2020年05月29日15時18分掲載  無料記事
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米国

ミネアポリスで黒人が警察官に衆人環視の中、殺される 

  インターネットで今週撮影されたある衝撃的映像がアクセスを集め話題になっていた。アメリカのミネソタ州、ミネアポリスの路上で白昼、白人のイケ面の警察官によって黒人男性が地面に押さえつけられている。首に警察官の膝が押し当てられ「息ができない」と言っているのだ。しかし、警察官は一向、その声に耳を貸すことなく、さっきまで苦しみを訴えていた黒人が全然動かなくなってしまう。周囲の人々からこの状況に疑問の声が上がり、早く起こしてパトカーに乗せて連れていけと言っているようだ。これは警察車両の脇で起きた出来事で、現場にミネアポリスの警察官が4人いた。1人は黒人を地面に押さえつけて殺した実行犯である。一人は周囲の人垣の前に白人警官を隠すような形で立ちふさがるアジア系の警察官。残り二人は裏側にいた模様。 
 
  映像ではここまでだが、ネットでは道路の反対側から撮影された写真も出回り、そこに警官が4人であることが見て取れる。警察車両はドアが開いていて、どうもこの黒人を連行する過程にあったらしいことがうかがわれる。 
 
  ニュースでは黒人はジョージ・フロイドさん、46歳。食料品店で偽造20ドル札を使用した容疑らしい。この衝撃映像を見た後、このニュースを読んで、たかだか20ドルの偽札の使用事件で、容疑者だとしてもこのような事態を招いて死に至らしめるほどのことなのか、とその落差に驚きを受けた人が多いだろう。そして、白人警官は恐らくスマートフォンで撮影されていることを知りながらも、その行為をやめなかった。なぜそんなことができるのか、それも疑問として突き刺さる。この白人警官の心中に何があったのだろうか。激しい人種差別意識なのだろうか。あるいは何か別の現場におけるデテールがあったのだろうか。bbcのニュースによれば食料品店からの偽札の通報を受けて警察が直行した時、近くの自動車にフロイド氏が乗っており、車から離れることに抵抗したことがこの流れの発端になったとされる。 
https://www.bbc.com/japanese/52829555 
  多くの人はデジャビュ感があるはずだ。2014年にも「息ができない」と言って殺された黒人の事件があり、その時も映像がばっちり撮影されていたことだ。当時はオバマ政権だったが、暴動に発展した。当時の風刺漫画ではオバマ大統領がホワイトハウスでそのニュースを茫然と見ている1コマがニューヨークタイムズに掲載されていた。現在はオバマ大統領とは対極にあるトランプ大統領である。今回の事件に関わった警官4人は懲戒免職になった。しかし、いったいなぜ、そんなことをしたのか、ということがやはり謎として残る。フランスの「不服従」新聞では今回の事件を報じながら、同様にフランスの警察官によって容疑者が逮捕シーンで殺された人々をたくさん実例で挙げている。 
https://linsoumission.fr/2020/05/28/george-floyd-la-mort-qui-enflamme-les-etats-unis/ 
  2014年の事件と今回の事件と性質は似ているが、一方で日本でこの事件から受ける印象には大きな違いがある。それは日本の警察や司法に多くの国民が不信感を抱き始めていることである。性暴力被害を訴えたものの容疑者の逮捕は取り消され不起訴となった伊藤詩織さんの事件や、官僚の公文書偽造、その他の政府関係者の関与が疑われる一連の事件が事実上野放しになっていることなどの影響である。もはや法の前の平等が日本においても崩れつつあると多くの人が感じ始めている。そんな今、この黒人が衆人環視の中、警察官によって殺される事件はいつ日本で同じようなことが起きてもおかしくないと感じさせるものがある。2014年はまだアメリカは野蛮な国だな、と突き放して見ることができたのとは大きな変化だ。 
 
  今、ミネアポリス以外でも、この件についてデモが続いている。トルコ系アメリカ人のジャーナリストで政治評論家のジェンク・ウィグル氏は「ミネアポリスで起きていることは100%、警察を軌道修正しなかった政治家たちの責任である。もし、人々が警察のマイノリティに対する暴力的文化を変えさせようとしなかったなら、この件はみんなの責任だ! すべての暴動は100%エスタブリッシュメントの責任である!」とツイッターで述べている。政治家ばかりか、警察や検察、裁判所まで市民が複眼で見つめなくてはならない時代となったようだ。 
 
 
■私はなぜ刑務所の民営化と闘ってきたか  元受刑囚で「刑務所法律ニュース」のジャーナリストに聞く  Interview : Alex Friedmann , Managing Editor of "Prison Legal News." 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201612081813454 
 
■警官らに発砲されるオバマ(元)大統領  Charlie Hebdoの風刺画 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201611112119005 


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