2020年12月06日17時30分掲載  無料記事
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人類の当面する基本問題

(33)COVID-19に関して PCR検査の問題点:補足 落合栄一郎

 今回のSARS-CoV-2ウイルス感染をPCR検査によりどう判断するかの仕方の標準となったとされるある論文(以降CーD論とする;注1)があるようである。この論文の内容は、直ちに、WHOテドロス総長に承認され、WHOを経由して世界中で、この方法により現在のPCR検査が行なわれているようである。その欠陥を充分に検証し、擬陽性が出がちであることを立証した論文が、多くの専門家によって発表された( 11月27日;注2)。これまでのこのサイト上での議論(注3、4、5、6)を正当化する論文であり、学術的に重要なので、その要点をまとめておく。 
 
 まず、CーD論(注1)の発表された状況の問題。この論文が提出されたのは1月21日。まだ、感染もそれによる死者も少数だったし、パンデミックになるかどうか不明な時点で、このような迅速なPCR検査を世界に向けて指示しようという内容のものをどうして発表する必要があったのか。その上、不思議なことに、学術論文らしくなく、提出日の翌日には論文として発表された。論文の著者のなかに、発表誌の関係者がいたことが、そうしたことを可能にしたらしい。こうしたPCR検査(不備な)をWHOが早い時期から促進したのはどうしてなのか。 
 
 さて科学的側面では: 
(1)プライマーの問題:CーD論でのプライマーの使用濃度が高すぎるし、ウイルスのDNA(RNA)のどこにプライマーを対応させるか、非常に曖昧で、充分な根拠を示さない。しかも3種のプライマーによる同定が望ましいが、そうした手順は示唆されていない。このため、プライマーに充分な根拠なくしてPCR検査が各国で行なわれることになった。そのため、結果はほとんど無意味。 
(2)元々、PCR検査は、感染の主な診断に用いるべきものではない。というのは、このPCR検査では、ウイルスそのものかその断片なのか区別ができない。 
(3)最初にDNAの2重鎖をほどいて、1本1本にし、それぞれにプライマーを結合させるのだが、その温度(Tm)は、ヌクレオチドG、Cの存在率(%)によるのだが、CーD論でのTmは不適当。 
(4)DNA複製サイクル数(Ct)は、最高でCt=30ぐらいで、Ctが35以上では、擬陽性が急増する。 
(5)PCR操作で出来た生成物が確かに、目的のDNAと同等のサイズのものであるとか、同じヌクレオチド配列であるとかの、分子生物学的検証がなされなければ、ウイルスからのDNAに違いないという確定はできない。 
 以上、CーD論によるPCR検査操作は、ウイルスに感染したかどうかの判定には不適当であるというのが、この検証論文(注2)の結論である。 
 
 もう一つ、以前からも言われていたのだが、COVID-19は、中国武漢で見つけられる前に、米国内でも発生していた可能性ですが、今回、アメリカ各地で、2019年12月13日から2020年1月17日までに集められた7389の血液サンプル(これはCovid-19検証のために集められたわけではない通常の血液検査用)を調べたところ、SARS-CoV-2のウイルスへの抗体が、109 体から見つかった(注7)。先にもお知らせしたが、イタリアでも武漢での発見より以前に抗体を持つ人がいたことが確認されていて、このウイルスは、やはり、武漢で初めて人に発症したのではなく、それ以前に欧米に拡散していたようである。 
 
 もう一つ、この事実は、かなりの人々に、SARS-CoV-2ウイルスに対する抗体が出来ていることを示唆しています。集団免疫とはいかないまでも、ワクチン摂取以前に、ウイルスの刺激で、免疫機構が作動して抗体を作りだす可能性があることを意味します。このことは、既に、先の論(注4)でも指摘しました。 
 
(注1)https://doi.org/10.2807/1560-7917.ES.2020.25.3.2000045 
(注2)https://cormandrostenreview.com/report/ 
(注3)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202010220837044 
(注4)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202011090954401 
(注5)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202011171103272 
(注6)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202011281557466 
(注7)https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaa1785/6012472 


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