2020年01月23日01時13分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202001230113524

人権/反差別/司法

ガラパゴス化する日本の司法制度〜国際人権基準に則った制度改革を求めて

昨年末、日産自動車の元会長であるカルロス・ゴーン氏が関西空港からレバノンに出国した事件は、まるで映画のような「音響機材ケースに入っての検査すり抜け」や「元米軍特殊部隊経験者の関与」などもあり、多分にワイドショー的な関心を集めた。ゴーン氏の「国外逃亡」の是非については意見が分かれるところだろうが、そもそも同氏が主張してきた日本の司法制度の問題点、いわゆる「人質司法」などについては、国際的な基準から見て多くの課題をはらんでいると言えるのではないだろうか。国際基準から見た日本の司法制度の問題点、特に「理不尽な長期勾留・拘禁問題」をテーマとする学習会が1月17日、東京都内で開催された。 
 
「『国連・人権勧告の実現を!』実行委員会」が主催した今回の学習会では、刑事司法分野における問題を中心に、海渡雄一弁護士が解説。現在の刑事司法のあり方は「国際人権基準を満たすことができておらず、改革が急務」と訴える。未決事件での長期拘禁、弁護士の立ち合いが認められない中での長期間かつ長時間にわたる取り調べ、代用監獄の問題など、日本においては「当たり前」と受け止められている制度の中には、海外からは異様と捉えられ、人権侵害に該当すると判断されるようなものも多い。このような日本の状況に対しては、国連の自由権規約委員会からも勧告が出されており、一部で改善・是正された面があるとは言え、まだまだ刑事司法制度全体の改革には至っていないのが現状である。 
また、先進国で死刑制度の廃止が進む中、一昨年7月のオウム事件関係者13人に対する死刑の一斉執行をはじめ、第二次安倍政権の下で39人に対する死刑が執行されている。海渡弁護士は日本の現状について、「昭和23年3月の最高裁判決以降、死刑制度に関しては思考停止状態」と指摘し、死刑制度の廃止に向けて代替刑のあり方も含めた議論が必要と訴える。 
今年は「京都コングレス」(第14回国連犯罪防止刑事司法会議、4月20〜27日)の開催や、10月に予定される国連の自由権規約委員会による7回目の日本審査もあり、日本の司法制度に対する国際的な注目・関心が高まることが予想され、学習会の中で海渡弁護士は「刑事司法・刑事拘禁制度の抜本的改革に向けた国内外からの機運盛り上げ」の必要性を強調した。 
 
国内外での動きに合わせ、1月20日には刑事拘禁・精神医療分野・入管収容にかかる人権侵害問題に取り組む市民・団体により、国連の恣意的拘禁作業部会(The UN Working Group on the Arbitrary Detention)による国別訪問手続(カントリー・ビジット)の実現を求める政府への要請行動と共同声明の発表が行われた(https://migrants.jp/news/voice/20200120_3.html、「移住者と連帯するネットワーク」ホームページより)。声明では、日本における恣意的拘禁による人権侵害の深刻化が「国際人権基準違反」であり、日本政府に対して作業部会による実地検査の受け入れと、勧告が出された場合の速やかな状況改善を求めている。 
 
2013年に安倍政権が「国連人権勧告に法的拘束力はなく、従う義務はない」という内容を閣議決定して以降、日本では人権条約委員会などからの勧告をほとんど無視するかのような対応が続いている。しかし、東京オリンピック・パラリンピックの開催を間近に控え、人権に関する国際会議開催や国連機関による審査が続く今だからこそ、様々な人権問題に目を向け、「ガラパゴス的」とも言われる日本の司法制度や慣習についても、改めて国際基準に則って冷静な判断を下すべきタイミングに来ているのではないだろうか。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。