2020年07月13日11時01分掲載  無料記事
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米国

2020年大統領選挙戦に見るアメリカ社会の問題 落合栄一郎

 2020年のアメリカ大統領選挙は、コロナ禍がなくとも、問題だらけで、共和党のトランプ現大統領と民主党候補のバイデン元副大統領のどちらが当選しようと、この国の未来、いやそれに支配されている人類社会に良い影響は期待できない。この問題を少し考えてみたい。 
 
(1) 世界覇権問題 
 
 アメリカは第2次大戦後の世界で、覇権を維持しようと懸命であったし、今でもそういう意識を持つ支配層がある。大戦で大被害を受けながら、ナチスに勝利したソ連、すなわち社会主義・共産主義というアメリカの支配層を脅かしかねない思想・政策を、徹底して押しつぶすことを企画、いや戦力を持ってしてもなきものにしようと画策してきた。これは実は、イギリスのチャーチルの思想を受け継いだものである。共産主義国家としてのソ連が崩壊した今でも、これが、いわゆるネオコン的考えであり、現在の民主党の支配層をがんじがらめにしている。民主党ばかりでなく、主要報道機関もこうした考えに支配されている。こうした考えに反旗を翻したケネデイー大統領は暗殺され、それ以降の大統領は、オバマも含めて、こうした考えに支配されてきた。 
 
 このような状況下、こうした考えにはなじめていないトランプが大統領になってしまった。トランプは、ソ連(いやロシア)を軍事的にでも支配下に置こうなどということなどは考えず、自分の考えの基本─商業的利益獲得─のためには、そんなことをせず、外交上開けた関係を持とうと画策してきたが、ネオコンに影響された人間が閣僚にも多く、反対の民主党がロシア疑惑なることをでっちあげるなどして、彼をけり落とそうと躍起になっている。 
 
 こうしたトランプの考えでは、北朝鮮問題でも、いつまでも軍事的緊張関係を続けておく必要がない、だから関係改善を図ろうと、米朝会談を実行したのだが、ネオコン派(その代表格の1人がボルトン)に邪魔されてまだ実現に至っていない。ネオコン派は、北朝鮮は、中国・ロシアと対抗するには重要な位置にあるもので、その覇権施策のためには、相手側に渡したくないのであろう。このような情勢下では、北朝鮮は、リビアが、カダフィが残忍に殺害されて混乱に落とし入れられた例のようにならないように、核力を含めて反発力があることを誇示せざるをえない。 
 
 そこに、中国問題が台頭してきた。中国そのものは、軍事的にではなく、経済的(商業的)に世界を支配下に置こうという覇権意識が、現政権者にあるようで、しかも、技術的にも世界最先端を行こうと懸命である。 
 
 なお、中国問題は、香港問題に集約されているように、昔からの英国の中国支配の意識の延長もあり、それがアメリカに輸入されてしまった。これはイギリスが世界制覇を果たしつつあったときに、まだ完全な支配下におけていなかった中国・ロシアをなんとかしたいという策略(日本は日英同盟などで、それに巻き込まれていった)の継承である。 
 
 ところが、経済的、技術的に中国が力を付けてきたことに、トランプは、脅威を感じ出したようである。トランプの最大の関心事であるアメリカの経済・技術上の優位維持が脅かされてきたからである。そこに、コロナ禍が発生し、その発生源を中国に押し付けることで、中国の国際的地位に傷をつけようと懸命になったようである。 
 ただ、ネオコン派はこれをさらに拡大して、 中国の影響拡大を軍事的に閉じ込めようとしていて、南シナ海に軍事力をちらつかせている。すなわち、英米の世界覇権の意図が、ロシア・中国の軍事・経済力の増大とぶつかる事態になっている。なお、ロシアの軍事技術はすでにアメリカを凌駕していると噂されている。 
 
(2)BLM運動など 
 
 コロナ禍の最中に、ミネアポリス市で1人の黒人George Floydが、警察官に頚を膝で押さえつけられて窒息死するという事件が発生。これは、人種差別の典型例として、多くの人が、アメリカのみならず、人種差別反対に立ち上がった。その際に、すでに数年前から活動していたBLM(Black Lives Matter)という組織が乗り出し、運動を引きずる形になった。この標語そのものに反対する理由はなく、多くの都市などで、街路に大きくBLACK LIVES MATTERなどと書き込まれた。この運動は、かなりの期間、多くの都市で繰り返された(ている)。いままでに、アメリカ国内で2千5百万ぐらいの人がこの運動に何らかの形で参加したそうである。 
 
 その中心には、黒い服装と黒いマスクなどを纏ったBLM、AntiFa(Anti Fascism)といった正当な主張を持つとされる組織の人々が、運動を煽る姿がある。そして、単に人種差別反対を唱えるだけでなく、建物の破壊や商品の強奪などの暴動も、特に米国首都のワシントンなどで見られるようになった。アメリカ西岸の主要都市シアトルでは、こうした若者達が市の一部を占拠し、独立的自衛領域を宣言し、シアトル警察,市長も譲歩した。 
 
 ところが、シアトルのこの占拠地帯では犯罪が横行したし、BLM運動を優先するような施策をしたニューヨーク市などでも、犯罪が増えている。実は、こうした運動の背景にはある種の人たちの思惑があり、人権問題を主題とするよりは、これを利用して自分達の都合のよい方向に社会を動かそうとする意図があるようである。 
 
 アメリカには、富豪達が、 社会に奉仕する(寄附)という姿勢をもつ組織がかなりある(実際は、税金逃れが目的だが)。かなり信用のおけるある論者は、こうした組織(特定名称まで明かしているが)からBLMにすでにかなり以前からカネが渡されており、BLM中の若者には、社会撹乱の方策の指導までなされているとのことである(*)。背景にいる人たちの目的は、社会を混乱に陥れ、現政権に打撃を与え、大統領選挙で自分達の都合のよい結果を生むように画策しているとのことである。こうしたことが背景にあるという認識は、他の人にもあるようである。 
 
 なお、人権運動に参加する人たちでも、黒人差別という明白な事実に目を向けることはしても、アメリカの国内の所得格差、医療保険の不備その他の問題が人種差別に関連していること、また南米チリから始まって、アメリカ支配層に都合の悪い国・政権(リビア、シリア、イランその他)を破壊するために、アメリカが大量の人民を殺傷しているという事実には目をつぶる、いや、そうしたことは意識にのぼることすらないらしいことは、この国、またはそれに追従する国々の人々の基本的な問題点である。このような若者達を焚き付けて、支配層は自分達に好都合な政権を打ち立てようとしている。 
 
(*)https://www.globalresearch.ca/america-own-color-revolution/5716153 


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