2020年03月20日01時25分掲載  無料記事
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文化

ルドミラ・パヴロヴァ―さんのバッハ作曲「シャコンヌ」 北部の村、スタラパカでの夏の音楽祭 Ludmila Pavlová(violinist)  

  チェコと言えばスメタナやドヴォルザークなど偉大な音楽家を輩出した音楽の国として知られていますが、音楽が盛んなのは首都のプラハだけではありません。北部、ポーランドとの国境に近い山岳地域のスタラパカと呼ばれる村の教会では気鋭の若手演奏家を中心としたコンサートが毎年夏に行われています。チェコだけでなく海外からも演奏家を招聘し、クラシックだけでなくジャズなども演奏されます。日刊ベリタでも何度か取材させていただいたプラハ在住のバイオリニストのルドミラ・パヴロヴァーさんも毎年のように、この夏の音楽祭で演奏しています。名前は「Podkrkonosske」(偉大な山の麓)のサマーコンサートです。 
 
  まずは昨年8月に行われた演奏。パヴロヴァ―さんはバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」の中でも名曲中の名曲、「シャコンヌ」を演奏しています。面白いのは「無伴奏」とあるように、通常はバイオリンのソロですが、この音楽祭では作曲家の発案もあって、4人のコーラスとバイオリンを一緒にやってみたらどうだろう、という試みです。YouTubeで公開された15分ほどの演奏では、コーラスと非常にバランスがよく、シャコンヌの魅力を普段以上に表現しています。必聴です。 
 
■2019年8月10日の演奏、バッハ作曲「シャコンヌ」(パルティータ第2番ニ短調 BWV1004) 
https://www.youtube.com/watch?v=sWeKS79eLFg&fbclid=IwAR0jZlx4j1h-EzWJJx9YtdU4nTwe_KUxFrO3CTVn03zMT842CmFjDhQcbMM 
 パヴロヴァ―さんは「バッハの『シャコンヌ』は悲しみであり、喜びであり、すべてです」と語っています。プラハでの音楽学生時代の16歳の時に初めて演奏してから、その曲の深みと美しさに取りつかれ、今もよく演奏していると言います。 
 
  筆者はかつてリシャール・ベリが主演した「無伴奏シャコンヌ」(1994) というフランス映画を見たことがあります。才能のある優れたバイオリニストが、スランプに陥った友人のバイオリニストの自殺をきっかけに商業的シーンから離れて、妥協なき音楽を模索する葛藤を表現した映画でした。その場所がパリの地下鉄の構内。ホームレスたちの中を彷徨いながら、このシャコンヌを演奏し続けるのです。ある日はバイオリンを壊され、楽器がないままハミングでも「演奏」し続ける・・・友への鎮魂の願いのような、この映画のメイン曲がバッハのシャコンヌ。パヴロヴァ―さんが語るように、この曲には映画を1本作らせるに足る崇高な美しさがあります。この映画「無伴奏シャコンヌ」では映像で演奏しているのはリシャール・ベリですが、実際に吹き込んでいるのは名演奏家のギドン・クレーメルです。このクレーメルの演奏は非常に聞きごたえがあり、その音楽を聴くためだけでもこの映画を2度、3度、繰り返して見たものでした。しかし、今回のパブロヴァ―さんの演奏は、コーラスとの演奏で、クレーメルの演奏とは違って、バイオリンが歌とぶつからず、非常にバランスよく両者が響きあっていることが魅力になっています。パヴロヴァ―さんのように若い演奏家だと、ともすると力んでしまいかねませんが、パヴロヴァ―さんにはそういう過剰な部分がなく、その共演者との対話も見事と言うほかありません。 
 
パヴロヴァ―「作曲家のJiri Slabihoudekさんとともに合唱と合わせて演奏したら、というアイデアを得ました。毎年、この夏の音楽祭では若手作曲家の新曲が1つ演奏されるのですが、Jiriさんもその一人で、その曲を以前私が演奏したのです。4人のコーラスのこのような純粋な声音に合わせて演奏する経験は私に深い感動を与えてくれました。それにこの山地にある美しい教会はチェコの中で天国に近い入口でしょう。音響はよいですし、聴衆も素晴らしいんです。教会は聴衆でぎっしりとなりましたが、聴衆と演奏家で独特の雰囲気を作り出しています」 
 
(The idea to combine the original violin solo Ciaccona from Bach 's Partita d minor with his choral was created in cooperation with the composer Jiri Slabihoudek (who wrote also premiere for my festival-every year is one premiere from a young composer during this summer festival at the north of the Czech Republic). It was very deep experience to play Ciaccona with such a pure sound of the four vocalists.Also, it is a very beautiful church close to the entrance to the czech paradies.Very beautiful acoustic and amazing people.The church was absolutely full of audince which created together with musician an unique atmosphere ) 
 
 この音楽祭は昨年夏で4回目ということで、主催者はスタラパカの町の人々のようです。なぜ、音楽祭を始めたかと言えば、音楽の好きな人がチェコの辺境地域にもたくさんいるのに、プラハまで音楽を聴きに出かけるだけでは残念だ、という考えのようです。そこでプラハや海外から優れた演奏家をこの町に呼んでみんなで音楽を盛り上げようというわけです。パヴロヴァ―さんは2017年の夏にも演奏しています。その時も「シャコンヌ」でしたが、この時はバイオリンソロを演奏していました。 
 
パヴロヴァ―「初めてシャコンヌを演奏した時は無限を感じました。これ以上に重いものも、軽いものもこの世には存在しないと思えました。あまりにも気持ちがあふれて、まるで自分の肉体が存在しない気すらしました。(とはいえ、聴衆の前で演奏しているわけですから、肉体が消えていいわけがありませんが)。苦しみが、そして喜びが示され、最後に私が秘めている疑問に対して、答えを与えてくれるような体験。そして私はカタルシスを得たのです」 
 
 (When I first played Bach's Ciaccone I felt infinite, nothing on this planet was too heavy or too light. The piece is making you feel so much that you don't feel your body anymore (which is hard because you are still performing in front of the people and you cannot fade out), but you feel pain and then happiness, and at the end as if your secret questions can be responded.At the end you feel catharsis...) 
 
 
■シャコンヌのバイオリンソロを弾いている時 
https://www.youtube.com/watch?v=0tZgYFeFecc&fbclid=IwAR1HBHOBkbNMjv5r3yOpGFwrxeqjNr3crmNOKDUmrd2TSfhJP095lMI2yqs 
 
 
Ludmila Pavlova 
ルドミラ・パヴロヴァ― 
バイオリニスト(プラハ在住) 
 
 
 
聞き手 
村上良太 
 
 
■プラハでミュシャ・トリオ(Mucha trio ) を立ち上げました!  ルドミラ・パヴロヴァー(Ludmila Pavlova バイオリニスト) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201810200026066 
■音楽にかける青春 カロル・シマノフスキのヴァイオリン協奏曲2番に挑戦 ルドミラ・パヴロヴァー Ludmila Pavlova 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201909032313572 
■音楽にかける青春 バイオリン奏者 ルドミラ・パヴロヴァー Ludmila Pavlova 人は演奏している音楽とともに生きていかなくてはならないことを知りました 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201508200021584 
■音楽にかける青春  富士山の麓でのコンサート   ルドミラ・パヴロヴァー(バイオリン奏者) Ludmila Pavlova ,violinist 
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http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201508010952116 
■アンナと7匹の猫  〜プラハの猫たち〜  クラリネット奏者、アンナ・パウロヴァ―( Anna Paulova ) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201612312047166 
■音楽にかける青春 岩宙平さん(28) プラハで指揮者デビュー  Chuhei Iwasaki 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201607030236520 
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http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201508090212550 


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