2020年01月24日17時44分掲載  無料記事
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アフリカ

【西サハラ最新情報】  着々浸食<モロッコ化>  平田伊都子

 「出てけ!」と、フランスのマクロン大統領はエルサレム旧市街にある聖アンナ教会で、違反入場を警告したイスラエル警察官に逆切れして怒鳴りました。 大統領によると、「教会の敷地は歴史的にフランス領土」だそうです。 なんでもクリミア戦争(1853年~1856年)の昔に、フランスのナポレオン三世が、オスマン帝国(トルコ)を助けてロシアのニコライ1世をやっつけたそうです。 そのご褒美に、トルコが聖アンナ教会にフランス国旗の掲揚を許したとか、、 
 そんな歴史を盾に自己主張するマクロン大統領の指導の下、モロッコは西サハラ占領地にモロッコ国旗を増やし続けています。 一方、国連は、COP(気候変動枠組条約会議)で世話になっているマクロンに、忖度し続けています。 
 
(1)2020年1月9日、西サハラがやっと会えた国連高官: 
 国連安保理は、フランスが拒否権をかざしてモロッコ寄りに牛耳り、国連記記者室は、モロッコ取材陣に占拠され、西サハラは頼みの国連でますます疎外されつつある。そんな厳しい状況の中で、シディ・モハンマド・オマル西サハラ国連代表は、やっと、ローズマリー・ディカルロ国連政治平和構築国連事務総長代行をつかまえた。オマル代表は2019年12月28日に西サハラ大統領がアントニオ・グテーレス国連事務総長に送った書簡を再度、提出した。そして改めて、「西サハラ人民は国連による和平交渉に、信頼を失いつつある。なぜならば、国連が28年前に約束しモロッコも受け入れた国連西サハラ人民投票という和平提案を、未だに実施していないからだ。そのうえ、その和平提案を推し進める国連事務総長個人特使を2019年5月に首にしてから、後任を決めず8ケ月以上も放置したままだからだ。西サハラ人民は、これまで全面的に国連和平交渉を強力してきた。西サハラ人民を裏切らないで欲しい」と、オマル代表は国連政治平和構築担当者に訴えた。 
 
(2)国連がやっと<西サハラ>という言葉を吐いた: 
 1月13日、西サハラ問題に触れてこなかったフランス人のステファン国連事務総長報道官がやっと、<西サハラ>という言葉を口にした。それは、オマル西サハラ国連代表の切々たる訴えに応えたのではなく、モロッコが共催する<アフリカ・エコ・レース>の宣伝と、<モロッコ占領地西サハラのモロッコ化>を後押しするためだった。かってフランスが誇った国際カーレース<パリ・ダカール>は、北アフリカの治安悪化で中南米にレース場を移したり転々としている。その一つに、名称も国連事務総長がお好みの<エコ>という言葉を入れ、フランスとモロッコが主要共催国となり、わざと、モロッコと西サハラの国境紛争地<ゲルゲラト>をコースに選んだ。植民地主義に反対してきた国連が、<西サハラのモロッコ植民地化>を手伝っている。 
 ちなみに、アフリカ・エコ・レースでは1月5日~1月19日にかけて、モロッコ~西サハラ〜モーリタニア〜セネガルとレースが展開され、かってのパリダカ・ゴール地点ラックローズで終わる。 
 モロッコ占領地・西サハラのモロッコ化は、車のレースや経済会議だけではない。「僕はフランスの植民地時代など知らない」と嘯くマクロン仏大統領の指導の下、<モロッコ植民地・西サハラ>を目標に、外国領事館の西サハラ招致を着々と進めている。2020年1月7日、ガンビアがモロッコ占領地・西サハラのダハラに領事館を開設した。1月17日、ギネアがモロッコ占領地・西サハラのダハラに、そしてガボンがラユーンに領事館を開設した。 
 2019年12月にモロッコ外務大臣ブリタが、1月の領事館開設に続き、アフリカのさらなる4カ国が今年中に、ラユーンに領事館を開設すると予告している。元フランス植民地のコモロはアフリカに先駆けて、モロッコ占領地・西サハラのラユーンに領事館を開設し、フランスの植民地化のお手本を示した。 
 
(3)リビア内戦国際会議合意を吹飛ばした反政府国民軍: 
 2020年1月12日午前、政府軍とハリファ・ハフタルのリビア国民軍が、政府軍側のトルコと将軍側のロシアによる仲介で停戦合意したが、午後には戦闘が再燃。13日には両軍の代表がモスクワで和平協議を再開、が、リビア国民軍側が「バイバイ」と交渉の席を蹴った。1月19日(日本時間20日)にプーチン・ロシア大統領も出席して、ドイツのベルリンでリビア内戦国際会議が開かれ、国連事務総長は会議の成功に満足したと、翌1月20日に喜びの声明を出した。 
ほんとに会議は成功したのか? 
 否、会議を仕組んだ国連事務総長の希望的思惑は、翌1月22日の反政府国民軍の政府支配地区対する攻撃で、ものの見事に打ち砕かれたのだ。結局、<国連とトルコが支持するトリポリが中心のリビア暫定政権軍> VS <サウジ、UAE、エジプト、ロシアが支持するベンガジなど東のハフタル国民軍>との戦争は再燃した。 
 ここにきて、中東戦争の元凶であるイスラエルが表舞台に出てきた。まだイスラエル首相であるネタニヤフは1月23日に、イスラエル訪問中のペンス副大統領を介して♠米大統領とのアポを取り付け、1月28日に訪米し、中東和平工作を検討することになった。1月23日に移動中の飛行機の中で♠米大統領は、「28日までにアメリカ中東和平案をまとめておく」と、語った。1月21日のダボス経済会議で「アメリカは世界のお手本」と豪語した♠米大統領。結局、ユダヤ人の♠娘婿クシュナーがまとめ、彼と親戚づきあいをするネタニヤフが後押しをすることになる、、 
 パレスチナ人民はどうなるの?? 
 
 1月半ば、アフリカの小国ガンビアが<ロヒンギャ迫害>事件を、ICJ(国際司法裁判所)に告訴しました。 告訴を受けたICJは、1月23日、被告のミャンマー政府に対して迫害中止を求める命令を出しました。 最終判決には数年かかるとか、、 
 一方、この国連機関であるICJは、45年も前にモロッコの西サハラ領有権を否決しました。 しかし、モロッコはICJなど無視して、<モロッコ化>を声高に唱え、西サハラ領有の既成事実を着々と作りつつあります。 パリCOPを餌にマクロン仏大統領に操られている国連事務総長殿、そんな手綱、切ってくださいヨ! 
 
 
*1月22日、「ニューズ・オプエド」で#1323<アフリカ最後の植民地>を放映しました。 
YouTube オプエド平田伊都子 URL https://www.youtube.com/watch?v=citQy4EpU-I 
 
*「アリ 西サハラの難民と被占領民」の出版情報です。ただいま<アマゾン>で予約中! 
著者:平田伊都子、写真:川名生十、画像提供:李憲彦、川上リュウ、SPS、 
造本:A5判横組みソフトカバー、4頁のカラー口絵、本文144頁 
発行人:松田健二、 
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、TEL:03-3814-3861 
2020年2月3日 初版第一刷発行  定価 税抜き2,000円 
 ぜひ、読んでみてください。 
 
Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)をご案内。 
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU 
 
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。 
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 
「Last Colony in Africa]  英語版URL:  https://youtu.be/au5p6mxvheo 
 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之     2020年1月24日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


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