2020年06月17日19時54分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202006171954313

コラム

朝日新聞社主催 都知事選候補者のネット共同記者会見を見た 〜パワーを見せた小池都知事 その源は?〜

  今日、行われた朝日新聞社主催の都知事選候補者の記者会見は個別に候補者の話を聞いたときには感じなかった何かを感じることになりました。それはそれぞれの公約とか、過去の実績のデテールとは違う、候補者それぞれの人間性とか、強さみたいなものでしょう。これはもしかしたら、普通の記者会見よりもネットによって増幅されているのかもしれません。 
 
  その意味で、最もインパクトがあったのは小池都知事でした。7つの0は未達成ではないかとか、学歴詐称ではないかと言った様々な逆風の中にあって、やはり強い現職候補だという気がしました。その強さは何かというと、テレビのキャスターであったことも関係しているのでしょうが、日本語の話し方が非常にうまいということだと思います。この場合の「うまい」というのは、たとえて言えば、観光バスのガイドを聞いている印象、あるいは昭和時代のアナウンサーの話を聞いている印象です。古き良き時代の正統派のアナウンサーの言葉のような話し方を小池氏がすることで、おそらく特に年配の世代の人々が好感を持つのではないかと感じました。聞いているうちに都心観光の観光客みたいに安心して眠り込んでしまうような語りです。右の耳から左の耳に抜けていくようなつかみどころのない言葉ですが、ムスリムのアザーンのように聞いていて心地よいのです。決して侮ることができないものがあります。 
 
  逆に挑戦者のサイドで見れば、話し方の落ち着き、あるいは安定感という点で宇都宮健児候補は小池氏に負けず、互角に闘っている印象を受けました。宇都宮氏は相手を攻めるだけではなく、相手に対して評価するところは評価し、たとえ難しい状況でも立場の違う相手と地道に交渉して物事を進めていけそうな印象です。それがこのネットを使った記者会見でいつも以上に感じられたことでした。宇都宮氏は新聞記事などではどちらかというと、頑固一徹な印象を受けがちでしたが、ネットからはむしろ柔軟さを持った人物に感じられました。 
 
  その意味で見ると、山本太郎氏の政策は非常に興味深く、聞くべきものがあるものの、上記のような視点で見た時に、おそらく安定感にどこか欠ける印象があったことはぬぐえません。山本氏にとってはこの記者会見はどちらかと言えば、マイナスであった気がしました。山本氏の攻めていくスタイルが、小池氏や宇都宮氏などのある種の百戦錬磨の人々の前で、どこか空回りして見えるところがあったのかなと思います。筆者は山本氏の政治の姿勢に共感するものですが、今日の記者会見を見ると、正直なところ、そんな感じを抱いたのです。これは、しかし、政策の中身の話ではなく、あくまでなんとなくの印象論です。野党議員であれば鋭い質問力でよいのでしょうが、与党になるということはやはり安定感を求められるものでしょう。 
 
  その意味では記者の副知事には誰を?という質問の際に、山本氏は宇都宮氏の名前を挙げていましたが、むしろ、山本氏が副知事候補として宇都宮氏の陣営に合流した方がよい結果を生むのではないか、という印象を正直少し持ちました。それは多分、今後の山本氏やれいわ新選組にとっても、でしょう。副知事の仕事もやりがいのある仕事だと思いますし、将来にその経験を生かせるはずです。その意味では両候補は今からでも、互いに補完し合えるのではないかと思えます。黒澤明監督の映画「野良犬」の志村喬と三船敏郎です。もちろん、それはこの記者会見だけの1回性の印象に過ぎないのですが・・・。これは決して野党共闘推進のバイアスで書いているのではなく、率直な印象です。 
  NHKから国民を守る党の立花孝志氏はいつもの通りのマイペースで語り、元熊本県副知事の小野泰輔氏は今回の選挙で株を上げる政治家のような気がします。 
 
 
 
武者小路龍児 
 
 
■シリーズ「明るいウンコ」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201910072107491 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。