2020年10月09日00時10分掲載  無料記事
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政治

日本ペンクラブが学術会議への権力介入で声明

 日本ペンクラブが学術会議への権力介入事件で声明を出した。今回の問題は「学問の自由の侵害であり、言論表現の自由、思想信条の自由を揺るがす暴挙である」と糾弾するとともに、学術会議の会員に対して「同会議法が掲げる「科学が文化国家の基礎であるという確信」に基づいて、この問題に毅然と対応することを期待したい」と呼びかけている。(大野和興) 
 
           声明 
20201008学術会議 
 
 今般、菅義偉首相が日本学術会議の一部会員の任命を拒否したことは、学問の自由の侵害であり、言論表現の自由、思想信条の自由を揺るがす暴挙であることは明らかである。このような決定の背後に何があるのか、日本学術会議とアカデミズムがこれにどう対処するのか、私たちは当初から注視してきた。 
 この間、安倍首相、菅官房長時代の2016年、官邸は学術会議が提起した会員補充を認めず、2017年には、交代定数105名を超える名簿の提出を求めていたことが判明した。さらに2018年、「首相による任命は形式的にすぎない」としてきた従来の政府見解を、首相の公務員に対する指揮監督権を根拠に、「推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」として、根本的にくつがえしていたことも明らかになった。 
 国会審議も社会的議論もないまま進められたこれらの動きは、水面下での恣意的な法の解釈と人事によって政治をねじ曲げる手法そのものであり、すでに前政権の安保法制や検事長定年延長問題等でも世論の強い批判を浴びてきたところである。発足したばかりの菅政権のほぼ最初の仕事がこのような陰険なものであることに、私たちは暗澹とする。 
 私たち日本ペンクラブは菅首相に、今回任命しなかった6名について、その理由を具体的に開示することとともに、それができないのであれば、ただちに任命するよう強く求める。 
 また、今般の出来事は、政府に学問が従属し、多大な犠牲をもたらした戦前戦中の反省から出発した日本学術会議の存立に関わり、ひいては日本のアカデミズム全体の自由と独立性と使命にも影響する問題と言わなければならない。任期中の会員は広い意味での公務員として働くことがあるが、何より公務員は「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」(憲法第15条2)。 
 私たちは日本学術会議の関係者および個々の会員がこの原則に立ち、さらに同会議法が掲げる「科学が文化国家の基礎であるという確信」に基づいて、この問題に毅然と対応することを期待したい。 
 
  2020年10月8日 
日本ペンクラブ会長 
吉岡 忍 


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