2021年06月09日18時34分掲載  無料記事
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アフリカ

【西サハラ最新情報】 [ガリ大統領、モロッコの悪巧みに勝つ!]   平田伊都子

 2021年6月2日午前3時、ブラヒム・ガリ西サハラ大統領兼ポリサリオ戦線事務総長が、スペインの病院を出て難民キャンプのあるアルジェリアに戻りました。 6月半ば頃の退院とふんでいたモロッコ国王陛下は憤りました。 臣下たちに、<スペインでガリの拉致>を厳命していたのですが、逃げられてしまったからです。 しかし、ガリは逃げたのではありません。 堂々と合法的にスペインから出国し、アルジェリアに入国したのです。 一か月半にわたる法を無視したスペイン国内<ガリ拉致作戦>に、モロッコは失敗しました。 
 モロッコ国王陛下を喜ばせ落胆させたのは、モロッコ国王陛下お手つきの週刊誌ジョンヌ・アフリクとAFP(フランス通信社)などでした。 各社とも、西サハラの人々を<モロッコの分離主義者>と、モロッコ王室の使う言葉で揶揄しています。 
 
 屮リを、スペインで入院中に確保せよ」と、モロッコ当局の厳命: 
 2021年4月第3週に、パリに拠点を置く週刊誌<ジョンヌ・アフリク>が、モロッコのネット情報を転用し、「4月21日、ポリサリオ戦線リーダーで分離主義者のブラヒム・ガリが、アルジェリアのティンドゥフからスペイン・ログローニョの病院に緊急搬送された」と、書いた。モロッコのネット通信<Le 360>は、「コロナ検査で陽性反応がでたからだ」と入院理由を説明し、別のネット通信は、「消化器系統のガンで入院、、ブラヒム・ガリはモハンマド・ベン・バットウチェという名のパスポートを使って、アルジェリア人に化けてスペインに入国」と配信した。スペインのネット通信社<La Razon>は、、「ポリサリオのリーダーがスペインに到着できたのは、アルジェリアとスペインのハイレベル交渉によるものだ」と、伝えた。 
「ガリが他人のパスポートでスペインに不法入国」という情報に、モロッコ国王陛下はスペインをゆするネタになると歓喜した。ガリの身柄引き渡しだけでなく、この不正行為(?)でスペイン政府を脅し、昨年からスペイン政府に要求していた「西サハラに対するするモロッコ領有権承認のトランプ発言」を、呑ませようと企んだ。 
4月25日、国王陛下のお怒り(の素振り)を受けてモロッコ外務大臣ナセル・ブリタが「モロッコ王国は、モロッコの分離主義者であるブラヒム・ガリ・ポリサリオ兵士という犯罪者を、スペインが受け入れたことに強い遺憾の意を表明する。スペインの行動は、良き隣人愛を築いてきた両国の関係を損ねるだけでなく、モロッコ王国の基本理念に払拭する忌々しきものだ。何故、スペインはブラヒム・ガリなる犯罪人を極秘に、偽名で、入国させたのか?何故、スペインはモロッコに一言なかったのか?何故、スペイン裁判所は彼を逮捕しないか?、、などなど、様々な疑問に対する回答をスペイン政府から引き出すため、スペイン大使を本国に召還させた」と、記者声明を出した。 
 
舞台はスペイン北部の病院からスペイン飛び地領セウタへ: 
 MWN(モロッコ世界ニュース)は、「スペインのネット通信<La Razon>によるとログローニョにある病院でコロナと胃がんの治療を受けているブラヒム・ガリ容疑者は、強姦、誘拐、拷問などなどの犯罪者で、スペイン法廷は5月5日に尋問をすることになっている」と、報じた。かくしてAFP(フランス通信社)に加え、CORCAS(王立サハラ問題諮問評議会)やMAP(マグレブ通信社)などの主要モロッコメデイアが、「ポリサリオ戦線リーダーの逮捕迫る!」と、大キャンペーンを張った。病院前にはモロッコよりのメデイアがガリ逮捕の瞬間を撮ろうとカメラを据えた。が、2021年5月8日のMWN(モロッコ世界ニュース)は、「呆け老ガリは酸素吸入器をつけていて、話ができる状態ではない。症状が落ち着く6月になってから、スペイン法廷は呆け老犯罪人ガリの尋問を行う」と、失望ニュースを流したのだ。 
 それでもモロッコ外務大臣は「ポリサリオ・リーダーを裁判所に引き渡せ」と、スペイン外務大臣に強要した。アランチャ・ゴンザレス・スペイン外務大臣は、「人道的配慮でスペインはブラヒム・ガリ氏を受けいれた。裁判に干渉するつもりはない。患者は治療が終了次第、帰国の予定だ」と、答えた。5月9日、モロッコ外務大臣ナセル・ブリタは、「人道的配慮は全ての行動を合法化する万能薬ではない。モロッコはスペインの対応をしっかり覚えておくぞ!何が起きても、知らないぞ!!」と、脅しの声明を発表した。 
 そして脅し通りに5月17日、モロッコは約8,000人の不法移民をモロッコ北端にあるスペインの飛び地領セウタに越境させた。モロッコ国王ムハンマド6世陛下のこの行動は、故父王ハッサン2世の<緑の行進>を彷彿させる。45年前の1975年、ハッサン2世は約10万人(モロッコ発表35万人)の失業者を当時のスペイン領西サハラに、越境させた。人数こそ違え、モロッコ王室の脅し外交は昔も今も変わらない。 
 
モロッコの暗躍に対する国連事務総長の見解は?: 
 6月1日、国連定例記者会見でモロッコ系の記者が口を切った。「ご存知のように、今朝、ブラヒム・ガリ・ポリサリオ戦線リーダーが、スペイン法廷から尋問された。モロッコが彼を大量虐殺で告訴したのだ。コメントは?」と、事務総長の見解を聞いた。事務総長報道官は、「ノー、報告は見た。が、その事件に関して、ノーコメントだ」と答えた。 
 別の記者が、「モロッコとスペインの関係に関して、別の質問がある。昨日、モロッコ当局自身が最近の国境と外交を巡る紛争に関して、実は西サハラ問題が根底にあると言った。事務総長の立場は?この問題に関して、総長のメッセージは?」と、報道官に聞いた。報道官は、「ええ〜、つまり、、加盟二か国間で緊張が起こったら、それがスペイン・モロッコであれその他の地域であれ、我々は常に、その問題の解決に向けて両当事者がオープンに対話をすることを勧めている。いかなる未解決事態があろうとも、、」と、報道官は一般論を述べた。これに対して同記者は、「さらに聞くが、、モロッコは、西サハラに関してモロッコの領有権を認めた昨年の米政府発言を追従するように、スペインやヨーロッパ諸国に強要していると思われる。国連はこの承認が有効だと考えているのか?あるいは、これ(承認)は国連安保理決議に違反しているのでは(と、考えているのか)?」と、さらに突っ込んで問い質した。報道官は、「我々の西サハラに対する立場は、国連安保理決議に基づいている。それがいつも我々の指針になっている」と、モロッコを意識しながら答えた。フランス人の報道官はこれまでフランス本国の指針に従って、モロッコを応援してきた経緯がある、、 
 モロッコに忖度する国連は、モロッコ国連大使オマル・ヒラ―ルを国連総会第1委員会<軍縮安全保障>の委員長に任命した。 
 
 6月2日、アルジェリアに戻って首都アルジェのモハメド・セギル・ネッカチェ・アインナッジャ病院でコロナ治療を続けるブラヒム・ガリ西サハラ難民大統領を、アブデルマジド・テッブン・アルジェリア大統領がサイド・チャネグリバ・アルジェリア国軍トップなどを伴って、見舞いました。 アルジェリア大統領は、「ガリ西サハラ難民大統領がスペイン法廷にSADR(サハラウィ・アラブ民主共和国)を代表してアピールしたのは、世界にSADRが正式国家組織であることと西サハラ人民の脱植民地闘争が正当なものであることの、立証となった」と、改めてアルジェリアの西サハラ支援を表明しました。 そして、「スペイン政府に、その思い遣りに満ちた対応を感謝する」と、言及しました。 テッブン大統領自身が受けた、ドイツの病院でのコロナ療養生活を思い出したのでしょうか?、、 
 ドイツもスペインも、モロッコによる西サハラ領有権承認を断り、モロッコとの国交を断絶しています。 
 
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 「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。 
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、 
定価:本体1,800円+税、 
発行人:松田健二、 
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861 
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。 
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。 
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU 
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。 
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 
「Last Colony in Africa]  英語版URL:  https://youtu.be/au5p6mxvheo 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十     2021年6月9日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


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