2020年07月18日02時21分掲載  無料記事
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コラム

映像メディアの構造変化 新聞のデジタル化がメディアを根底から変えつつある

  TVの世界はYouTuberによってその優位性を揺り動かされつつあるが、同時に新聞のデジタル化もさらに既存のTVに揺さぶりをかけている。今までの活字と映像という棲み分けは失われ、新聞がTVを侵食しているとも言える。その1つの例が、以下のリンクの映像だ。日本でも新聞社が記者会見やイベントなどを中継したり映像をYouTubeなどにUPしたりしていたが、この映像を見た時、明らかにデジタル新聞が新しい未来を展開したのだと感じた。 
https://www.theguardian.com/commentisfree/video/2020/jul/17/beyond-the-culture-wars-with-owen-jones-slavery-statues-and-racism 
  話しているのは英国の30代のジャーナリスト、オーウェン・ジョーンズ(Owen Jones)。ガーディアのジャーナリストだ。ガーディアンがデジタル化しているおかげで、映像による取材活動をまとめてUPしている。テーマは最近、大きな話題になっているBlack Lives Matter 。つまり黒人に対する人種差別の問題や植民地主義についてである。奴隷制度で財を成した指導者たちの像が川に沈められたりしている。そうした事件について、オーウェン・ジョーンズが街の人々に質問を投げかけ、返ってくる答えを引き出している。特筆することはカメラマンが同行して、街での取材映像として「記事」に仕上げていることである。すでに彼は数分から20分程度まで多数のインタビューをガーディアンにUPしているのだ。これはこれまでの新聞の常識=新聞は活字メディアを一歩越えている。 
 
  もし新聞がデジタル化されれば、映像が「記事」になってUPされたとしてもまったく違和感がないばかりか、デジタル版でしかできない売りになる。それは今日、TVが政治的な忖度や過去の常識に縛られ、テロップの形式やら、編集方法などで縛られている間隙をついて、デジタル新聞版が映像メディアとして大きく発展していく可能性が出ているということだろう。 
 
  そもそも映画が始まった初期にアレクサンドル・アストリュックという映像理論家はカメラ(動画)がいつかは万年筆となる日が来ると予言していた。それは今日である。今、メディアで起きているこのような変化がそうだ。これまでTVメディアで働いてきたジャーナリストやディレクターたちにとっても、デジタル化された新聞や雑誌という、放送局以外のメディアに新たな参入の可能性が生まれてきたことをも意味しているだろう。こうした新聞のデジタル版のTVに対する最大の強みは映像の編集が何分何秒にまとめなくてはならないという時間的制約に縛られないことである。これがデジタル新聞の臨機応変な取材を可能にしているのだ。おそらくは映像を生かしつつも、活字も並行してデジタル新聞はコンテンツを築いていくことになるだろう。新聞のデジタル版は、もはや単なる新聞の非紙媒体ではない。まったく新しいメディアが生まれたと思った方がよい。 
 
  オーウェン・ジョーンズはガーディアン以外でも取材活動を行っている。たとえば今年2月に行った香港の民主主義のアクティビスト、ジョシュア・ウォン (黄之鋒、Joshua Wong)へのインタビューだ。それ以外にもオーウェン・ジョーンズは様々な新聞媒体を中心に、記事も書けば、映像インタビューもしているようである。 


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