2020年07月11日13時41分掲載  無料記事
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国際

トランプ政権、最後の1年(17) トランプと戦う米民主党の有色女性下院議員4人組 大統領は「出てきた自分の国に帰れ!」と激しい敵意 坂井定雄:龍谷大学名誉教授 

 4人組の先頭に立つのはアフリカのソマリア生まれ、イルハン・オマールさん(1981年生まれ、3児の母)。 
 2018年11月の米下院選挙にミネソタ州第5選挙区で民主党から立候補、当選した。初のソマリア生まれ、初のアフリカ生まれの米国人、米下院議員。ミネソタ州議会議員を2年務め、その後の下院選挙で当選した。最初のイスラム教徒米国人議員2人の一人。若い新世代の議員の一人として、民主党、共和党の議席が接近している米議会の中で注目された。 
 
 彼女が議席をえたミネソタ州は今年5月25日、黒人のジョージ・フロイドさん(46)が、警官に首を圧迫され、殺害されたところ。トランプ大統領は警官の行為を非難もせず、たちまち激しい抗議デモが全米に広がり続いた。オマールさんが、この事件を激しく抗議したことは言うまでもない。 
 
 (以下、おもに英語版Wikipediaを参考にした)トランプ大統領は昨年7月14日、ツイートで、オマールさんら民主党の米国生まれ有色女性下院議員4人組に対し「やってきた場所に帰れ」と発言。それに対し、オマールさんは「トランプの白人ナショナリズムだ。なぜなら彼は、私たちのように、議会に奉仕し、彼の憎しみに満ちた姿勢と戦う者たちが憎いからだ」と反論した。2日後、米下院は240対187で、トランプの“人種差別主義コメント”を非難する決議を採択した。7月17日、米国平等雇用機会委員会(法に基づく政府機関)は「やってきた場所に帰れ」との発言を「出身国によるハラスメント」の一例だと非難した。 
 
  同7月17日、トランプは北カロライナ州の共和党選挙集会で、「しゃべることはあまりない。私が言うことは“彼女が(米国が)嫌いなら、追い返してやれ”というだけだ」と発言。別の機会には、何度もオマールさんについて全く虚偽の非難を繰り返した。「彼女はアルカイダを褒めている」と何回も攻撃。さらにトランプは、1914年以降、イラク、シリアで残虐な内戦、支配を拡げた「ISIS(イスラム国)に対して優しい」と彼女を非難。 
 トランプはミネソタ州での選挙集会では、1993年10月の悪い記憶までも持ち出した。国連軍の一部として米軍が介入したソマリア内戦での首都モガデシュでの戦闘で、多数の市民と米兵が死傷して失敗、クリントン大統領が撤退を決定した“不名誉な記憶”だ。ソマリア生まれのオマールさんを攻撃したのだ。 
 
 ―(英語版WikipediaのIlhan Omarは本文12ページ、文献索引6ページの資料集。引用はこれでやめておくが、関心のある方は、ぜひcheckしてください) 
 
 イルハン・オマールさんは1981年、アフリカ中部のソマリアの首都モガデシュで、7人の子供たちの末っ子として生まれた。母親は彼女が2歳の時亡くなり、父親、祖父の手で育てられた。一家は90年代のソマリア内戦を逃れ、隣国ケニアの難民キャンプで4年間を過ごし、1995年、米国に移住した。 
 
 ソマリアはアフリカ中部のインド洋に突き出した「アフリカの角」と呼ばれる地域が国土。インド洋への紅海の出口に面し、その向こう側は中東のサウジアラビア、イエメン。このような軍事戦略上きわめて重要な位置に面しているため、ソマリア内戦にアメリカが軍事介入したのだ。 
 
 経過は省くが、一家はミネソタ州に定着、彼女はアフリカ生まれの現地国民としては初めて米国籍を与えられた。同州で大学まで進み、卒業後、教職員を経て市議会議員、米下院議員の秘書へと経験を順調に重ねた。2016年の州議会選挙で、現職を破って当選した。 
 
 
坂井定雄:龍谷大学名誉教授 
 
 
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/ 
 
ちきゅう座から転載 


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