2020年01月28日00時30分掲載  無料記事
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環境

混迷を深める気候問題〜環境団体がシンポジウムを開催〜

世界的に問題となっている気候変動。この問題をめぐって今最も注目を集めているのは環境活動家であるグレタ・トゥンベリ氏による積極的なアクションだろう。2018年8月、彼女はたった1人でスウェーデン国会議事堂前で気候変動対策を求める「学校ストライキ」を開始し、毎週金曜日、議事堂の外での座り込み運動を続けた。この運動は「Fridays For Future」と名付けられ、今では日本を含めた世界中に拡散されている。先日開催された世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」に出席した彼女は「私たちの家はまだ燃えている。環境対策は全く不十分だ」と世界各国のリーダーらを糾弾し、さらなる対策の強化を訴えた。 
 
こうした中、国際環境NGO「FoE Japan」主催のシンポジウム「MOBILIZE FOR CLIMATE JUSTICE-気候正義のためにたたかう人々-」が東京都内で開催され、約100名の参加者を集めた。同シンポでは、FoE International で活動するDipti Bhatnagar氏が登壇し、世界各国で発生している気候災害の現状について触れながら、エネルギーシステムをすべて再生可能エネルギーへと切り替える「システムチェンジ」や、危機的状況に立ち向かう人々の能力を構築する「ピープルパワー」などを例に挙げ、実現可能な解決策を提示した。 
国立環境研究所の増井利彦氏は専門家としての立場から、「温室効果ガス(GHG)によって地球表面の平均気温が約15℃に保たれており、GHGは生命の存在には欠かせない」としつつも、「今後、GHGの排出量が大幅に増加すれば、気候バランスが崩れることも懸念される」と警鐘を鳴らした。 
 
シンポジウムの終盤に行われたパネルディスカッションでは、若者主体で活動するFridays For Future Tokyo(FFFT)の岡田英里氏やClimate Youth Japan(CYJ)の露木志奈氏らを迎え、気候変動対策や運動のあり方についてさまざまな議論が行われた。岡田氏は若者にデモへの参加を促す策として、「オランダでは、ある学校の校長が課外授業の一環として、生徒たちを気候マーチに参加させた」との実例を紹介しつつ、「私たちの団体(FFFT)でも若者が参加しやすい、楽しい雰囲気をつくることを意識している」と述べた。 
また、小泉環境相の地元、横須賀市で行われている「横須賀石炭火力発電所訴訟」の支援を行うFoEの高橋英恵氏は議論の中で、気候正義を実現するためには、「まず日本国内のCO2排出量を半減し、石炭火力発電を止めることが重要」と強調し、訴訟サポーターとしての協力を呼びかけた。 
https://yokosukaclimatecase.jp/support_us/ 
 
現在、三菱商事の子会社などが主導するベトナムでの大型石炭火力発電所「ブンアン2」の新設計画が進められているが、小泉環境相が1月21日の記者会見で「日本がお金を出資して、結果として造っているのは中国とアメリカ。こういう実態はおかしいと思う」と計画への否定的意見を述べるなど、必ずしも政府内が一枚岩ではないことが明らかになっているが、本来的には、温室効果ガスを多く排出する石炭火力発電所の是非についての議論を進めることも必要だろう。また、CO2排出量が中国やアメリカなどに次いで世界で5番目に多いとされる日本には、CO2削減のためのさらなる対策強化が求められているが、この問題でも依然として明確なビジョンは見えてこない。気候変動は予想を超えるスピードで進んでおり、その対策は「遠い将来のため」だけでなく、身に迫った喫緊の問題として捉えて進めることが政府に求められている。 


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