2020年04月09日11時26分掲載  無料記事
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政治

バーニー・サンダース候補が撤退

  米民主党予備選で最初はトップランナーだったバーニー・サンダース候補が選挙戦から撤退を表明した。潮目が変わったのはスーパーチューズデイと呼ばれる多数の州での民主党予備選の選挙だった。この日を境に元副大統領のバイデン候補がトップに立った。その陰には左派のサンダース候補を据えたくない民主党幹部たちが民主党穏健派あるいは共和党に近い候補者たちに撤退を求め、バイデン候補に一本化したことがあった。ブティジェッジ候補やクロブシャー候補らがスーパーチューズデイ直前にそろって撤退した。 
 一方、左派はエリザベス・ウォレン候補とサンダース候補で票が割れ、結果として、2016年のヒラリー・クリントン候補の勝利と同じ展開になった。 
 
  サンダース候補を支持していた人によればスーパーチューズデイ前の討論会の際に、民主党幹部たちがサンダース候補には勝たせない方針だとわかったとツイートしていた。仮にサンダース候補が50州の予備選の総数で勝利したとしても最後の総会でひっくり返す計画を持っていることがその日の討論会の際に見えた、というのだった。米民主党幹部が候補者たちにどのような撤退の説得工作を行ったのかは、11月の大統領選後にメディアで報じられるかもしれない。しかし、いずれにしても国民皆保険や公立大学の無料化などを求めた候補を民主党主流派が結束して葬った、という事実が忘れられることはないだろう。それは呪いとなって11月に跳ね返ってくるかもしれないのだ。 
 
  とはいえ、最初は撤退してもおかしくないほど不調だったバイデン候補が、たとえ民主党幹部が支援したとしても予備選でサンダース候補を越えた、という事実の中には何があるのだろうか。バイデン候補に投じた様々な州の人に聞いてみたい気がする。もしバイデン候補がトランプ候補に勝てるとしたら、勝因はその「何か」だろう。しかし、単にサンダース候補に勝たせたくない、というネガティブな動機で単なる消去法の選択だったなら、おそらく今年も民主党に勝ち目はないだろう。NAFTAやTPPなど自由貿易協定をヒラリー・クリントン氏と同様に支持してきたバイデン氏は前回の2016年の選挙戦で勝敗を分けたラストベルトと呼ばれる工場地帯の白人労働者層にどう迫れるのだろうか。インターネット検索していると、バイデン候補はヒラリー・クリントン候補の致命傷となったラストベルトなどの鍵となる州でヒラリー候補よりよい成績を上げていると言う記事があった。3月11日付のUSAトゥデーである。 
 
"Biden has vastly outperformed Clinton in some primaries. Is that bad news for Trump come November?" 
https://www.usatoday.com/story/news/politics/elections/2020/03/11/election-2020-joe-biden-winning-voters-who-might-have-gone-trump-before/5010779002/ 
”But this year, as Joe Biden has taken command in the Democratic primary, some of the same demographic groups that didn't back Clinton in 2016 are delivering for the former vice president as he takes on the same opponent. That includes non-college-educated white voters, who could be critical for Democrats to win back the Rust Belt swing states of Michigan, Wisconsin and Pennsylvania. 
Since his breakout win in South Carolina and continuing into his latest romp Tuesday, Biden has vastly outperformed Clinton's 2016 primary performance with two key groups: college-educated voters in affluent suburbs - where there has been a turnout surge - and rural working-class voters.” 
 
  USAトゥデーの3月11日の記事はなかなか興味深い。筆者はヒラリー・クリントンとジョー・バイデンをイデオロギー的な見地から同一視しがちな傾向があるのだが、USAトゥデーは予備選の投票を分析した結果を伝えている。そこでは前回の2016年の民主党予備選の際に、ヒラリー・クリントン候補とサンダース候補が闘っていた際にサンダース候補に票が集まった州だが、今回、そうしたラストベルトでバイデン候補が勝っている、あるいは前回のヒラリー・クリントン候補よりも健闘しているという事実だ。これは何を意味するのだろうか。USAトゥデーはバイデン候補は都市郊外の比較的豊かな大卒の有権者と同時に地方在住のいわゆるブルーカラー労働者の両方でヒラリー・クリントン候補を上回る支持を得たと言うのである。単純に保守的な層のミソジニー(女性嫌悪)によるものか、それとも何かヒラリー・クリントン候補にはなくバイデン候補にはある「何か」に期待しているということなのだろうか。だとすればそれはいったい何なのか? 
 
  撤退表明の中でサンダース氏は高等教育の機会均等などについて信念を語った。バイデン候補を応援すると語った。サンダース候補はバイデン候補に本心は批判的なのだが、トランプ大統領の打倒のために結束を語りかけている。2016年の再来を防ぐためだ。 
https://www.youtube.com/watch?v=WDWjZx_MukM 
 
 
■「Democratic Debacle 民主党の敗北」The defeat of Hillary Clinton was a consequence of a political crisis with roots extending back to 1964. ヒラリー・クリントンの敗北の根っこは1964年に遡る ジェローム・カラベル(社会学) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202002290302266 
 
■サンダース候補を選ばせたくない民主党幹部勢力 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202002280104045 
 
■複数の米世論調査ではサンダース候補だけがトランプ大統領(現職)に勝てる民主党候補 〜国民皆保険案が圧倒的に支持される〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202002231337460 


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