も見ていました。おしゃれでおしゃべり上手で、女性の扱いも手慣れているようなイタリア男性のイメージを作り上げています。 
 イタリアに住んで12年、特にフィレンツェを生活圏にしていると、こうしたイタリア男性のイメージは早くも崩れます。フィレンツェは職人の街と言われているので、おしゃれにスーツを着て街を闊歩している人はいません。 
 
 そして、イタリアには「マンモーネ」という言葉があります。お母さんに甘えていて、お母さんがいないと何もできない、お母さんの言う通りになっている男の人という意味で、よく男の人をからかう時に使ったりします。実際、イタリアのマンマ(お母さん)は強いという定説があり、子ども夫婦のことにも口出しをする人もいるようです。幸い、私の義理の母はいつも距離を置いてくれているので、助かります。 
 私の知り合いの日本人女性は旦那さんがイタリア人ですが、結婚して20年近く、旦那さんの洗濯物を近くに住むお母さんが洗っているそうです。お嫁さんの立場としては、どうなんでしょうか。家事の手間がひとつ省けると、良い方に考えるしかないですね。 
 
 そして、こんな甘えん坊なイタリア男性ですが、未練がましく嫉妬深く、よく言えば情熱的というか、自分が恋人や奥さんに捨てられるのは耐えられないようです。ここからは真面目な話ですが、毎年のように夫や元恋人による、妻や元彼女の殺人事件が跡を絶たず、「フェミニチーディオ」(フェミナ=女性、オミチーディオ=殺人を合わせた言葉)なる言葉もできています。ある女性誌では、今年8月の女性に対する暴力を防ぐための新しい法律の成立に合わせて特集が組まれ、2日に一人の頻度で女性が殺害されていると書かれてありました。 
 
 新しい法律では、まず被害者が警察に訴えた場合、警察はすぐに検察に知らせて、検察は訴えから3日以内に被害者から話を聞かなければならなくなりました。また、従来よりも重い罪に問われることやストーキング、強制結婚、リベンジポルノについても、新たに法律が取り決められました。 
 新しい法律が施行され、ミラノでは一日平均40件、ローマでは20件、ナポリでは30件の告訴が相次いでいます。そこで問題になっているのが、すべての案件を緊急なものとして取り扱うことが困難なため、どれを最も緊急なものとし、その次に緊急なものはどれか、といった告訴の取り扱いです。また、新しい法律を実行するための資金が不足しているという問題もあります。先ほどの女性誌では、この問題に詳しい検事のインタビューが掲載されていますが、彼の主張では、告訴のレベルを病院の救急患者のように最も緊急な場合は赤、その次に緊急な場合は緑、最後に白というレベル分け(私が救急で病院に運ばれた時、確かに腕に緊急レベルを示す色分けの輪っかを付けられました。)をすべきだとしています。ただ、いずれの告訴も数日間のうちに警察の捜査を受けるべきということですが。レベル白の案件でも、いつ暴力がひどくなるかは誰にも予想がつかないからです。 
 さらに問題なのは、暴力を振るう夫や恋人は訴えがあっても即逮捕とはいかないことです。暴力を振るわれている最中に、警察が介入できるなら逮捕できるでしょうが、たいていは暴力を振るわれた女性がケガをして病院に行くなどして訴えが行われます。結局、被害者は夫や恋人のいるところに帰っていくというのが現状です。そこで、暴力を振るう夫や恋人の腕や足に電子機器をつけて犯罪を防ぐという案があるそうです。ただ、それも資金不足で実現は今のところ不可能だそうです。 
 
 イタリアのマンマは強いと言われますが、女性の社会的な地位はまだまだ低いというのが現実です。男性が家のことができなく、女性がすべて家のことを取り仕切っているため、家の中では強いのかもしれませんが、結局女性は男性に従い家事に従事する者という、昔ながらの女性像が今だに男性の中にはびこっているのが問題です。時代の流れについていけないイタリア男性が、今だに幅を利かせているということでしょうか。自分の息子には、そうなってもらいたくないと願いつつ、子育てをしています。 


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