2020年10月06日21時34分掲載  無料記事
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政治

菅政権の学術会議介入は「令和の滝川事件」 教育史学会が抗議の声明

 教育史学会が日本学術会議への永瀬池の政治的介入に抗議し、推薦者全員の即時任命を要求する声明をだしました。声明は、1933 年に文部大臣が滝川幸辰京都帝国大学教授を「赤化教授」との評判に基づいて休職処分とした事件を引き、「令和の滝川事件」と命名しています。(大野和興) 
 
【日本学術会議への政治介入にかかわる教育史学会理事会声明】 
2020 年 10 月 4 日 
 教育史学会代表理事 米田俊彦(お茶の水女子大学) 
 教育史学会理事会は、菅義偉首相が日本学術会議の新たな会員に推薦された者の内 の6名の任命を拒否したことに対して強く抗議し、被推薦者全員の即時任命を要求する。 
 日本学術会議法は、政府からの独立性を担保するために、会員を推薦する基準を「優 れた研究又は業績のある科学者」と規定している。内閣総理大臣が多種多様な学術研 究の優劣に立ち入る権能を持ちえないことが明らかである以上、今回の措置では個々 の学者の政治的・社会的な発言や活動が基準とされたと考えざるをえない。 
「令和の滝川事件」とも称される今回の措置は、1933 年に文部大臣が滝川幸辰京都 帝国大学教授を「赤化教授」との評判に基づいて休職処分とした事件や、1935 年に当 時の学会の通説(天皇機関説)を「不敬」とする声に押されて文部省が美濃部達吉東 京帝国大学教授の著書を発禁処分とした事件を思い起こさせる。当時の政府・文部省 は強権的措置により学問の自由を抑圧した上で、1936 年の日本諸学振興委員会設置、 1939 年の科学研究費創設、1945 年には学術研究会議への研究動員委員会設置などを 通じて、「国策」に役立つ「国家有用」の研究だけを選択的に「振興」する体制を整備 した。 
学術研究会議の後身である日本学術会議が政府からの独立を原則としているのは、 戦前・戦中の学界が「国策」に全面協力したことへの痛切な反省に基づいている。学 術会議は創設翌年の 1950 年には「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わ ない」という声明を発し、2017 年には「学術研究がとりわけ政治権力によって制約さ れたり動員されたりすることがあるという歴史的な経験をふまえて、研究の自主性・ 自律性、そして特に研究成果の公開性が担保されなければならない」として「軍事的 安全保障研究」に反対する旨の声明を発表した。時々の政権による学術研究への介入 は、たとえ直接の標的対象が限定されていたとしても、日本国憲法に定める「学問の 自由」を決定的に損ない、学界全体を萎縮させる効果を持つ。さらに、学校教育や社 会全般における自由な文化と表現の抑圧につらなる行為としても看過できない。 
 教育史学会理事会は教育史学の発展をもって貢献するべき日本学術会議協力学術研 究団体の一学会として、政権による日本学術会議への政治介入に反対する旨、ここに決議する。 


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