2020年02月16日14時28分掲載  無料記事
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コラム

安倍政権と旧ソ連とアメリカ  日本にソ連型を導入した異色の自民党政治家

 「なぜ財界人はこの期に及んでも安倍首相の辞職を求めないか」という文章を先日書いたばかりです。旧ソ連や東欧をリアルタイムで知っているのは1991年以前に生まれた世代であり、29歳以上です。物事の輪郭がおぼろげに分かってくるのが仮に10歳としても39歳以上でしょう。すると、それ以下の世代は旧ソ連というものを知りません。筆者は安倍政権はいずれ旧ソ連に似てくると2013年の特定秘密保護法制定の頃に批判的に書きましたが、あれから安倍政権のもとで6年以上が過ぎ、統計の不正や、公文書の改竄・廃棄、政府要人の不起訴、権力者の取り巻きへのえこひいき、という典型的な旧ソ連の弊害が起きています。安倍政権と自民党が日本共産党を攻撃し、自分たちは資本主義の政党だと自己認識しているであろうだけに、事態は滑稽を通り越して悲痛ですらあります。なぜなら自己の失敗を認められないことがまさに旧ソ連の特質だったからです。失敗を認められないからこそ必然的にデータを改竄せざるを得なくなるのです。こんな本末転倒をやっている国の経済が下降するのは当たり前です。その果てに待っているのは国家の崩壊です。今日の若者たちが安倍政権に翼賛的だとしたら、旧ソ連や東独と言った国々のことを単純に知らないせいではないでしょうか。 
 
  こうした安倍政権のスプリングボードとなり、地盤となってきたのが朝日新聞を含む大手新聞でした。特にアベノミクスへの絶賛報道は安倍政権が長期化する土壌となったのであり、メディアの関与は明白です。アメリカでもジョージ・W・ブッシュ大統領の時代に日本と同様にメディアの危機が起き、多くの新聞が自由に書きづらい時代にありました。しかし、アメリカにはばねのように回復する力もあり、ハフィントンポストが象徴するように、インターネットを基盤に、新しいジャーナリズム媒体がたくさん生まれています。アメリカの場合、ジャーナリストが自己資金で起業している、というより、むしろ資金を集める力のある実業家が起業のチャンスをつかんでいると言った方が正解でしょう。この日米の土壌の違いは、アメリカでは新しい事業を起こす人間に有利に社会が構築されていて、失敗しても再生できることが大きな理由だと思います。資本主義にとって失敗しても再生できる、再起できる、ということが基盤です。しかし、日本で起業して失敗したら、しばしば銀行から個人補償の枷が課せられていて、起業した人は自己破産し、再起は難しくなってしまいます。このことが日本の資本主義が時代の変化についていけず、今、社会が閉塞を迎えている1つの理由ではないでしょうか。大手新聞社が首相と会食していることに大半の読者が不満を感じているなら、本来であれば新しい新聞を創刊する起業者がもっと出てきて当然なのです。なぜなら、新しい新聞を創刊するのに、今ぐらい絶好のチャンスはないからです。幹部や編集委員たちの癒着に吐き気を感じる記者たちがこぞって移っていける新聞社を創設する・・・そういう志のある実業家はこの国にはいないのでしょうか。 
 
  ところがそれができない・・・これは思想・表現の自由、というよりも、むしろ、既得権を持つ老舗が寄り合ってリソースの配分を決めている企業社会になっていることに起因するのだと思います。安倍政権は思想・表現に関しても直接「こう書くな」と統制するのではなく、それが実現可能なリソースを締め上げることで統制しています。皮肉なことは安倍政権はネオリベラリズムに見えますが、しかし、本質的にはアメリカ型の資本主義とは異なる基盤に立っていると見えることです。やはり、国家統制を基盤とする旧ソ連によく似ていると思えるのです。私の大学時代の法学部のゼミの教授はソ連法の権威でしたが、1980年代半ばのペレストロイカの時代ですら、当時のソ連の検察官の中には「ソルジェニーツィンは社会主義の敵だ」などと言う人がいたものです。思想でも経済でも中央で方針を決めて全国で画一的に実施させるのが好きなのです。閣議決定を連発している安倍首相はまさに旧ソ連の政治家にそっくりです。国と言うものが崩壊してしまえば、その法律もまた意味を失います。 
 
  ちなみに、アメリカで今、「社会主義」を標榜するサンダース候補が民主党予備選でトップを走っていますが、サンダース議員は「社会主義」ではなく、「民主社会主義」だとインタビューで応えています。この修正でサンダース候補が言おうとしているのは、旧ソ連・東欧型の社会主義を彼が目指しているのでは全くなく、言論の自由や人権、複数政党を認めるなどの民主主義を基盤とした社会主義だと言うことです。つまり、フランスや北欧のような福祉国家でしょう。資本主義の枠内で格差を是正し、中流層を増やすことで市民の購買力を底上げし、米経済の回復につなげていく、というあり方に思えます。もし仮にサンダース大統領が誕生して旧ソ連のように統計を操作したりするなら、アメリカのメディアはイデオロギーに関せず厳しく批判するはずです。そういう意味で、このまま安倍政権が続くと、米大統領に誰がなろうと、統治思想の違いはますます大きくなり、やがて日米間に決定的な亀裂が生じる時期がいずれ遠からず訪れるはずです。 
 
 
 
村上良太 
 
 
■ロシアから見る特定秘密保護法案  〜日本がソビエト化する日〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201311241930270 
 
■「共謀罪」で日本のソビエト化を加速する安倍首相  読売新聞は日本版「プラウダ」か 
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■グローバル時代の「ルイスの転換点」 〜アベノミクスの弱点〜 村上良太 
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