2020年07月16日12時02分掲載  無料記事
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農と食

ハナバチの脳は低濃度のネオニコで影響を受ける

 近畿大学と筑波大学や国立遺伝学研究所などの研究グループは7月1日、ミツバチなどのニコチン性アセチルコリン受容体が花粉などに残留するより低い濃度のネオニコチノイド系農薬で影響を受ける、と米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した。今回の研究は、ネオニコチノイド系農薬について、昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体そのものの応答を調べたもので、世界初の成果だとしている。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 
 研究グループは、ハナバチ類の脳にあるニコチン性アセチルコリン受容体を、体外で神経細胞に存在したときと同様のはたらきを示すように組み立てなおし、イミダクロプリド、チアクロプリド、クロチアニジンの3種類のネオニコチノイド系農薬の影響を調査した。その結果、花粉に残留している濃度よりも低い数ppbの濃度で、ミツバチとマルハナバチのニコチン性アセチルコリン受容体が阻害されたとしている。この結果について研究グループは、「ピコモル(pM)のイミダクロプリド、チアクロプリド、クロチアニジンに敏感であることを示し、ネオニコチノイドの継続使用には注意が必要である」と警告している。 
 
 ・PNAS, 2020-7-1 
  Cofactor-enabled functional expression of fruitfly, honeybee and bumblebee nicotinic receptors reveals picomolar neonicotinoid actions 
  https://www.pnas.org/content/early/2020/06/30/2003667117 
 
 ・近畿大学, 2020-07-03 
  ネオニコチノイド系殺虫剤に対するハナバチ類の感受性を解明 環境に優しい農薬や昆虫制御材の開発に期待 
  https://newscast.jp/news/740578 
 
 表1.対象ネオニコ製剤と適用作物 
------------------------------------------------------- 
  農薬名     開発企業/商品名 適用作物 
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 イミダクロプリド バイエル     稲、リンゴなど 
          アドマイヤー 
 チアクロプリド  住友化学     リンゴ、ナシなど 
          バリアード 
 クロチアニジン  バイエル     稲、リンゴなど 
          ダントツ 
------------------------------------------------------- 
 農林水産消費技術センター:農薬登録情報より作成 
 http://www.acis.famic.go.jp/searchF/vtllm001.html 
 
 
 環境省は先月、農薬登録にかかる影響評価に日本ミツバチやマルハナバチなどの野生ハナバチ類を加えることを決めたばかりである。今回の研究により、花粉や花蜜に残留するネオニコチノイド系農薬の濃度でハナバチ類に影響を与えていることが明らかになったという。研究グループが「継続使用には注意が必要」と警告していることを重視して、ネオニコチノイド系農薬系の規制を急ぐべきだ。 
 
 EUはすでに、イミダクロプリドとチアメトキサム、クロチアニジンの屋外使用を禁止し、チアクロプリドは今年4月に農薬登録が失効している。カナダも使用規制強化に踏み込んでいる。ニュージーランド環境保護庁は今年1月、イミダクロプリドなど5種類のネオニコについて、承認を見直す根拠があり再評価すると発表している。 
 
 ・ネオニコチノイド農薬:各国の規制状況 
  http://organic-newsclip.info/nouyaku/regulation-neonico-table.html 
 
【関連記事】 
 ・環境省 農薬登録評価に野生ハナバチを追加 原体で評価は変わらず 
  http://organic-newsclip.info/log/2020/20061044-1.html 
 
 ・農薬補助剤のリスク評価無視は安全性を偽る 英国の研究 
  http://organic-newsclip.info/log/2018/18030900-1.html 
 
 ・EU ネオニコ系チアクロプリドの登録失効 
  http://organic-newsclip.info/log/2020/20051036-1.html 


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