2020年11月17日11時03分掲載  無料記事
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人類の当面する基本問題

(31)新コロナウイルス禍の実態まだ不明−3 インフルエンザとの比較 落合栄一郎

 現在、新型コロナウイルス(COVID-19)の脅威は、「インフルエンザとあまり違わない、故に、大騒ぎする必要はない」という議論があります。そこで、事実を検討してみます。 
 
(1) インフルエンザ対COVID-19の日米比較 
 ここでは、まず対照的な日本とアメリカの比較です。他国も同様な解析ができますが。計算値は、死亡者数/10万人/年です。 
 
日本:(イ)インフルによる死者数/10万人/年: 2018年 2.8;2019年 3.0 
   (コ)新型コロナによる死者 2020年11月5日現在1808人、 
    これと同程度の死者発生が2020 年末まで続くとすると約2170人 
    (この数が増えるか、減るか、未定)。この数に基づけば、 
     新型コロナによる死者/10万人/年 =1.7 
米国:(イ)インフルによる死者/10万人/年:2017─18シーズン 18.5; 
        2018─19シーズン 10.4 
   (コ)新型コロナによる死者 
       2020年11 月5 日現在の死者数は 234,765人 
       2010年末まで同じレートとすると、281,718 
       新型コロナによる死者86人(/10万人/年) 
 
 日本では、新型コロナによる死亡率は、インフルエンザの約半分程度。ただし、日本では、特殊な事情すなわちオリンピック開催のために、死亡者数を少なく見せるために、コロナによる肺炎をも、通常の肺炎による死として、過小評価した可能性はあるが、どの程度あったのか確認はできない。 
 米国では、新型コロナの死亡率はインフルエンザの数倍である。ただし、先に検討したように、死者数の実数は公式データの10分の1程度とするならば、約9人(10万人あたり)で、インフルエンザと同程度か、半分程度のようである。しかし、日本の数倍ではある。すなわち、米国のインフルエンザ死者数(10万人あたり)そのもの、コロナによる死者数(10万人あたり) は、いずれにしても日本の数倍。これは、米国の医療保険制度の貧弱さを反映しているのであろうか。 
 以上、2国のみのデータであるが、今回の新型コロナによる死亡率は、通常のインフルエンザと同程度かその半分程度のようであり、深刻なパンデミックとは言いきれないようである。しかし 主要メデイアは、感染者の拡大を常時報道しつづけている。こうして、ウイルスの脅威を煽り、人々を恐怖に陥れているようにみえる。これよりも死者の多いインフルエンザについて、このような執拗な報道は今まで行なわれてきたであろうか。いや、豚インフル(スワインフルー)の例はある。これは、下記(3)に。 
 なお、この比較は、過去のインフルエンザとの比較であり、今年のインフルエンザとの比較ではない。実は、今年のインフルエンザには非常に奇妙な現象が起きているのである。 
 
(2)COVID-19対インフルエンザ(IF)の関係 
 
 非常に興味深い事実は、例えば,オーストラリアでは今年の冬のインフルエンザ期(4─8月)に、コロナ感染者数が増大、その後春・夏に向けて減少し、ほとんど消滅した。 その間(コロナ感染増大期)IF患者はほとんどゼロであったそうである(注1)。コロナウイルスがIFウイルスを撃退してしまったように見える。こんなことがあり得るだろうか。こうした現象、すなわちコロナ感染増大の一方、IF感染減少は、オーストラリアばかりでなく、南アフリカ、チリ、などの南半球のほとんどの国でみられているとWHOが報告している(注1)。イギリスでの、IFの消滅は、実は北半球での通常のフルーシーズンの後期の3月からで、Covid-10の感染拡大が始まりかけた頃からであった。しかも、フルー感染者の減少はかなり急速であったし、多くの国で、フルー感染者数は、昨年の同期から98%ほども減少したとされている(注1)。 
 奇妙なことに、米国のCDCは、毎年行なっているIFの統計集積は、2020─2021年のフルーシーズンには行なわないと発表している(注2)。最近の週間報告では、毎週IF感染は極めて少数で、統計を取るほどではないとしている(注2)。もちろん、その一方で、COVID-19感染は激増している。 
 原因と考えられるものには(a) インフルをCOVID-19と誤認、(b)COVID-19に対する対策─ソーシャルデイスタンス、マスク、ロックダウンなど─が、たまたま活動期に入ったIFの感染拡大を抑えた、(c)ウイルス同士の干渉など、という説がある。 
 まず(c)であるが、ウイルス同士が干渉し合って、一方が感染力をなくす例は知られているらしい。しかし、今回のIFウイルス対SARS-CoV-2ウイルスの場合はそういう可能性は少ないと考えられる。というのは、IFウイルスが時期的にはSARS-CoV-2より先に蔓延しており、 後から拡散してきたウイルスが少量時から、おそらく大量にすでにあったIFウイルスを排除するのは、できるとしても時間がかかるであろうが、現実は急激な減少である。この問題はもう少し別の例から、下で検討する。 
 (b)は大いに可能性があるが、それが、インフルエンザ感染をほとんど完全に抑制できるのだろうか。(1)のデータ(日本と米国)から判断するに、通常ならば、IF感染のほうが、COVID-19よりも2倍から数倍多く感染するのですから、COVID-19対策が、IFの感染をほとんどゼロにしうるかどうか、実証が必要であろう。 
 (a)はどうであろう。専門家は、IFウイルスと新型コロナウイルスの形態は顕著に違い、間違うはずがないと言う。しかし、感染しているかどうかは、PCR検査その他の方法で判断するので、検体中のウイルスそのものを観察するわけではない。その上、 先にも検討した(注3)ように、かならずしもSARS-CoV-2ウイルスを特定しているわけではない。IFウイルス検査は、何処も充分ではなく、しかも今年は、どこでもIF検査はそれとして行なわれる数は少なくなっているようである。ですから、初期症状とPCR検査から、COVID-19と判定されてしまう可能性が増えている可能性は否定できない。 
 
(3)インフルエンザ対通常の風邪(ライノウイルス) 
 
 パンデミックとされた2009年のスワインフルー(注4)は、大した感染力も見せず通常のフルー同様に終息した。このスワインフルー(SF)が終息した原因として、同時期に蔓延していた通常の風邪のウイルス(ライノウイルス)の影響が指摘されている。 
 イエール大学の研究者が、13000人ほどの患者から、2016年7月1日から2019年6月30日までに集められていた呼吸器系からのサンプル8284個(ライノウイルス包含3821サンプル;IFウイルス包含4463サンプル)を用いて、SFの絶頂期である11月1日から3月1日までの期間での、サンプル中のライノウイルスとSFウイルス(H1N1pdm09)の存在率を検証した(注5)。結果、両方のウイルスを含むサンプルは極めて少なかった、特に通常の風邪のウイルスを含むサンプルには、ほとんどSFウイルスはなかった。 
 ウイルスそのものでなく、診療結果(フルーか普通の風邪か)による発生数の時系列(2016年7月から2019年6月)を見てみたところ、風邪の流行っていた時期にはフルー患者が減少し、風邪の勢が衰えた時には、フルー患者が一気に増えることが明瞭に見られた。 
 なお、実験的には、ライノウイルスに感染させた細胞叢は、3日後にはSFウイルスには感染しなかった。先に感染したウイルスが、 インターフェロンを作り、後のウイルスを排除するように作用することによると考えられる。インターフェロンをブロックすると、ライノウイルスに感染後もSFウイルスは増殖することもわかった。 
 インターフェロンはリンパ球(T、B系)、マクロファージその他の細胞でウイルス感染によって誘導され、マクロファージとかTリンパ系のNK(natural killer)を刺激し、ウイルスを攻撃(食べる)したり、腫瘍細胞の増殖を抑えたりする。おそらく、ライスウイル対SFウイルスばかりでなく、SARS-Cov-2ウイルスに対しても、作用するであろう。 
 ということは、インターフェロン(比較的小さい蛋白質)が、今回のCovid-19にも薬として有効性があると考えられる。現に、インターフェロンαは、キューバでCovid-19の治療薬として使用されている。 
 
(4)まだ分らないこと 
 
 SARS-CoV-2ウイルスはしかし、まだまだわからないことが多いようである。特に、北半球、特にヨーロッパ、北米などでの、現在の冬に向かってのCOVID-19感染の急拡大とインフルエンザの同時急減少はどうしてか。南半球や、東・東南アジアでの、見掛け上(だけなのか)の感染消滅、それが集団免疫獲得のためなのか。それとも、その地域のウイルスそのものが、感染力の低い変異株に変化したのか。このウイルスにはかなりの変異株が見られているが、どうしてか。本当に、現在のコロナ禍はパンデミックとしても、通常のインフルエンザや風邪などよりも恐れる必要があるのであろうか。メデイアによる今回の執拗な報道は、情報源をそうしたメデイアのみに依存している多くの人々をして、パンデミックを恐れさせ、ロックダウンなどにより、人々の生活の抑制・支配を可能にしているように見える。 
 さらに根本的な問題は、このウイルスが一体どこからどのような過程で発生したのか。例えば、つい最近の研究(注6)によれば、すでに2019年9月の時点で、イタリアでSARS-CoV-2ウイルスに感染していた例が見られたし、それに対する抗体も、2019年9月から2020年3月に集められた血液中に見出された。 
 このパンデミックはいつ、どのように終息し、その後の人類社会はどんなモノになるのであろう。 
 
 
(注1)https://www.dailymail.co.uk/health/article-8875201/Has-Covid-killed-flu.html 
(注2)https://www.cdc.gov/flu/weekly/ 
(注3)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202010220837044 
(注4)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200912131511030 
(注5)https://www.thelancet.com/journals/lanmic/article/PIIS2666-5247(20)30114-2/fulltext 
(注6)https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0300891620974755 


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