2021年06月04日11時05分掲載  無料記事
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アジア

「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」 現地メディアが報道

「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」と、独立系メディア「ビルマ民主の声」(DVB)が5月29日報じた。会長の渡邉秀央氏は、ミンアウンフライン総司令官はじめ国軍との親密な関係で知られる。また息子で協会事務総長の渡邉祐介氏は、「日本は西側の体制変革政策に盲目的に同調するより、タッマドー(国軍)と米国その他の民主主義国の橋渡し役としての姿勢を示さなければならない」との見解を、The Diplomat誌に投稿した。(永井浩) 
 
▽モン州の経済特区予定地を視察か 
 渡邉会長は5月13日にミャンマーに向かい、DVBは首都ネピドーで国軍司令官と会う予定と報じた。「国軍司令官」が誰を指すかは不明だったが、今回の続報で国軍トップであることが判明した。同氏はクーデター直前の1月19日にも総司令官と会談している。 
 DVBは周辺から得た情報として、渡邊氏はミャンマー滞在中の2週間に2度、ミンアウンフライン総司令官と会談したと伝えている。会談の内容は明らかにされていないが、「秀央氏はミャンマーでティラワ経済特区プロジェクトの実現を支援した一人であり、クーデターが起きる数週間前にミャンマーを訪問していた」と指摘、今回の訪問で「モン州内に計画されている経済特区予定地を数日以内に(視察に)行くと聞いている」という。 
 
 渡邉氏とミャンマーの関係については、以下のように紹介されている。 
「民間団体である日本ミャンマー協会は、最高顧問に現在の副首相麻生太郎氏、日本政府の元官僚ら、そして日本の一流企業の執行役員らと結成された組織である。 
 日本政府の内閣一員であった元大臣秀央はミャンマー軍と長年の付き合いがあり、現在のクーデター軍リーダーと親子のような関係性をもっている。日本ミャンマー経済界においても名の知れ渡った人間でもある。 
 日本ミャンマー協会は1988年以降、ミャンマー軍人を日本の防衛大学で高度な軍教育を学ばせることをしてきた組織でもある」。 
 
▽「日本は西側諸国に与するな」と協会事務総長 
 DVBは、秀央氏のミャンマー訪問とおなじ時期に息子で協会事務総長の渡邉祐介氏がThe Diplomat誌の意見コーナーに寄せた文章も簡単に紹介した。 
 祐介氏の文章は「ミャンマーに関して日本は率先垂範しなければならない」と題され、欧米の対ミャンマー政策に与することなく、日本は国軍と米国などの民主主義国との橋渡し役を主張する。 
 氏は、「日本は数十年にわたる経済協力をテコに、いまやタッマドーと直接力を合わせて中国の地理経済的影響をくつがえすことができる」とし、さらにミャンマーへのロシアの影響力増加も警告する。また、「日本はミャンマー軍事政府を導いて、自由で開かれたインド・太平洋に貢献させる歴史的使命を達成しなければならず、たとえその行動が米国その他の民主主義的同盟国の行動と異なろうともたじろいではならない」とされる。 
 
 同誌特集ページに載ったこの記事は、ロイター通信も報じ、日本ミャンマー協会と渡邉会長のミャンマーとの関係についてくわしく説明されている。 
 日本ミャンマー協会は、渡邉祐介の父で政治家の渡邉秀央がミャンマーに日本の投資の波を呼び込むために支持者を結集した民間団体である。協会には元官僚や企業役員、日本の大企業が会員となっている。 
 元閣僚の渡邉秀央は長年、両国経済関係の東京の先鋒として、ミャンマーの巨大開発事業ティラワ経済特区を後押しし、ミンアウンフラインをふくむ国軍との緊密な関係を築き上げてきた。 
 ロイター電はクーデター後の日本政府の姿勢にも触れ、日本は主要な援助供与国としてミャンマーと長い結びつきがあるが、米英などの諸国と異なり、ミャンマー軍部にはっきりした制裁は科していないとしている。日本政府はミャンマーへの新規援助の交渉は停止したものの、現行の援助プロジェクトは停止していない。 
 ロイターは、ミャンマー国軍との急激な関係切断は中国の影響力のさらなる増強をまねく結果になるという、クーデター後の2月に日本政府高官がロイターに語った見解も紹介している。 
 
▽免許剥奪でも報道をつづける「ビルマ民主の声」 
 DVB(Democratic Voice of Burma)は非営利メディア団体で、軍事政権時代にノルウェーのオスロで登録し、活動の本拠地となっていたが、2011年以降の民主化の進展とともにミャンマー国内でも活動可能となった。今年2月1日の国軍クーデター後は、国民の民主化回復運動を積極的に伝えてきたが、軍(情報省)は3月8日付けでDVBの免許を剥奪、他の4メディアも免許剥奪された。現在、免許を剥奪されたメディア機関は8社に上り、80名以上の記者が不当に拘束・逮捕・訴訟されているが、各メディアは軍の監視の目をかいくぐり、拠点を移しながら報道をつづけている。 


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