2021年07月22日11時39分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

一刻も早いビデオ映像の開示を 学生・市民団体がオンライン集会で訴え

 不透明な入管行政に対する国民の批判などから、入管法改正案が事実上の廃案となってから2ヶ月ほどが経過した。同法案が廃案となった際には、今年3月にスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった事件の詳細を明らかにするよう、市民からの声が上がったが、入管施設内での状況を記録したビデオ映像は未だ開示されておらず、とてもすべてが明らかになったとは言い難い状況にある。このような中、有志の学生・市民団体が20日、オンライン形式での集会を開催し、改めて同死亡事件の真相解明を求めた。 
 
 集会に登壇した遺族代理人である指宿昭一弁護士は、入管庁の調査チームが今年4月に発表した「中間報告書」について、重要な事項が欠け、不正確な記載が多く見られる点を挙げ、「信用性に欠ける」と指摘した。同調査チームは、今年3月の事件発生直後に入管庁長官が設置したものであるが、主に入管庁の職員らで構成され、中間報告の後に加わった外部の有識者も入管庁が指名した者となっている。このような調査体制を踏まえ、指宿弁護士は「内部調査では絶対に真相は解明できない」と断言する。 
 
 さらに、ウィシュマさんの妹・ワヨミさんも、「入管がやっていることは信用できない。中間報告書の内容も透明性がなく、信じられないことばかり書かれている」と、入管庁への不信感をあらわにした。ワヨミさんは、「『ビデオを見てから(スリランカに)帰ってこい』と言われている」とスリランカにいる母親への思いを語りながら、「二度とこのようなことが起こらないように協力してほしい」と、真相解明のための支援を求めた。 
 
 また、外国人支援などに取り組むBONDの学生メンバー川村ひなのさんは、「命が失われても嘘の報告を繰り返し、加害者が責任を取ろうとしないこの国の行政に恐怖さえ感じる」と語る。川村さんは、入管施設に収容された人々から直接話を聞いてきた経験から、このような入管施設内での人権侵害を「全国共通の問題である」とし、「ストレスが多い環境で、(母国へ)帰れ帰れと訴えかける入管の姿勢は問題がある」と、入管庁の被収容者に対する処遇を問題視した。また、「入管法改正案が廃案となって、世論の注目が落ち着いてしまっているが、法案が廃案になっても当事者の問題は解決していない」と、“今”この問題を訴えかける必要性を語った。 
 
 主催団体である「ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会」は、現在ビデオ映像の開示を求める署名活動を行っており、記事を執筆している7月22日時点ですでに40,000人以上もの賛同者を集めている。指宿弁護士は、「入管は7月中に最終報告書を出すと言っているが、守るとは到底思えない」とし、引き続き入管庁に強く映像の開示を求めていく姿勢を示した。今後、7月27日午後3時から法務省前でのスタンディングアクション、8月13日に同省への署名提出を計画しているという。 
 
◯ オンライン署名URL https://t.co/xIpyWMVmdX?amp=1 


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