2021年02月21日03時56分掲載  無料記事
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難民

政府が入管法の改正案を閣議決定 野党・市民団体からは反発の声

 政府は19日、入管施設における外国人の長期収容問題を解消するべく、入管法の改正案を閣議で決定した。同法案では、難民認定申請者の本国への強制送還を停止する「送還停止効」に関して、“同一理由の3回目以降の申請には適用されない”とする例外措置を導入し、難民申請中の強制送還を可能とする。また、新たに「監理措置」制度を設け、収容に代わり親族や支援者の監督下における生活を認める一方で、監理対象者が逃亡した際には1年以下の懲役または20万円以下の罰金等を科す。 
 
 本改正案については閣議決定に先立つ18日に、立憲民主党、日本共産党、社民党などの主要野党・会派が、対案を参院に共同提出している。野党提出法案では、現行不透明な難民保護の認定基準について、外部の独立行政法人による審査を求めており、入管法上の「全件収容主義」の撤廃も盛り込まれている。法案提出後の会見で、立憲民主党の石橋通宏議員は「本来であれば難民として保護されるべき方々、保護すべき方々が我が国では保護されていないことが根本的な問題」と、現行制度の在り方を改め、難民保護法と入管法を切り離す必要性を訴え掛けた。 
 
 本件について、市民団体からも反発の声が相次ぐ。難民支援協会は19日、「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する意見」と題した意見書を公表し、その問題点を指摘。意見書の結びでは「監理措置や退去命令、仮放免等に関する新たな罰則を設けている。日本に逃れた難民の立場をさらに不安定にするものであり、見直されるべきである」と、法案の早急な見直しを求めている。 
https://www.refugee.or.jp/jar/report/2021/02/19-0000.shtml 
 
 また同日、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)も「改正入管法案に対する共同声明」と題した共同声明を発表。同声明では、「監理措置」「在留特別許可の限定措置」「送還停止効の例外措置」「退去強制拒否罪」などの項目について、「仮放免許可制度のマイナーチェンジでしかない」などと対応の不十分さを指摘した。声明の結びでは、「改正案は、排除・締め付け強化の方向性が際立っている。受容による解決も有効かつ有力な選択肢として検討すべき」と、方向性を改めるように呼び掛けている。併せて移住連は同日、Twitter上でも「だから、わたしはここにいる」と題した難民申請者などからのメッセージを届けるキャンペーンを開始。Twitter利用者に「#入管法改悪反対」をつけたツイートの拡散を求めている。 
https://migrants.jp/news/voice/20210219.html https://migrants.jp/news/office/20210219_1.html 
 
 入管法については、かねてから「制度が恣意的に運用されている」「収容期間に上限が設けられておらず、国際標準と異なる」と、その在り方の問題点が指摘されてきた。政府はこれまで外国人の長期収容問題について、送還ありきの議論を重ねてきており、本改正案についても政府のそのような姿勢が色濃く反映されている。強行採決で、なし崩し的に法制化するようなことがあれば、世界から日本の人権意識を問われかねない。市民の意見に耳を傾けた上で、国会での真摯な議論が求められる。 


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