2021年01月19日11時14分掲載  無料記事
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国際

暴力による民主主義の破壊は、米国政府がこれまでずっと国外でやってきたことだ  Bark at Illusions

 米国の大統領選挙に勝ったのはドナルド・トランプだと信じて疑わないトランプ支持者たちが連邦国議会に乱入し占拠した事件に対して、驚きや憤りの声が広がっている。 
 
「(議会占拠は)民主主義に対する前例のない攻撃だ」「彼らを抗議者と呼ぶな。彼らは暴徒であり、反逆者であり、国内テロリストだ」(ジョー・バイデン次期米国大統領) 
「議会を襲った暴力は、我が国の歴史に永遠に残るおぞましいことだ」(ナンシー・ペロシ下院議長) 
「おぞましくひどい光景だ。これは民主国家の私たちの国で起きることではない」(ジョージ・W・ブッシュ元米国大統領) 
 
 日本のマスメディアも、 
 
「米議事堂騒乱 民主主義の無残な凋落」(朝日、社説、21/1/8) 
「トランプ派の議会乱入 民主大国の歴史的汚点だ」(毎日、社説、21/1/8) 
「死者まで出た議事堂での暴動は、アメリカの民主主義の歴史に残る汚点になることは間違いありません」(NHKワシントン支局長・油井秀樹、NHKニュース7、21/1/7) 
「選挙の結果を暴力でひっくり返そうとする。これが本当にアメリカの話なのか。社会の分断がここまで来たのかと、ショックを覚えました」(和久田麻由子キャスター、ニュースウオッチ9、21/1/7) 
 
しかし民主的に選ばれた政府、あるいは民衆の圧倒的な支持を得ている政府を暴力によって倒すというのは、米国政府が国外で幾度も行ってきたことだ。 
イランでは、民主的な選挙で選ばれたモサデク政権が石油の国有化を宣言したことが気に入らず、米国の中央情報局(CIA)がクーデタを企てて同政権を転覆(1953年)。 
グアテマラでは、民主的に選ばれたアルベンス政権が貧しい人々を救うために行った農地改革が米国のユナイテッド・フルーツ社(現チキータ)の利益を脅かしたために、CIAがクーデタを支援。米軍機は首都のグアテマラシティを爆撃した(1954年)。ちなみにユナイテッド・フルーツ社は、ジョージ・W・ブッシュ一族が経営者だ。 
チリでは1970年に民主的な選挙で選ばれたアジェンデ政権が格差のない社会を目指して社会主義的な政策を行い、米国資本の鉱山や電話事業等を接収して国有化したため、CIAがチリの富裕な保守層と結託してストライキを扇動するなど、政権転覆工作を実施。1973年の総選挙で保守派が敗北すると、今度はブルジョア色の強い軍を利用してクーデタでアジェンデ政権を転覆させた。 
ハイチでは、デュバリエ一族による独裁政治で荒廃した社会の改革に取り組む民主的に選ばれたアリスティド政権をクーデタで二度、転覆させている(1991年と2004年)。デュバリエ政権は低賃金で働く労働者を提供するなど米国企業に協力的だったので、米国のお気に入りだった。 
他にも、オバマ政権によるホンジュラスでのクーデタ支援(2009年)やトランプ政権によるボリビアでのクーデタ支援(2019年)。未遂に終わったがブッシュ政権とトランプ政権によるベネズエラでのクーデタ支援(2002年と2020年)、等々。 
 
これらはよく知られた事実で、秘密でも何でもない。 
「アメリカの民主主義の歴史に残る汚点」だとか、「これが本当にアメリカの話なのか」などと、よくも言えたものだな。 


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