2021年02月12日20時56分掲載  無料記事
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検証・メディア

この国のメディアとジャーナリズムの惨状を映し出した森後継指名報道

 昨夜(11日)、フェイスブックに以下のような投稿をした。「不祥事を起こした組織の代表が引責辞任するに際し後継を指名するなんてことは、どう考えてもあり得ない。しかも、その代表が相談役に就任することが、内々決まっている。これが通ったら、この国は相当変な国だ。あの森の話」。テレビのニュース番組で差別発言の責任をとって辞任表明に追い込まれたオリンピック組織委員会の森喜朗会長が、辞任表明を待たずに後継を指名、その光景を追っかけておおわらの記者たちの光景が映し出されたのを見ての投稿だった。翌12日朝刊はもっぱらこの後継指名のおかしさ、不明瞭さをつくだろうと予測して先回りしようと書いたものだ。(大野和興) 
 
 12日朝刊はある意味ショックだった。朝日新聞、東京新聞の2紙を見てみた。1面はほぼ全ページを「森辞任の意向」と後継に「川渕」なにがしを森が指名したという記事でほぼ埋まっていた。川渕某は得意満面で新会長としての抱負を語り、紙面はそれを受けて川渕某のスポーツ界の功績を書き立てていた。森を相談役にするという組織委員会人事にまで言及した記事もあった。 
 だが、まだ正式表明がない段階で、女性差別発言という不祥事を起こし、引責辞任を迫られている森自身による後継指名のおかしさへの言及は、朝日、東京の二紙に限ると1行もなかった。 
 
 そのころ官邸や政府部内ではこうしたやり方では批判が噴き出しもたないという判断で、川渕某の後継指名を白紙に戻す動きを強めていた。今回のメディアの報道ぶりを見ると、いかに日本のジャーナリズム(もはやジャーナリズムとはいえない)が劣化しているか、記者の人権や民主主義に対する基本的認識が欠けているかを如実に示した。 
 このことに関する限り、日ごろメディアが批判する官邸を含む政府部内の方が人権と民主主義について理解度が深かったのである。この国が急速におかしくなっている大きな要因がここにあることを、今回の騒動は誰の目にもわかりように可視化してくれた。 


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