2020年02月11日20時30分掲載  無料記事
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外国人労働者

外国人労働者を取り巻く現状はいかに〜在日ベトナム人労働者の実情(2)〜

 出入国在留管理庁(入管庁)は、2月7日に新たな在留資格である「特定技能」を取得して在留する外国人数を発表した。昨年12月末時点での人数が1,621人で、9月末の219人から7.4倍ほどの伸びを見せている。国・地域別ではベトナムが901人でトップとなり、インドネシア189人、フィリピン111人と続く。特定技能の資格を得るには、約3年の技能実習を終了するか、業種別の試験に合格する必要があるが、現状では約3年の技能実習を経て特定技能に移行する者がその大半を占めている。 
 今後も技能実習を経て特定技能で働く在留外国人が増加していくものと考えられるが、まだまだ受け皿となる日本企業はこのような外国人を「安い労働力」として捉える傾向が強い。在留外国人を取り巻く過酷な労働環境について、在日ベトナム人の支援に携わる浄土宗日新窟の吉水慈豊寺務長に話を聞いた。 
 
<脳梗塞を患った元技能実習生のケース> 
 ベトナム人技能実習生のグエンさんは、建設現場で働いていた。1日14時間近く働いているにも関わらず、月給は6万円代であり、当初聞いていた月給14万円からはほど遠い。来日の際に100万円以上の借金を抱えていたこともあり、「このままでは借金を返すことができない」とたまらず3か月ほどで失踪することとなった。脳梗塞で倒れることとなったのは、その失踪中のことである。失踪中は医療保険を使用することができないため、治療費は900万円近くにも及び、寄付などで50万円ほどの金額は賄ったものの、残額は支払うことができなかった。最終的にグエンさんは、借金を残したままベトナムへ帰国の途に着くこととなった。 
 
<いじめが常態化した会社で勤務する技能実習生のケース> 
 ある別のベトナム人技能実習生のAさんは、都内で建設業を営む会社に勤務していた。そこで彼が目の当たりにしたものは、社長による日本人社員への壮絶ないじめであった。この日本人社員は、頭髪をむりやりバリカンで剃られ、意に沿わない髪型にさせられたあげく、半裸の状況を動画で撮影されていた。「明日は我が身」と感じ、仕事が手に着かなくなったAさんはやむを得ず就労先の変更を希望したが、その願いが叶うことはなく、強制的にベトナムへ帰国させられることとなった。Aさんにはベトナム人の同僚が他に2人いたものの、いずれも人を人とも思わない扱いに耐えかねて、勤務開始から3か月ほどで失踪するに至っている。 
 
<いつもギリギリの状況> 
 吉水寺務長は、「助けを求める声が私のところに届くのはいつもギリギリのタイミング。すぐに動かないと手遅れになる」と在日ベトナム人労働者が置かれている過酷な状況を語る。さらに、「建設業に従事する在日ベトナム人は多いが、閉鎖的な会社だといじめの対象とされてしまう。技能実習生を受け入れる体制ができていない企業が多く、このような企業を放置することのないよう、監理団体がしっかりと目を光らせないといけいない。そして、政府はこのような現状をしっかりと把握し、不幸な在留外国人が一人でも減るよう、その実情に沿った制度の設計や運用をする必要がある」と、受け入れ先企業だけでなく、行政と一体となった支援の必要性を説いた。 
 日本には、外国人労働者を「安い労働力」と捉え、人権を無視した働き方を強制する会社がまだまだ存在する。借金を背負い、何の情報もないまま就労先を決められ、慣れない土地で過酷な労働を強いられる外国人労働者に対して「失踪は自己責任だ」という認識でいるようであれば、国際的に日本の人権意識を問われかねない。すでに同僚として働いている、もしくはいつ同僚になるかもしれない、彼(彼女)らが働きやすい環境を作ることは、日本人が働きやすい環境を作ることにも繋がる。社会が一丸となって「持続可能な共生社会」を作ることが、今の日本には問われている。 


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