2021年07月31日19時14分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

法務省前でスタンディングアクション 最終報告書は公表されず

 7月30日、降りしきる雨の中、今年3月に名古屋入管でスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった事件に関して、遺族と学生・市民団体が法務省前に集まり、同事件の真相解明を求めるスタンディングアクションを行った。入管庁はこれまで、7月中に本死亡事件に関する最終報告書を公表するとしてきたが、7月最後の平日である同日中に報告書が公表されることはなかった。主催は、「ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会」。 
 
 ウィシュマさんの妹で、次女のワヨミさんは三女のポールニマさんとともにスタンディングアクションに参加。ポールニマさんがウィシュマさんの遺影を抱える傍らで、「5月1日に日本に来たが、未だにビデオや最終報告書が開示されていない。これらを出すまで私たちは帰らない」と、強い口調で決意の胸の内を語った。 
 
 また、関東近郊の外国人支援に携わるBONDの学生メンバー菊川奎介さん。入管庁を所管する法務省の赤レンガ棟の方向を向きながら、「この声が向こう側まで届いているかはわからないが、自分たちがこれだけの雨の中で集まって、ステンディングをしているということを、少しでも入管に伝えたい」と述べ、「遺族や私たち全員が納得のいく結果として、ビデオの開示と再発防止を改めて求める」と強く訴えかけた。 
 
 さらに、応援に駆け付けた日本共産党の藤野保史衆院議員。「政府与党は、理事会という正式の場で、7月中にウィシュマさんの事件に関する最終報告を出すとし、法務省の官僚は『7月末だから勘弁してくれ』と言ってきた。それが、今朝の記者会見で、法務大臣が『7月中は無理だ』という風に言ったと言われている。これは当事者の皆さんだけでなく、国会をも愚弄するものだ」と、遺族と国会を軽視する政府与党の姿勢を改めて追及した。そして、最終報告書については、公表された後も野党全体で内容を精査する必要性があるとした。 
 
 遺族代理人弁護士である指宿昭一弁護士は、「法務大臣も入管も、国会や様々なところで、7月に最終報告書を出すと約束していたが、出ない。近日中に出るようなことは言っているが、現段階では何の連絡もなく、非常に不誠実な対応であると感じる」と、誠実さの欠ける入管庁の対応を問題視した。そして、「責任逃れをするための報告書なら、出さなくていい。そんなものを出す暇があったら、しっかりとまず謝罪し、責任を認めて、遺族に対してしかるべき補償を行うべきだ。そして、二度とこのようなことを繰り返さないよう、再発防止措置を講じるべきである」と、最終報告書を入管の責任逃れに利用することのないよう、強く求めた。 
 
 現在行われている、名古屋入管死亡事件の真相解明を求めるオンライン署名には、すでに47,000人以上の者が賛同しており、50,000筆到達を目前に控える。今後公表されるであろう最終報告書においては、入管がこのような市民の声に対してどのように応えるかが注目される。 
 
◯ オンライン署名URL https://t.co/xIpyWMVmdX?amp=1 


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