2020年02月27日12時20分掲載  無料記事
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国際

サンダース候補の「民主的社会主義」をどう見るか 「Democracy Now!」のポール・クルーグマンとリチャード・ウルフの討論

  バーニー・サンダース候補が民主党の候補になる可能性が高まってきた。そんな中、民主党候補らの討論会でもサンダース候補の「社会主義」を警戒する声が飛ぶ。それに対して、サンダース候補は「民主的社会主義」はデンマークのような福祉国家だと反論し、<アメリカの今を見れば大富豪たちは政府の補助金を得て税金も免除されているのに、貧しい人たちはその恩恵を受けない。金持ちにとっては社会主義、貧乏人にとっては個人主義になっている>などと反撃した。 
 
  米報道番組「デモクラシー・ナウ!」では経済学者のポール・クルーグマンと在米マルクス経済学者の大物リチャード・ウルフが招かれて、話をした。ウルフは「サンダース候補の政策に必要な予算の細かい数字はともかく、国民は<変化>を望んでいる。それが重要だ」と語った。ウルフ氏は若い世代はすでに「社会主義」と言う言葉に否定的なイメージは抱いていないと語っている。 
 
クルーグマン氏はウルフ氏に「中道(centris)」と指摘されて、不快感を漂わせていたものの、「僕に中傷メールを送ってくる人々は僕のことを中道とは思っていないと思う。自分はユニバーサルヘルスケアにもインフラ投資へも子供への福祉へも賛成してきた」と反論した。番組で取り上げられるがクルーグマン氏はサンダース候補に関して<>(バーニー・サンダースはドナルド・トランプの左翼版ではない)というコラムを書いたばかり。 
 
 「America under a Sanders presidency would still be America, both because Sanders is an infinitely better human being than Trump and because the Democratic Party wouldn’t enable abuse of power the way Republicans have. 
 And if you’re worried about his economic agenda, what’s your concern, exactly? That he’ll raise taxes on the rich part way back to what they were under Dwight Eisenhower? 」 
 
 (サンダース大統領のアメリカはやはり、アメリカです。サンダース氏がトランプ氏よりも無限に善人であるからだし、また民主党は共和党のような権力の乱用はできないからです。もし皆さんがサンダース候補の経済政策を不安に思うとしたら、皆さんの心配は具体的に何でしょうか?サンダース候補が富裕層への課税を引き上げることですか?富裕層への課税引き上げはドワイト・アイゼンハワー時代のやり方に戻る、というだけのことなのに?) 
 
  クルーグマン氏はこのコラムでサンダース候補はトランプ大統領よりもはるかにましだが、もしサンダース氏が大統領になればおそらく自分のような「中道左派」にとっては容認できない政策をするかもしれない。その時自分はもう彼に甘い言葉はかけない、と結んでいる。ここでクルーグマン氏は自分は、いわゆるMMT理論(現代貨幣理論)については否定的であることを語っている。これはニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授らが提唱している理論。サンダース候補が実際にMMT理論をどう見ているのかわからないが、クルーグマン氏がコラムで言いたかったことは、国民皆保険や大学無料化などの実現に際して、不足する財源を大規模な国債発行に安易に頼り切ることには反対だと言うことだろう。クルーグマン氏は国債発行で景気を維持する政策には賛成だったはずだが、それにも限度があると見ているに違いない。 
 
 
■「Democracy Now!」Sanders & Socialism: Debate Between Nobel Laureate Paul Krugman & Socialist Economist Richard Wolff 
https://www.youtube.com/watch?v=z6J3ROV4IPc&fbclid=IwAR3mwVqlIW_vP4ezNH-W9QAVyIIYYB5xHRjCBqYsVLDxXljvjxU38fgD2BI 
 
■THE ECONOMIST WHO BELIEVES THE GOVERNMENT SHOULD JUST PRINT MORE MONEY(NEWYORKER) 
https://www.newyorker.com/news/news-desk/the-economist-who-believes-the-government-should-just-print-more-money 
 
  ニューヨーカー誌の昨年の記事によると、サンダース氏がMMT理論の提唱者であるステファニー・ケルトン教授と親和性があるとしても、それを政策に取り入れるとは決して公言していないようである。 
 
 ”Sanders, however, has never offered an endorsement of M.M.T. When asked, in February, how he planned to pay for his policies, Sanders responded, “Am I going to demand that the wealthy and large corporations start paying their fair share of taxes? Damn right, I will!”” 
 
 さらにニューヨーカー誌の記事には以下のような記載がある。ケルトン教授の目指す社会への方向性には共鳴しつつも、MMT理論に関しては信じていない、ということのようである。 
 
”Warren Gunnels, Sanders’s staff director, told me that Sanders hired Kelton because they agree on the policies that form Sanders’s platform. “She’s one of the leading economists who’s trying to create an economy for all,” he said. “We need more economists like her.” But, he said, “M.M.T. never really crossed our mind, to be honest. We never looked at M.M.T. as a theory that we should adopt.”” 


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