2020年01月16日11時18分掲載  無料記事
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政治

「社民党は立憲民主党への合流見送りを」 大学教員3人が石川県連に要望書

 立憲民主党と国民民主党の合流協議とともに、社会民主党の去就が注目されるなか、同党を支持する大学教員3人が14日、立憲民主党への合流見送りを求める要望書を地元石川県連に提出した。理由として、恒久平和と人権の確立をめざす社民党の理念は立憲民主党と相容れないものであり、合流は党員と支持者への背信行為だとしている。以下が要望書全文。 
 
社民党石川県連合代表  盛本 芳久様 
 
   社民党に立憲民主党への合流見送りを求める 
 
 昨年末立憲民主党は、国民民主党、社民党などに合流の呼びかけを行い、社民党内では現在その可否についての討議が行われている。暴走安倍政権打倒のための野党共闘は大いに行われるべきだが、理念の異なる他党への合流(事実上の吸収)は自らの理念の放棄を意味するもので、単なる共闘の延長とみなすことはできない。 
 
 そもそも昨年1月、枝野幸男代表、蓮舫副代表、福山哲郎幹事長といった立憲民主党幹部が伊勢神宮を参拝して党の公式ツイッターでもその様子を広報し、物議をかもした。今年初めにも、同代表は伊勢神宮を参拝したことが報じられている。伊勢神宮が日本による侵略戦争の精神的支柱となった国家神道の頂点に君臨する神社であることは、国際的に認知されている。従って立憲民主党は、国家主義的歴史観の呪縛下にある政党と言わねばなるまい。この点のみからしても、立憲民主党が社民党の理念と相容れない政党であることは明らかである。 
 
 社民党内には、党勢の低迷から合流やむなしの声もあると聞く。しかし、昨年の参議院選で社民党がかろうじて政党要件の得票率2%を獲得し得た事実を重く受け止めるべきである。この結果は、全国津々浦々の社民党党員と、社民党が掲げる非武装平和と社会民主主義を支持する人々の地を這うような努力の賜物なのである。社民党に票を投じた有権者、支援した市民は、立憲民主党や国民民主党、共産党或いはれいわ新選組等他の野党ではなく社民党の理念を選んだことをゆめ忘れてはならない。立憲民主党への合流は、そのような支持や希望への裏切りとなろう。 
 
 思い返せば、かつて野党第1党であった日本社会党が政党要件確保にあえぐ弱小野党へ転落した最大の契機は、1994年に発足した自民党・新党さきがけとの連立政権時に訪れた。同年7月、第130回国会において村山富市首相が、それまで違憲としていた自衛隊を「憲法の認めるもの」と明言し、かつ、「日米安保体制を堅持する」として、党是たる非武装中立につき「役割を終えた」と評した。この歴史的変節こそが、逼塞する社民党の現在の状況をもたらし、ひいては強欲資本主義の跋扈を許すこととなった道程を真摯に省みるべきである。今般立憲民主党との合流を決定することは、社民党党員及び支持者に対する背信の繰り返しに他ならない。 
 
 紛争や貧困、差別、環境破壊といった様々な問題が世界的規模で進行している。国家を超え立場を超えて市民が協力し、社会を形成しなければならないとする社会民主主義の有用性は、アメリカの「民主社会主義者党」の台頭などからも明らかである。一方、折しもトランプ大統領の指示によりイランのソレイマニ司令官が殺害され、第3次世界大戦の危険が現実化する折、河野太郎防衛大臣は自衛隊に中東への派遣を命じた。今こそ日本国憲法の根本原理たる武力によらない平和を強く訴えるときである。 
 
 我々3人は社民党党員ではないが、非武装平和と社会民主主義を実現すべく闘いを共にしてきた支持者である。また、いずれも教員であり、教育によって「人の心の中に平和の砦を築」く(ユネスコ憲章)のが仕事である。しかし、かつて我々の先輩達は、教え子を「縊ったその綱の端」を持っていた(竹本源治「戦死せる教え兒よ」)。「教え子を再び戦場に送らない」誓いに二度と背いてはならないとの思いを強くし、この要望書を提出する次第である。 
 
 我々は今後も、恒久平和と人権を確立する活動を社民党の仲間と共に続けていきたいと切に願っている。社民党には、立憲民主党との合流見送りを強く求める。 
 
 2020年1月14日 
 
 金沢大学教員 平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会代表 石川多加子 
 元北海道大学・金沢大学教員 いしかわ教育総合研究所共同代表 半沢英一 
 元北陸大学教員 元いしかわ教育総合研究所代表 田村光彰 


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