2021年08月18日23時05分掲載  無料記事
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難民

政府の調査報告書は到底受け入れられない 人権NGOが合同で会見

 8月17日、出入国在留管理庁が10日に発表した名古屋入管でのウィシュマさん死亡事件に関する最終調査報告書について、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)、外国人人権法連絡会、恣意的拘禁ネットワーク(NAAD)、ヒューマン・ライツ・ナウ(HRN)の4団体が合同で記者会見を行い、同報告書に対する抗議声明を発表した。 
 
 会見の冒頭、司会を務めた弁護士の鈴木雅子氏は、抗議声明を発表するに至った経緯について、今回の調査報告書が「極めて不十分であるため」と説明。移住連副代表理事の鈴木江理子氏も「入管が公開した調査報告書は、到底受け入れられるものではない」と、その問題点を強い口調で語った。加えて、鈴木江理子氏は、「抜本的な真相究明をするためには、本件に関する全データをご遺族や代理人、国会議員に開示し、それに基づいて徹底的な国会審議がなされることが必要」と、更なる情報の開示と徹底的な審議を求めた。 
 
 また、ヒューマン・ライツ・ナウ事務局次長である小川隆太郎氏は、入管の裁量が強く認められる収容の判断において、第三者機関である司法による審査が必要不可欠であると語る。今回の報告書について、「司法審査の必要性を基礎付ける立法事実になり得る」とした上で、「再び入管法の改正案が政府から提示された際に、我々は必ず司法審査の導入を求めていきたいと思っている」と、今後の展望を語った。 
 
 入管法の改正については、移住連代表理事の鳥井一平氏も、「入管側はこの報告書を公表することで、このような事件を起こさないためにも改正が必要である、という理屈を立てようとしている」とし、調査報告書を入管法改正に利用することのないよう強く求めている。そして、「この報告書を徹底的に精査することが、この社会の在り方を一緒に考えていく一つの道筋になるのではないかと思っている」と語る。 
 
 今回の報告書では、これまで全く開示されてこなかった仮放免を不許可とした理由についても触れられており、その中には「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国説得する必要あり」との文言も見られる。このように送還を前提とし、そのための手段として外国人を収容しているのであれば、政府が掲げる共生社会の実現とは程遠い状況にあるといえる。今回の調査報告書の内容を、市民社会はどう受け止めるのか。入管行政の在り方が問われている。 
 
※ 調査報告書については、下記URL参照。https://www.moj.go.jp/isa/content/001354107.pdf 
※ 抗議声明については、下記URL参照。 
(外国人人権法連絡会、NAAD、HRN)https://hrn.or.jp/wpHN/wp-content/uploads/2021/08/bf0c68c1fe1cae9fc7e132b61552525e.pdf 
(移住連)https://migrants.jp/user/news/538/q4i3kdri3klh0j4h_nx-2-2p5d3aded_.pdf 


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